エロゲ負けヒロインについての思索のようなもの
負けヒロインとは何か
負けヒロイン。それは恋愛作品において主人公への想いが成就せずに失恋してしまうヒロインの総称である。
負けヒロインの特徴として
①登場時点で既に主人公に対し特別な感情を抱いている
②主人公と親しい関係
が挙げられる。この2つの要素が負けヒロインを負けヒロインたらしめていると考えている。
①登場時点で既に主人公に対し特別な感情を抱いている
負けヒロインは最終的に失恋する。この失恋というイベントをより不憫に演出する為の特徴である。
想いが強ければ強いほど、恋愛感情と向け合ってきた時間が長ければ長いほど、失恋の辛さが引き立つのだ。彼女らが本気で一生懸命に、恋愛に向き合い、その結果負ける。この過程こそ負けヒロインの魅力であり、我々読者が多大なカタルシスを得る要因である。
②主人公と親しい関係
負けヒロインは恋愛競争に負ける。これは負けヒロインが負けてしまう理由の一つになりがちな特徴である。
負けヒロインは勝ちヒロインの対立命題だ。多くの物語は主人公にとって非日常的な展開をしていく。その非日常の象徴が勝ちヒロインであり、負けヒロインはその反対の、日常の象徴となる。そのため日常生活において主人公に近いポジションに配置される傾向が強い。だからこそ平凡である負けヒロインは、非凡である勝ちヒロインに負けるのだ。
またこの特徴によって、主人公にとっての庇護対象になってしまい恋愛対象から外れてしまうケースも多い。妹や幼馴染などによくあるパターンで、親しい関係が故に主人公の護るべき人物となってしまい、恋愛のレースから外されてしまうのだ。また姉や年上の幼馴染などのヒロインが、主人公を庇護対象としてしまい奥手になってしまうという逆パターンも存在する。
この特徴②は特徴①とシナジーを生んでいる。親しい関係≒昔からの長い関係である為、主人公に対し長く深い感情を抱いてしまうのである。
エロゲと負けヒロイン
ただし上で述べた負けヒロインという概念は、ストーリーが1本道の勝ちヒロインが1人だけの作品でのみ存在するものだ。エロゲで主流のマルチエンディング形式の作品において、ほぼ全てのヒロインは主人公と結ばれるシナリオを持っている。エロゲに負けヒロインは存在しないのだ。
しかしそれでもエロゲに負けヒロインは存在する、と私は言いたい。
マルチエンディング形式のエロゲの多くは、どのヒロインを選ぶ世界線でも体験する共通√と、選んだヒロイン毎に用意された個別√によって形成される。プレイヤーがヒロインの1人を勝ちヒロインとして選び、そのヒロインとの恋愛を楽しむのがエロゲというゲームである。
このような構成のため、共通√の選択肢でヒロインの好感度を上げ、シナリオ分岐点で1番好感度の高いヒロインの√に入る、という形のエロゲがほとんどだ。
つまり共通√で選択肢を選ばれなかったヒロインは、恋愛感情にまで至らないケースが多い。
しかし例外も存在する。①登場時点で既に主人公に対し特別な感情を抱いていて、②主人公と親しい関係のヒロインである。
彼女達は他のヒロインと違って失恋をする。他のヒロインの√の数だけ負けるのだ。
このエロゲ負けヒロインについて考察していきたい。
考察:特徴①
共通√での登場時点で既に恋または恋に近い感情を主人公に抱いているため、エロゲ負けヒロインは選択肢に関係なく共通√、全個別√を恋心を抱えて過ごす。その恋が叶う叶わないに関わらず。
恋をしている描写がされたからにはその結果も描写されるものだ。個別√が4つあるエロゲでは3回も負けるシチュエーションが描かれる。負けヒロイン好きも一枚岩ではないが、これだけ失恋シチュがあればきっと眼鏡にかなう失恋の仕方を見つけられるだろう。
考察:特徴②
一般的なヒロインは、他のヒロインの√では出番が少なくなる傾向が強い。主人公と攻略されたヒロインのカップリングが出来上がっているため、他のヒロインは必要最低限しか登場しないのである。しかしエロゲ負けヒロインは違う。主人公と親しい関係であるが故に、何度登場させても展開に違和感がないのだ。
また主人公と仲が良いからこそ、主人公の恋心や主人公と勝ちヒロインの特別になった関係にいち早く気がついてしまうパターンが多い。
つまり"負け"描写をしやすいのだ。(交際の事実を知り涙を堪えて応援する、告白を躊躇しているヒロイン(または主人公)の背中を押す、振られることがわかっている上で告白をするなど)
エロゲ負けヒロインの罠
エロゲはマルチエンディング形式である。つまり、負けヒロインが主人公と結ばれるルートも、もちろん存在する。他媒体の一本道のストーリーとは違い、彼女たちにも幸せな世界線が用意されているのだ。彼女たちの秘められた大切な想いが主人公と読者に伝えられ、その思いに主人公が応える。なんてすばらしいことだろう。
ところが負けヒロイン道はまだまだ奥が深い。負けヒロインの強い想いを知ってしまうことで、次に他のヒロインの√を読むときに何倍も苦しくなる。彼女たちの幸せを知っているのに彼女たちの恋が実らない世界戦を選ぶ辛さは、筆舌に尽くしがたい。そう、負けヒロインを勝たせると、かえって負けヒロイン力が上がるのだ。過去に交わした約束や2人だけの思い出などを知ってしまったらもう最悪だ。
おすすめのエロゲ
私がエロゲ負けヒロインについてよく考えるようになったのは、とあるエロゲをやってからだ。
Clover Day'sである。
この作品は
・6人のヒロインのうち4人が幼馴染、2人が妹
・ルート分岐のための選択肢が全て過去回想内に配置されている
という屈指の負けヒロインゲーである。
このゲームに感情を壊されて以来、私は常にエロゲ負けヒロインを探しながらエロゲをプレイしている。負けヒロインが好きなら是非プレイしていただきたい。
最後に
谷川柑菜との衝撃の出会い以来、負けヒロイン中毒になった私がエロゲをやっていて思ったことをまとめたくなり書き殴った。読み返してみるとかなり意味不明な文になったが、そこそこ自分の感覚を書き出せたような気もする。
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