ボイス台本に至るまで 十六夜桜花さん

 ※内容のネタバレあり。以下の動画をご視聴の上でお読みください

 未良々桂さん主催の秋ボイス企画について、鷺宮ローランさんのボイス台本裏話noteにしたがい、私も自身が担当した台本について公開しようと思って筆を取った次第です。今回は桜花さんのボイス台本について。皆様がボイスを楽しむ一助になればなによりです。

 まずは台本の全文を掲載します。

今夜も月が綺麗だね。
昨日が十五夜(じゅうごや)、今日は十六夜(いざよい)だけど、君はどっちの月が好きかな。
どっちも比べられないって?
じゃあちょっと教えてあげよう。
十五夜は、中秋の名月。秋の真ん中に出るから中秋。
秋は月が綺麗に見える季節だけど、中でも特に綺麗に見えるそうだよ。
満月だしね。
雲がかかって見えないときは無月(むげつ)、雨で見えないときは雨月(うげつ)。
ぼんやり明るいのを楽しむのも乙だよね。
ちなみに、かぐや姫が月に帰ったのも十五夜だったそうだよ。

で、十五夜の前が待宵(まつよい)、後が十六夜。
十六夜はいさよう。躊躇するって意味で、月の出が遅いことを「月が躊躇っている」と見立てているそうだよ。
ボクは……十六夜の月が好きかな。
欠けることのない月もいいけれど、わずかに欠けて、すこし躊躇っているなんて、なんだか親近感が湧くよね。

躊躇うことがあるのかって?
ボクにだってそれなりに躊躇うことはあるよ。
勇気も、覚悟も、もっとほしいと思うことは少なくないんだ。
大切なことほど、ままならないものだよね。

かぐや姫は惜しみつつも、月へと帰ってしまったそうだけど、そうでなかったらどうなんだろうって思うことがあるんだ。
「いまはとて 天の羽衣 着る時ぞ 君をあはれと おもひいでぬる」、
「天の羽衣を着て地上を離れる今になって、あなたへの思いが溢れて止まりません」と帝へ詠んだかぐや姫が
月へと帰らずに、地上でそのまま十六夜を迎えていたらって。
十六夜の月のように、わずかに欠けて、躊躇いながらも、それでも楽しくすごしたのかなって
君はどう思う?
あぁ、ごめんよ。悩ませるつもりはないんだ
ただちょっと、聞いてみたくて。
例えばだけど、もしボクが月に帰らないといけなくなったら。
君は……いや、やっぱりなし!

ボクは十六夜だからね。
もう少し躊躇ったって、きっと待ってくれると信じてるから。

 桜花さんのボイス台本は、私としてはすんなり書けました。というのも、某日に企画の段取りができるとその日の深夜に台本を書きあげていたりします。
 残っているメモを見てみると
 ・十六夜(十五夜の次の日)のお月見
  ・かぐや姫とからめる?
 ・「今夜も月が綺麗だね」から始まる
 と書かれていることからも、最初の発想の時点でおおよその形ができていた感じでした。
 
 桜花さんは「今夜も月が綺麗だね」というフレーズがぴったりのスマートな印象な方なので、「風流でかっこいい面と、あなたにだけ見せる弱さや甘さ」を両立できればと思いながら書いたことを覚えています。
 月やかぐや姫についての知識の披露は風流を解すかっこよさと、それでいて「あなた」を置き去りにしないスマートさを意識しています。
 一方で十六夜やかぐや姫への共感や、ためらう姿は「あなた」にだけ見せる弱さであり、「あなた」だからこそ甘えてしまうという背景を感じてもらえたら嬉しいです。

 桜花さんらしいさらりとした演技とともに、ぜひ今一度お楽しみください。

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