エクトリアシステムを指してみる講座

 エクトリアシステムとは、フリーズ将棋においてエクトリアさんが考案された端角中飛車戦法のことです。本稿では、このエクトリアシステムについて、私なりの解釈や知識についてまとめてみたいと思います。

◇フリーズ将棋とは

 綾瀬綾さんの考案された遊び将棋です。詳しくはこちら、綾さんの配信をご覧下さい。

◇エクトリアシステムの理想形

エクシス

 このような形が理想形です。攻めは端角+中飛車で迫力満点。受けは左右の銀に1手ずつかけた形です。
 まず、フリーズ将棋では玉を深く囲うことが難しいです。フリーズがあることでお互いの攻撃力が高く、三連続フリーズによる即詰みなどもあって受けることは困難です。
 となると自然に居玉に近い玉形となり、これには中飛車がわかりやすい攻めとなります。
 また、端角も優秀です。端角の破壊力はローランさんのこちらの記事をご覧頂くのが最適です。

 このようにいきなり即詰みすらあり、ここに飛車と歩、場合によってはさらに駒が足されるエクトリアシステムは十分な攻撃力を持った作戦です。

 しかし、実はエクトリアシステムは防御力にこそ優れていると思います。

 まずは左側ですが、銀が一つ立っただけながら角と銀の配置がよく、自陣のスキをほとんど消しています。例えば理想形から飛車がいなくなった形に△5八歩F玉で金を動かしても、左銀と端角のおかげで横から飛車か金を打ってF玉で詰みというようなよくある筋がありません。
 また相手の角のラインに入らないのも大きく、いきなり角を切ってもらった銀とフリーズで詰みという展開がぐっと減ります。

 続いて右側ですが、こちらは壁銀になっています。これは後手からの端角を受ける(先述の詰みを防ぎつつ中飛車を実現する)ためには必須に近いのです。本将棋の感覚だと悪形に見えますが、フリーズ将棋においてはいい形かもしれません。
 特にフリーズ将棋において右辺は駒が1枚少ない(角がいない)分、受けにくく危険地帯でもあります。個人的にそうした観点から右辺は攻めに使いたく、その意味で壁銀は必ずしも悪いとは限りません。

 その他、居玉も飛車金銀の5枚で固めている意味があり、フリーズによる詰みの多くを防ぐことができています。
 5筋の位も大きく、例えば△7七角成のフリーズ解除(強引に詰めろや王手をかけてフリーズを余分に要求する)の手筋を事前に受けている意味があります。

◇エクトリアシステムの戦い方について

 理想形からはとにかく5筋を狙います。受けとしてよくあるのは△6四歩と角筋を止める手ですが、▲6六歩~▲6五歩くらいでも受けるのは困難で収拾がつきません。
 駒が足りなければ右桂や左桂を攻めに参加させるのがオススメです。本将棋の横歩取りと同様で、自陣にバランス良く金銀を配置して飛角桂歩で攻めるのがフリーズ将棋らしい戦いです。
 なお、ある程度駒を集中させた上での▲5四歩はそれだけで破壊力があり、フリーズを必要としないことが多いです。これは第三期氷王戦で私が何度も間違えたところです。
 意外にフリーズを絡めて攻めがつながるため、よく読んでノンフリーズで攻めてみてください。
 エクトリアシステムは、理想形に組みきってしまえば難解ながらパンチが厳しく、有力な作戦だと思います。

 一方で攻めまで端角に2手、中飛車で3手はかかります。5手あれば早石田や鬼殺しのような作戦は先攻できるため、これを上手く受けて反撃に転じられるかが重要です。その場合も難解なのは変わりませんがエクトリアシステムの防御力の高さをいかして攻め合いにできることが多いです。
 フリーズ将棋は「1手前に受ける」本将棋の受けの極意のような手がよく出ます。パンチが入ると一瞬で終わってしまうので、パンチを打たせないような立ち回りが大事なところではないでしょうか。

◇おわりに

 ということでエクトリアシステムについて私のわかる範囲で書いてみました。フリーズ将棋を楽しむ一助になれば幸いです。

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