笛吹き道中記 音楽歴09

こんにちは。
朱鷺たたら(とき たたら)です。
わたしの音楽歴の続き第9回目のメルマガです。

東京芸大の受験に失敗し、浪人となりました。
最終選考で落ちたことで、悔しく、
来年もう一度挑戦しようという気持ちになっていました。

ところが、浪人生活が始まり、
相変わらず朝から晩までフルートを吹いていましたが、
次第に「なぜフルートを吹きたいのか」という疑問が膨らんできました。

吹いていて楽しい、という気持ちはとっくの昔に
どういうものだったのかわからなくなっていたのです。

楽譜を分析し、解釈する。
その前にまずは忠実に再現できる力が求められていました。

厳格な先生でしたので、
例えば音量に関していうと、
pp p mp mf f ffといった記号毎に、
正確に吹き分ける力を身に付けるよう求められました。

記号毎にロボットばりに
mfならメゾフォルテの音量、
fならフォルテの音量、というように、
身体のボタンを押せばその音量が出せます、という
具合にまで練習をしていました。

ところが、全く音楽的ではないのです!
・・・まあ、当たり前ですよね。

楽譜をインストールしたら、そのまま再現するロボットのようだったのです。

「正しく吹けているけど・・・、音楽になってないわね」と
言われました。
本人もそう感じていましたが、
厳格に楽譜からのオファーに応えなければならない、と
仕込まれてきて、それがある程度の難しい曲でもできるようになったとき、
今度は全く別の問題、しかもそちらの方が大切、
さて、どうする?という難問にぶち当たったのです。

もっと自由に吹きなさい、と言われ、
ロボット化した高校生は、
自由って、どういうことでしょうか・・・となってしまっていました。

バッハに取り組むにはその時代の音楽様式を学び、
楽譜を分析する。

そのこと以上に、自分の表現をどこにどう入れたらいいのか、わかりませんでした。
歌うんだ、ということは頭ではわかっていましたが、
じゃあ、具体的にどうしたらいいのかがわっぱりわからなくなってしまったのです。

もうこうなると、地獄です。
何を練習したらいかがわからないからです。

浪人生ですから、日に10時間練習時間があります。
とりあえず、やる、やる、やる。

しかし、ついにある日、決定的なことが起こりました。
                   (続く)

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