英語が話せるようになる方法 part1:例文暗唱で自動化を促す

こんにちは。

英語講師の家田啓示(いえだ けいし)と申します。

1. スポーツと似ている

英語が話せるようになる方法を第二言語習得の理論と私自身の経験をもとに、2回に分けてお話ししたいと思います。

バスケットボールのレイアップシュートを例に考えてみましょう。

始めのうちは、ボールをつかんでから頭の中で「イチ、ニ」と数えながら練習していたかと思います。うまくいかなくて、手首の形、ゴールとの距離、ドリブルの速度を修正するなど、試行錯誤をされたのではないでしょうか。

そうした練習を繰り返すうちに、いつしか頭の中で「イチ、ニ」と数えることなく、自然とスムーズに動作が行えるようになっていきます。

このように、ある手続きを考えなくてもできるようになることを「自動化」と呼びます。動作が自動化されてくると、レイアップの動き自体に注意が割かれずに済むようになるので、敵や味方の位置を把握したり、フェイクをいれたりをする余裕が出てきます。

このように、自動化は何かに上達するためには重要な要素であると言えます。英語学習においても例外ではありません。例えば、長い英文を読むときに「この単語の意味はえーっと、、、あっ、automatizationは自動化か!」という思考が繰り返されると、細かい単語や文法の処理で精一杯になり、「全体として何が伝えたいのか」といった重要なことにまで意識が向かわなくなります

言語知識を自動化することがリーディングやリスニングの上達に非常に重要になります。

2. スピーキングでも重要な自動化

同じように、英語のスピーキングにも自動化は重要です。

手前みそながら、私自身の体験をお話しします。私はフィリピンに4ヶ月ほど留学した経験があります。留学前は予備校で教えていたこともあり、大学受験の問題を解くことには自信があったのですが、恥ずかしながら話す方はからきしダメでした。

しかし、留学後はある程度自信をもって英語を話せるようになり、「本当に4ヶ月しか留学してないの?」と驚かれることが多くなりました。

画像1

同じ期間フィリピンで過ごした他の日本人よりも、私の上達の幅は大きかったように思います。これは、「自動化」された言語知識の量に理由があると考えています。私は、予備校で生徒の質問に即座に答えられるよう、様々な文法項目や重要単語の例文を記憶していました。いくつもの英文がすぐに引き出せるレベルに記憶されていた(=自動化されていた)ことによって、会話で英語を瞬時に話すための素地ができていたのだと考えられます。

白井恭弘先生は『英語教師のための第二言語習得論入門』という本の中で日本の英語教育を「自動化しない自動化モデル」と呼び、それが日本人が英語を話すことを苦手とする大きな原因である、と論じています。

学校で 新出の文法項目や単語を一つひとつ理解して覚えていくスタイルはまさに「自動化理論」に立脚 した教え方です。

しかし、それぞれの知識を自動化して使えるレベルまで習得できておらず、テスト対策で学習が止まっているのが現状です。

最初のバスケットボールの例に戻りますが、以下のような穴埋めのテスト問題があったとします。「右手でレイアップシュートをする際, ドリブルしてきた勢いを 保ちつつ 両手でボールをつかみ,( ① )足で一歩 目を 踏み込み,( ② )足で踏み切り,高 く跳んでボールを置いてくるイメージでシュートをする。」①:右  ② : 左 が正解になります。

旧来型 の英語教育は極端 に言えば、上記のような問題に正解する能力を育てることが目的となっている場合が多く、これだけでは知識が自動化されることなく終わってしまっています。

実践的な場面で使える技能として習得するには不十分です。

港区のある公立中学では教科書を50回音読して完璧に本文を「自動化」させています。また、横浜市 のある中等教育学校では30回ほど様々な方法で教科書 本文を 音読して「自動化」させる試みをしているのです。

一部の成果を上げている学校では「自動化」がうまくいっているようですが、多くの学校では残念ながらそうはいっていません。

結論として、英語で話す素地を作るためには例文暗唱によって言語知識を「自動化」させることが重要になります。

ポイントは以下の通りです。

ちょうどよい難易度の文(フレーズ)を選ぶ。意味はわかるものの、自分では使えないな、というレベルの文がおすすめです。

何度も音読する。使えるようになりたいポイントを意識して、自分の言葉として相手に伝えていることを想像します。

・音源があればネイティブが言っているのをマネして、すっかり自分になじんだ状態になるまで、日を分けて続けましょう。

レイアップシュートを何も考えずにできるようになったのと同じように、英語が自分のものになる瞬間はまさに至福の時です。

こうした学習を積み重ねることで、「単語レベル」「フレーズ(チャンク)レベル」「文(センテンス)レベル」(あるいは文章を暗唱できればさらにまとまったレベル)での言語材料を使いこなせる土台ができます。

しかし、残念ながら例文暗唱による「自動化」さえすれば、それだけで完璧とはいきません。

例文暗唱の不十分なところをカバーするのが多読・多聴・会話などによって得られる大量のインプットです。

私の次回の投稿の際に、「自動化理論」のどこが不十 分で、なぜ大量のインプットが必要なのか、についてお話ししたいと思います。

それに先立って弊社の川上晃講師が、大量の質の高いインプットを得るのに最適 なauthentic materialsの選び方についての記事を投稿する予定です。

ぜひご覧くださいませ。最後までお読みいただき、ありがとうございました。

《参考文献》

白井恭弘(2012). 『英語教師のための第二言語習得論入門』大修館書店

鈴木 渉 (編著)(2017). 『実践例で学ぶ第二言語習得研究に基づく英語指導』大修館出版

Krashen, S. D., & Terrell, T. D. (1983). The natural approach: Language acquisition in the classroom. Hayward, Calif: Alemany Press.

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?