情緒は矛盾

※プランク長
物理学的な長さの概念である。長さの単位を細かく区切っていくとする。1cm、0.1cm、0.01cm、0.000001cm……。こうしてどこまでも区切っていくと、やがて「この最小限の長さより短いところでは、長さの概念が意味をなさなくなる」最終的な段階にたどり着くという。その段階が「プランク長」と呼ばれ、長さは「1cmの10億分の1の10億分の1の10億分の1の100万分の1」、すなわち「10マイナス33乗」だという。これ以上の短さは存在し得ない、という行き止まりのような単位。
         情緒は矛盾
船が壊れながら運行中、むき出しの操舵室ではおばさんが一人で操縦してる。
それにしても大きな貨物船だね、おばさんは陸にいる俺をみるなり、
「誰も助けてくれないのかい、全くつれないねえ」
僕はそれに答える、
「だって誰からもあんたと船は見えないから仕方ないさ、
それに我々には距離ってものがないからこういうふうにあんたと話せるのだからね、
それに空を見れば飛行機が渦巻くように旋回してるでしょ?
これは真下から見たからそう見えるのだけど本当は螺旋状に飛んでいるって訳だ、
そう見ているうちに数多の星が見える様になるって事だ、
不思議でイッパイなのだけどね、陸を見ている分には普通に感じている、
しかし空をみたらやっと不思議を感じれるって事ね、全く誰かが描いたような空だね。
それに俺だって訳のわからない映像をボロいプロジェクターで上映しないといけないのだからねえ、
でもスクリーンの半紙がボロボロでねやる気が無くなったわ、
なので昼飯に行きつけの居酒屋で刺身定食を食べて会計したらお馴染みの店員が
『後500円、でもどこかにやっちまたので200円でいいよ、でもやっぱり1500円頂戴』
とか言われたので結局金は払わずに払ったことにしてもらったってな訳だ、
何をどこかにやっちまったのかねえ、
店員もこの会話は俺としかしないし俺も満腹感は無いのでこれで良いみたいだね、
満腹感はあるわけないさ、実際食だの肉体だの味だのが無いのだからね。
おっと、バスに頭ぶつけたおばさんがこちらに倒れかかってきたけど、
何事も無かったみたいに細身の体になって家に帰って行ったね。
でも俺はこの世界嫌いじゃあないよ、意外とキレイだし美しい場合もあるからね、
但し飲んだくれて起きたら夕方みたいな朝ってのは勘弁かな、
バスも電車も見るとうんざりするからね。
それに駅ビルの中をどんどん奥へと進行していくと店がどんどん小さくなり最後は小さな居住区になるって訳だ、
奥にある真っ赤な壁で小物やら文房具やらを売っている凄く小さな店が何故かお気に入りなんだ。」

博士
「一見こちらと似ている世界でしょうが本当に微妙な差でありえない場面が出現するのですよ。
誤差ってのはね、小さいとか少ないとかイメージするでしょう、
しかし初期設定の時点で狂っていてね、
例えば同じ答えを出せる筈のいくつかの方程式の答えが微妙に違うという現象でね。
私はこれに着目した訳です。
割り切れない数字とか無理数とか使っている訳ではありません。
ちゃんと0コンマいくつかで完結している少数です。
一般生活なら閏年とか閏秒で調整する訳ですね、
それら「閏」を無くすには秒間隔を微妙に変えなければなりません、まあそれは可能でしょうね。
しかし前述した人達は『同じ答えのはずなのに何故か違う答えが出る。しかもそれぞれの答えはそれぞれ正解である。
なので彼らの世界のスタートが間違っているのか、さもなければ真実の世界にいるのか?』
と考えられるのです。
まあ矛盾ってやつですよ、数式の答えにこの矛盾を見つけるとゾクゾクするんですよね。
このゾクゾクてのが言わば情緒ってやつかも知れませんけどね。
情緒ってのは良いことでも悪いことでもなくって、んんん~不思議とか分からないとかそんなところでしょうかね。
又々やって来ましたよ。

「帰りに山手線が混んでいてね、一本見送ることにしたのだけれど、
やっと来たと思ったら酔っ払いが車内で何かやらかしたらしくてね、
しかも凄い混み様なのでもう一本見送った訳です。
次に来た電車が何と茶色い車体のレトロな車両で『、、瀬行』って書いていたのです。
果たしてこれは新宿を通るのかな?これに乗ると何処へ行くのだろう?」

博士
「ここで考えられるのは、『茶色いレトロな車両に乗ったら何処へ行くのか?』ですよね。
『、、瀬行』?とても山手線にはありそうもない駅名ですね。
彼には次回はこれに乗るよう頼んでおきました。
多分きっとつまらない面白くない展開になると思うのですよね、
物体化される前に全て消えてしまうのでしょう、そして車両に乗りながらシラケて来るのでしょうね。
もし物体化されたらそれは面白い世界ですよ、情緒の物体化ですからねえ、、」


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