ベトナム・ホーチミン〜カンボジア国境・モクバイまでの陸路移動方法

ベトナムのホーチミン(サイゴン)からカンボジア国境の町であるモクバイまで陸路で移動し、カンボジア側の国境の街バベットへ抜けたので記録を残しておく。情報は2023年12月末現在のもの。

移動手段は以下。
・ホーチミン9月23日公園バスターミナル→クチバスターミナル、71番バス乗車、料金2万ドン
・クチバスターミナル→ゴーダウの交差点で途中下車、701番バス乗車、料金3万ドン
・ゴーダウ宿→モクバイ国境、タクシー乗車、料金25万ドン(定額)

ネット上ではホーチミンからモクバイまで路線バスが運行されている情報があるが、現在は廃止、もしくは休止状態にある。9月23日公園バスターミナルのスタッフからは「プノンペン行のバスに乗って途中下車して下さい」と翻訳サイトを通し伝えられた。

バスターミナルのすぐそばには各社が運行するプノンペン行のバスがある。料金は最安値だと10ドルあたりからある。確認はしていないがモクバイで途中下車しても同じ料金がかかるだろう(これはカンボジアのシェアタクシーでも同様だった)。

まさかの国境行のバス消滅に慌てたが、検索し参考になったのはベトナム在住のぽんじろ。(@ponnjiro)さんの以下のツイート群だ。

https://twitter.com/ponnjiro/status/1657324801516765185

https://twitter.com/ponnjiro/status/1657330689879191552

ツイートの通り、9月23日公園バスターミナルから13番のバスに乗りクチ(CuChi)バスターミナルまで向かう。料金は2万ドン。ターミナル内に行き先の看板を掲げた専用のバス乗り場があるので間違いはないだろう。

クチのバスターミナル自体は小さいので701番のバスはすぐ見つかる。こちらの時刻表は確認していないが13番バスよりは本数は少ないだろう。料金は3万ドン。ターミナル内のトイレは有料で3000ドン。

運転手にGo Dauをそのまま「ゴーダウ」とカタカナで言っても通じなかったので行き先表記を手で示して説明する。「モクバイへ行くのか」と言われる。途中、物売りのおばちゃんが乗り込んできたりと一気にローカル度が上がる。

ゴーダウで途中下車する場所は、運転手や乗客が教えてくれた。降車場所に待ち構えているバイタク(バイクタクシー)の勧誘はかなり強引なので、勢いに乗せられないようにする必要がある。国境までは15万ドンと言われる。こちらが渋っていると思われたのか向こうが12万ドンに下げてきた。英語は通じない。「今日はこの街に泊まる」と翻訳サイトを通じ伝えると「ホテルまで10万ドン」と言われる。ホテルは街の中心部から北へ1~1.5キロほど行ったあたりに点在しているので、歩く場合は少し遠い。

ツイートではゴーダウでタクシーをほとんど見かけないと報告されているが、泊まった宿にタクシー会社らしき名刺があったので、宿の人に呼んでもらった。国境のモクバイまで25万ドンだった。1ドルは25000ドンほどなので約10ドルだろう。

ゴーダウには2泊したが、町中には台数は少ないが流しのタクシーや客待ちのタクシーもいた。国境までは10キロほどなので、交渉次第ではもう少し安く移動できるかもしれない。

ベトナムからカンボジアへ陸路で移動するにあたって以下の感慨を得た。
・カンボジアの物価は安くない。流通しているのはほとんどがベトナムかタイの輸入品であり、価格は輸送費が上乗せされるためか、各国より少し高く設定されている。石鹸、ティッシュ、ハンドタオルなど日常生活に必要なものは、ベトナム側で買って行くのが良い。
・ベトナムもカンボジアも「日本ならすぐに手に入るもの」が売っていない。日本の100円ショップに並んでいるものが2~3ドルで売られている。
・医薬品もベトナム側で買うのが良い。ベトナムの薬局スタッフは、パッケージを示したら「それは無いけど同じ成分のものがある」と別の薬をサジェストしてくれたので薬学、化学の専門知識を持った「薬剤師」である印象を受けたが、カンボジアの(自称)薬局は「ただモノを売っているだけ」である。期限切れの薬が売られているケースもあるので注意が必要だ。
・カンボジア側国境の街、バベットの宿代は高い。最初に訪れた市場内の安宿が窓なし独房宿12ドル提示で、少し離れた場所なら安いかと歩いて向かったら30ドルと言われた。「サーティー」を繰り返すので、「サーティーン(13)ではないのか」と訊いたらやはり「30」だった。結局、国道沿いの15ドルの宿に泊まった。これはタイ国境の街ポイペトでも同じだった。ポイペトではタイなら200バーツ代であろうボロ宿がすべて400バーツ提示だった。
・Google Mapではバベットの宿が沢山出てくるが、ゲストハウスやホテルではない場所も含まれているように思えた。学校や施設の宿舎、集合住宅内の民泊的なものも表示されているので、あれこれ探し回るより国道沿いのゲストハウス宿泊が無難だろう。
・Google Mapの情報はかなり古い。すでに廃業した店がそのまま載っている、新しい店がフォローされていないことが多かった。口コミの最新投稿年月を合わせて確認する必要がある。

ゴーダウでバイタクの勧誘を振り切り、食堂でフォーボーとコーラで5万ドン。フォーはベトナムの名物料理だが、平麺は北部のハノイの食材であり、南部は細麺のブンを使う。サイゴンでも「フォーはない。ブンならある」という店が多かった。

ゴーダウのホテルまでザックを背負い歩くには辛い距離だ。途中で気弱そうな英語を話すおじいちゃんバイタクが声をかけてきたので、5万ドン提示を3万ドンにして宿へ向かう。出発時、後ろに乗った私の体重と荷物が重すぎたのか、バイクがこけかける。トロトロと走って到着したゲストハウスは、良い感じのボロ宿だった。おじいちゃんは「やっぱり5万ドンくれ」と言うので4万ドンを渡す。沢木耕太郎の『深夜特急』の世界ならば、この場で「払え」「払わない」の問答を繰り返すのだろうが、あまり揉めても良いことはない。この街には2泊したが、おじいちゃんは翌日も同じ場所におり、バイクで付いてきたが振り切る。小さい街で外国人はとても目立つので、トラブルは避けるべきだろう。

ゴーダウのボロ宿では英語は通じず、こちらも翻訳アプリでやりとりをした。冷房付きだがスイッチはオンオフのみで温度調整は一括20度設定だった。さらに部屋として使われているのは2階のみで、3階と4階は廃墟の幽霊ホテルだった。フロントは24時間出入り自由。さらに屋上からはインドシナの大地が一望できた。一休みして外へ出ると、ちょうど夕刻となり、音割れスピーカーからベトナム人民委員会の放送が流れてくる。何かしらの報告に続きプロパガンダテイストの音楽が何曲かかかるので手持ちのICレコーダーでフィールドレコーディングを果たす。前に山形国際ドキュメンタリー映画祭で眺めた『ニンホアの家』にも夕刻の人民放送のシーンがあり、ノスタルジックな光景が心に残っていた。

モクバイ国境周辺の土地は整備されており開発計画はあるのだろうが、何もない。カンボジア側のバイタクが群がってくるがそれほどしつこくはない。日本国内で購入した格安SIMは圏外表示だった。

国境を抜けると一気に殺伐とした光景が広がる。ベトナムもカンボジアも幹線道路はあってもバイパスや高速道路の類はほぼ無く大型のトレーラーやトラックも同じ道を通るので、ものすごい砂埃が舞う。カンボジア国境側には、ベトナム人と中国人の富裕層に向けたカジノホテルが林立しているが、昼間は静まり返っている。

バベットで地元の町並みは国境から1キロほど進むと現れる。屋台でコーラを頼んで5ドル札を渡すと釣り銭はベトナムの10万ドン紙幣が返ってきたので、1ドルなのだろう。ベトナムドンが当たり前に流通している。

翌朝、宿でMacBookの充電器(MagSafe)の不調に気付く。ホーチミンまで戻り購入を考えたが、そうなると30ドル払ったシングルビザを滞在1日で捨てなければならないので、先へ進む道を選ぶ。

昼に宿をチェックアウトし、荷物を預けアップルマークを掲げる店に入るがやはりスマホ専門店だった。街にパソコンショップはあるというが期待できそうにない。次の大きな街であるスヴァイリエンを目指す。市場前にシェタクシーがおり、スヴァイリエンまで10ドルを提示される。運転手は英語を話す。宿に荷物を預けていると伝えると、車で取りに行こうと言う。一度掴んだ客は離さない。

カンボジアは主要都市間をシェアタクシーが走るが、人とモノをパンパンに詰め込んで走る。後部に荷物を詰め込み、締まらないドアを無理くり紐で縛り固定し、さらに外に自転車やバイクをくくりつける。バンの上にも「過積載上等」の量が乗っかる。

グローバルなものの値段は変わらない、ガソリンもそこに含まれる。カンボジアと日本の物価を比較すれば、リッター1000円くらいのコストがかかっているので運転手は元を取るのに必死であり、客と荷物が埋まるまで延々と粘る。8年前に乗ったバンは、シートの1列を撤去し、両端に木の板を並べ、向かい合わせで膝を突き合わる形で倍の人数が乗れるように改造されていた。こうなると、3人シートを詰めて4人乗るより、最大8人が詰め込める。カンボジアは子供がとても多い国なので、10人以上も可能だろう。

スヴァイリエン行のシェアタクシーは、しばし客待ちをしていたがカンボジア人の兄ちゃんと私の2人の客を乗せ出発。目的地には1時間ほどで到着した。街の中心部ではなく国道沿いで降ろされる。トゥクトゥクの運転手にコンピューターショップに連れて行ってくれと翻訳サイトで伝えると、やはりスマホショップ。一応店員に訊ねるが、マグセーフはないという。近くのゲストハウスの7ドルのファン部屋に泊まると、充電器が反応した。ただ、これは一時的なもので、翌日には完全に沈黙してしまった。

翌朝、市場付近にシェアタクシーらしきものが止まっていた。運転手は英語を話す巨漢デブ兄ちゃんだった。日本の援助で完成したツバサ橋の街、ネアンルックで途中下車を考えていたが、どの街まで行っても一律10ドルと言われたので終点のプノンペンまで乗った。

最安値10ドルほどの移動距離を、32ドル(宿泊費は別)かけて移動した算段になる。費用はかかったが大国であるベトナムの重力圏から少しずつ脱していく感覚を感じられるなど得られるものは大きかった。とはいってもプノンペンまで来ると今度はタイや中国の影が見えだす。カンボジア西部にある第三の都市バッタンバンは「ほとんどタイ」だった。カンボジアで感じたもろもろについても追って記したい。

クチバスターミナル内にて。数字と行き先が表示されているのでわかりやすい
ゴーダウの人民委員会の施設
ゴーダウの川沿いにあった路上喫茶店で。ベトナムにはこうした店が無数にある
カンボジアのバベット。ベトナム側から国境を超えると風景の殺伐度が一気に上がる


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