『34話感想』暴太郎戦隊ドンブラザーズ「なつみミーツミー」

モンスターより人間の方が、生々しくて怖い

今回のドンブラザーズ

 ソノイの憑き物をおでんで解除した。思い出の言葉で夏美が戻ってきた。そして雉野はすべてを失った?

存在しない希望

 雉野にとってみほちゃんは希望だ。全ての物事を上手くこなすことが出来ずに鬱屈としている彼にとって、辛いときには励ましの言葉を、目出度い日には祝福をくれる理想のお嫁さん。彼の生きる意味=命と言って差し支えない程に大切な存在。彼女のためなら自分の手を汚さずに狼藉者を処分する、安全のため・愛のためにヒトツ鬼にだってなる。

 しかし、みほちゃんという存在は「獣人によるなりすましのコピー人格」に過ぎない。この世にあり得なかった存在だ。ある日、ふと消えてしまうほどに脆いものである。

手料理の正体

 仮初の幸せを送る雉野を訝しむのは犬塚だ。恋人の夏美に酷似しているみほちゃんが、本当に他人なのかを確かめるため雉野に頼む「以前お流れになったが、自慢の嫁の手料理を食べさせてくれ」

 招かれた犬塚の前に出された手料理は「ボンゴレビアンカ」と「豚肉のリンゴソース」。それはかつて、犬塚が夏美に教えた料理そのままであった。つまり雉野は間接的に犬塚の手料理を食べていたのである。こんなの知ったら脳が破壊どころの騒ぎじゃないな……。

 色々な話の中で、犬塚はさりげない一言「などと申しており」を呟く。瞬間、みほちゃんは硬直し、彼が去ろうとするときには追いかけ、夏美として犬塚と熱い抱擁をした。それを呆然と見つめることしか出来なかった雉野は翌日、晴天を見て晴れやかに笑っていた。

1人悶絶するジロウ

 前回のドンムラサメとの戦いで体中にダメージを追ったジロウ。しかし誰かに助けを求めるわけでもなく、自宅の布団で痛みとの孤独な戦いを演じていた。幼馴染の子に連絡をするか迷っても、光闇どちらも電話をかけないのは「僕(俺)はヒーローだから誰かに頼らない」意思表明なのだろうか? 拠り所に依り続けた結果壊れそうな雉野と、対象的な生き方である。彼はとことん独り。いつも孤独。それが当たり前だとしても、どこか寂しさを感じてしまう。

晴れの日目出度いおでん:32点

 ファッションリーダー! 高級おでんの店に行くならともかく、露天の店に行くにはこの格好流石に場違いですじゃ! しかし何で唐突におでん屋に行こうとしたのか? それは恐らくタロウ汁の中にあった約束の断片を実行するためだろう。

「お互いの戦いが終わったら美味いものを食おう。おでんとか」

27話でタロウはソノイに勝利した。
32話でソノイはタロウに勝利した。

 お互いの倒すべき存在を、復活したとは言え正々堂々1度倒している今の状況下、今こそ約束を果たす時である。

これは偶然ではない

 タロウのいるおでん屋に居合わせたのは偶然に見えるが、「タロウと言動・思考回路が似ている」ことを何度も印象付けられているため、何らかの理由の基おでんを食べる→その選択過程が似通っていたためと考えられる。

何で正装?

考えられる理由1:タロウ汁によりタロウの思考が混じっているのだとすれば、「ファッションリーダーのソノイ」が強烈に印象に残っているため、ファッションセンスはさておきカッコいい服装でいるのが普通となっている。

考えられる理由2:単純にソノイのファッションセンスがずれている。

カラシで解決

 これで解除される程度の呪いだったんかい!!!!??? 夏美が基の人格を取り戻したのは思い出の言葉あってのエモい演出なのに、こっちは確かに約束はしていたけどおでんのカラシで治っちゃうの流石に安い、やすさが爆発しすぎている!

ソノザ編集長容赦なし

 まあなんやかんやでヒトツ鬼現れるんですが、ソノザさんはハルカとの戦いも遠慮はない。「甘えるな! 戦いは戦いだ!」厳しいスパルタ! 体力は資本ですがこれはやりすぎですよ編集長!

「有罪ですよ」

きっとこの報いは最悪な形で訪れるだろう。ヒーローでありながら、その力を行使して人間消去の手伝いをしたのだから。それが彼の死だけで済むならまだ救いがある。今の彼からみほが離れる展開がきたとき、果たして彼は正気でいられるのだろうか……。

8話のネタバレ感想より抜粋

「そろそろみほちゃんを返してくれませんか?」

 雉野は認めたくないのだ。みほちゃんは無理矢理攫われてはいないこと、自らの意思で犬塚と抱き締めあったことを、悲鳴も救援の声もあげない合意の上でのことだということも。この世に生きている上で絶対に失ってはいけない最後の希望が、何の前触れもなく去ってしまったことを。

 しかし本人は精一杯余裕を持ったつもりでも、言葉が違う。先ず彼が言うべきは「みほちゃんは「元気か」「無事か」「何であんなことを」」と、彼女を気遣ったり、それとなく状況を把握することなのだ。心底愛している女性を モノみたいなノリで返す返さない と話すのは、正直言って

 みほちゃんが大事というよりも、『みほちゃんのいる自分の生活』が大事なのだと捉えてしまう。

 犬塚からすれば辛い。獣人のことも知っている、夏美のことも知っている。1年を喪失感の中で逃げ続けた彼だから、雉野が抱く感情への理解度も高い。誠実な犬塚だからこそ、雉野が声を荒らげて取り乱すさまを見ても、「お前は悪くない」と気遣い、その上で真実だけを語って許しを請う真似はしない。

 だが犬塚は「雉野は話せば分かる」と大きな思い違いをしていた。加えて、雉野にとってみほちゃんへの愛が、どれほど屈折した感情の上に存在していたのかを知らなかった。

 犬塚がどんな言い分を用意していたとしても、みほちゃんを誑かした奴=「有罪」と、雉野の中で最初から決まっていた。復讐のために自分の手を汚し「みほちゃんとの生活」を穢すことは許されない。だから犬塚の立場を考慮した上で、公権力を用いて合法的に抹殺する手段を選んだ。

 見晴らしが良く高低差も少ないカフェ。複数の警察が囲うにはちょうどいい絶好の立地だ。

「有罪ですよ」とニタリ笑う雉野の笑みは、恐らく作中一恐怖を与える名シーンだと個人的には思います。ただ……8話の時と違い、肝心のみほちゃんが夏美になった以上、犬塚を断罪しても状況は一向に変わらないことを雉野は理解しているのか、結構な疑問である。

 しかしドンブラザーズメンバー、イヌの正体がわかっていたら大変だというのが今回理解できた……場合によってはソノイをまた利用して消しかねなかった。

次回は


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