暴太郎戦隊ドンブラザーズ 8話ネタバレ感想「ろんげのとりこ」

消滅を
願いロン毛の
タゲ外し
 つるぎ一閃
 罪も背負わず

あらすじ

 雉野つよしにとって妻のみほは、自分以上に大事な存在だ。今日も理髪と言葉で感涙出来るほど、幸せの具現化になっている。何気ないある日、町中で出会った立てこもり仲間の犬塚翼と「恋人」の話題で盛り上がり「自慢の妻の手料理を是非食べてほしい」と招待するほど打ち解ける2人。

 しかしみほはその頃、「自分に相応しいモデル」を求める偏屈人に攫われていた。みほはその場をうまく脱出し、心配で探しに来ていたつよしと合流して気絶。自分の妻を恐ろしい目に合わせた偏屈人=ヒトツ鬼に怒りを爆発させるつよしは、その後集まったドンブラザーズと共闘するも、脳人【ソノイ】による消去執行に間接的だが手伝いをしたのだった。

ソノイとタロウ

 人間状態での正体をお互いに知らないソノイと桃井タロウ。偶然出会った2人はとても馬が合う。いずれも超常の力を持ち、困った人を助ける高潔な精神を持ち、根っからのヒーロー気質なので合わないはずはない。

 だがほんの少し、「正義を成すための事柄」が違う。だから変身後の2人は反目する。戦う。真にタロウが求めているだろう理解者足り得る存在との対立は悲劇である。

2人の「欲望=悪」に対する対処の仕方。

 ヒトツ鬼発生の欲望を服のシミに例えよう。そのシミは洗えばだいたい落ちるが、少しだけ跡が残る。

ソノイはシミごと服を捨てる。何故ならそちらのほうが綺麗さっぱり、跡形もなく消えるから。

タロウは跡のついた服を着る。何故ならそちらはまだまだ着れる、見捨てるほどでもないから。

 人の欲望は尽きない。気をつけて抑制し続けない限り、小さくともふつふつと湧き上がる。ヒトツ鬼はバグのような存在で、1度なったら再発の可能性も否めないだろう。

 だからこそソノイは「排除」のために動くし、その行動に迷いはない。誰であっても斬り捨てる。しかし桃井タロウは「やり直し」の機会を与えるべく動くため、迷いなくソノイと戦える。

 どちらも【世界の均衡を正す】ことで一致しているが、そこに情の有無を挟むのかが決定的に違う。強すぎる欲望の先にある滅びを理解していても、2人は未だ相容れない。今後この辺りの折り合いをつけて距離を縮めるのか、この溝が埋まることなく終わるのかは謎。

冒頭の風船の意味

 ここは人によって解釈分かれるポイントですが、
「人間からすれば風船をとりたい(救いたい)」
「風船は空を飛びたがっている(解放=介錯する)」という2つの主張、今回の人間関係や結末までを端的に表しているのではないかと私は勘ぐってしまう。

明らかにおかしい存在

 犬塚にとってのナツミはかけがいのないもので、結婚も申し入れるほど好きな存在だ。雉野にとってのみほも、かけがいのないもので、結婚するほど好きな存在だ。

 2人の馴れ初めは聴く限りだと似ているだけで済むけれども、映像として視聴者に提示されると恐怖でしかない。同じ姿、同じ特徴、ラーメンを食べるのも同じ、同じデート、同じ場所でのプロポーズ。「実は雉野と犬塚が同一人物なのではないか」と錯覚してしまうくらい、あらゆるシチュエーションが似ているのだ。

 みほとナツミが似ているというのは5話の立てこもり回で話題になってましたが、まだ8話という段階で切り込んできた。

 そして今回偏屈人に攫われたときも、少し驚きはしたが恐怖している様子は殆どなく、素人では思いつかない脱出術で手際よく逃れる描写でただの女性とは言い難い。

 全てにおいて完璧すぎる高嶺の花でしかない女神というべき存在が「駄目な自分を全肯定してくれる」絶対的優位性。それが雉野の精神を盤石なものにしている。悲しいかな、今回はその自信の象徴に疑惑を抱かせる不穏な回だった。

僕らはギロチンを待っている

 殺したいほど憎い相手は中々いない。だが「死なないかなー」と漠然と考えてしまう相手は両手じゃ足りないくらいいるのではないだろうか。決して自分の手を汚さず、ある日忽然とこの世から消えてくれたらいい相手、私にもいる。余程の聖人君子でない限り、いるはずだ。

 しかしドンブラザーズ世界には、脳人というギロチンを持った存在が定期的に現れてヒトツ鬼を退治ならぬ消去していく。もし。「死なないかなー」と思う人間が彼らに消去されたらどうだろうか?
 
「ああ。死んだのか」くらいの気しか起きないだろう。特段嬉しいわけでもない。悲しくもない。ただいなくなっただけ。少し煩わしさが消えるだけ。所詮他人事だ。

 特に興味ない対象でさえこのように思えるならば、「いなくなってもらわなければ困る」段階まで憎しみが膨れ上がった場合どうなるか。

普通の小市民 雉野つよし

 現実で親しい仕事仲間の、素顔や本性を知ることは殆どない。身近な家族の本性すらも、化けの皮が剥がれた時くらいしか見破れないだろう。それを痛烈に物語った作品が【笑ゥせぇるすまん プラットホームの女】でした。

 私たちは雉野つよしを大きく誤解していた。彼は驚くほど「自分」がないのだ。過去、何をやっても誰にも勝てないほど弱い彼は、どれだけの劣等感をその身に抱いて生きてきたのかを私は知らない。長い年月をかけて「自分」を擦り減らされて今に至ったのだとすれば、最早自分に希望を見出したり、自分に夢を見ることも出来ないだろう。

 容姿は並、仕事も上手くいかず、自信を持つことも出来ない。そんな彼に「みほ」という存在は【これまでの全ての不運を帳消しにしてお釣りが来る存在】だ。自分ではない他者に全てを懸けている。

 そんな存在を奪われそうになった時、人は羊のままでいられるか? 答えは今回の彼が示してくれた。彼はロン毛に「改心」等を求めず、「この場から消え失せろ」という明確な殺意を持っていた。自分の手を汚さずに消去するためには、桃井タロウの「退治」では生ぬるい。

 自分以外の処刑人、脳人に消去を任せるため、タロウの邪魔をした。その結果排除されたやつのことを気にかける心配もない。手のきれいな自分はこれからも妻を愛していくにたる男で有り続ける。最後の最後で「良い夫」であろうと取り(鳥)繕う

 きっとこの報いは最悪な形で訪れるだろう。ヒーローでありながら、その力を行使して人間消去の手伝いをしたのだから。それが彼の死だけで済むならまだ救いがある。今の彼からみほが離れる展開がきたとき、果たして彼は正気でいられるのだろうか……。

露骨な連中

 今回現れたヒトツ鬼の偏屈人。彼はこれまでに出てきた悪党とは少し事情が違う。

 同情の余地が十分にある親しい人間、或いは志の暴走でヒトツ鬼になったパターン。この時出てくる端キャラにはそこまで悪いやつがいない。暴走する人にも感情移入が出来る。

 逆に脳人による消去を賜ってしまった「あかりどろぼう」の犯人や今回の偏屈人。お届け先ではるかに絡む悪党や、車上荒らしなどが登場する回には
「こいつは別に消えても問題ないだろう」「ヒーローの活躍対象まったなし」などの、現実にもいそうで大体の人が嫌悪感を示す人物が多い。これは多分、意図的にやっている。

 偏屈人は現実にもいるだろうが、犯罪にまで発展するかと言われたらそんなことは極々稀だ。よろよろ歩く人も、ジロジロ見てくる人も、この世の中色んな人がいる。ろんげで体を傾けてブツブツ言葉を喋りながら睨めつけるように周囲を伺う人もいるかもしれない。

「ちがいは 間違いじゃない」とは、ドンブラザーズEDテーマにある歌詞だ。

 世の中にあるちがいもある程度おおらかに見れると世界も変わります。

ソノ二様

 ソノ二様の手を勝手に握ろうとする奴には死を賜るしかないな。良い気になるなよ犬塚ぁ! でも私がお話したら10秒も経たずに「つまらない」と罵倒されそう。それはそれでいいんだけども!

次回

カイトが変身?「ぼろたろうとロボタロウ」 だっちゅう!てれってれってれってーれーれー秘密のjy(以下略)

サポート1人を1億回繰り返せば音霧カナタは仕事を辞めて日本温泉巡りの旅に行こうかなとか考えてるそうです。そういう奴なので1億人に到達するまではサポート1人増える度に死に物狂いで頑張ります。