興行収入100億円は通過点。劇場版鬼滅の刃 無限列車編、超ヒットの理由を考察

 劇場版鬼滅の刃が10日を待たずに、100億円の興行収入を叩き出した。私は同作品をジャンプ連載開始時から遊郭編辺りまで読み続け、その後ジャンプ購入をしなくなり、同時に鬼滅も見なくなった。

 吾峠呼世晴(ごとうげ こよはる)先生の短編作品、肋骨さんと、蝿庭のジグザグをジャンプで読んだ時、その独特の世界観と主人公の特異性が印象に残っていた。ジグザグさんに至っては豹変ぶりや偏屈ぶりが凄まじかった覚えがある。

 だからこの方が長期連載をした場合どんな作品が出るのか、非常に興味深かったし、前のブログでもワクワクしていた。実際に連載が始まって、血飛沫の応酬が繰り広げられながらも独特のセンスが光る作風に仕上がっているのを見て安堵すると同時に、人気低迷期で滅茶苦茶不安になった日々もあったと思いだします。

 善逸や伊之助が出てくるまでは中々人気が上がらなかった。禰豆子と一緒だけど口がきけないため、吾峠呼世晴先生が得意とする会話センスを発揮し辛かったのだろう。そして鱗滝さんのもとで修行する展開を最初に持ってくるなど、ジャンプにおける人気低迷のコンボを引き起こしてしまう。当時の自分が記事で何を書いたのか調べようと思いませんが、根底では信じていたと思います。そして見事アニメ化まで漕ぎ着けたのです。

 そこからの快進撃はもう知らぬ者はいないでしょう。アニメの人気が白熱してコミックスは空前絶後の売り上げを叩き出し、続編にあたる無限列車編をTVではなく劇場版に仕上げるという一報を聞いてワクワクが止まらなかった記憶もある。

 無限列車編は確かに素晴らしいエピソードだと分かっている。オチも知っている。知ってなお見たいと思わせるパワーもある。

 しかし様々なメディアが取り上げ、コラボ商品も多数出ているのは知っていたが、時刻表の如き上映スケジュールやスクリーンの多さに「流石にこれはやりすぎではないか」と笑顔で盛況っぷりを喜んでいた。

 喜びが驚愕に変わったのは、初日の売り上げが12億円というのを聞いた時です。平日の金曜日で12億円?? 12億円というのは、劇場版クレヨンしんちゃんヘンダーランドの大冒険が最終的に叩き出した金額と同等。

 客入りが鈍い平日でこれだけの数字を?? 土日はどうなると思って集計結果、46億円と聞いて慄いた。これは、当初スタッフたちが目論んでいた最終的な興行収入100億円等、通過点に過ぎないだろうと予感させました。

 先にも述べましたがこの映画、本編からの完全な続編です。コミックスを読んでいた人も、毎週ジャンプを購入していた私みたいな人も、その顛末まで存じている内容そのままだと聞きます。パラレル時空やオリジナル映画ではありません。私は先ほどアニメを20話まで見返したので、あと少しで劇場に足を運べますが内容を知っている。知っていても見たい。

 一般大人料金1900円と映画はやはり高めだけど、映画館でしか味わえない大迫力は、やはり行ってこそ光る。値段などおつりがくる。1900円を失うのではなく、1900円で掛け替えのない体験をしに行くのだ。

 そして鬼滅の刃をここまで大々的に広めてくれたのは、ほぼ間違いなく、ufotableの皆々様方に相違ない。今年6月までは脱税などで悪印象を抱かれた会社だが、今回の売り上げで清算してくれるとありがたい。リンク先の計算方式で仮に最終興行収入が200億円になったとした場合、100億円が配給側、その内宣伝広告が10億円、3割に当たる30億円が手数料、残った60億円がufotableのものになる計算です。並のアニメ製作で出せる利益ではない。

 こうなれば鬼滅の刃続編は決まったようなもの。逆に続編を出さないなんて愚は犯さないでしょう。

9日で興行収入100億円に届いた4つの理由

 原作が良かったからとか、映像が綺麗とか、そんな理由だけで片づけられるなら苦労はない。原作が良いアニメならこれまでもいくつもあったし、映像が綺麗な作品もまた数多くあった。

 10億超えれば大成功の映画で、100億は歴史的快挙。それも10日かからずの金額で。何故? と私も思う。スクリーン数を多くとったから? いいや、スクリーンを多くとろうが回転率を高めようが、並みの映画でそれをやっても採算が取れないのは明白です。では何故か?

1:アニメ映画に対する認識の変化

 アニメの映画と言えば、ジブリ。そしてニチ朝アニメや特撮の映画を思い浮かべる人は多い。或いはクレヨンしんちゃんや、名探偵コナン、ポケットモンスターにドラえもん等。

 これらは一般的に「アニメ映画といえば?」で返って来るであろう答え。しかし最近、新海誠監督の【君の名は。】【天気の子】が社会現象を巻き起こし、映像美と一本筋通った青春物語に魅了される人が多かった。映画館でアニメを見る事が、恥ずかしいことではなくなったから。アニメが一般層にも浸透したからこその成果であり、鬼滅の刃はその最先端に立っています。

2:作者を泣かせたアニメ

 アニメを手掛けたのはufotable。【Fate/ZERO】【Fate/stay night】でお馴染み、超の付くほど美麗な映像で有名な会社。最近だと脱税とかネガティブなニュースもありましたが、アニメ業界内でも実力はトップクラスと見受けられます。

 自転車操業的なアニメだと、納期に間に合わせるために作画力を崩して放送というのが結構あったりするのに対し、鬼滅の刃においては終始ハイクオリティな作画を保ったままゴールしました。その中でも19話終盤の出来は、劇場版アニメではと間違える程、超画力と展開。原作読んでいた時はそこまで印象に残っていなかったシーンが、アニメだとカッコよさと美しさで完璧に補完。火(日)の輪を描く場面で私は吠えた。アニメ化は正解だったと確信させてくれました。

3:19話からの爆発的な原作の売り上げ

 知名度が急上昇し、原作が売れに売れて、しかも本誌ではクライマックス突入とあっては燃えないわけがない。2020年の頭に至るまで鬼滅の快進撃は凄かった。痛快過ぎた。最早ぐうの音も出ない。

 そして人気絶頂で最終回も迎え、コミックス最終巻も時期に発売される。映画が売れても原作者にお金はあまり入らないらしいが、原作コミックスなら話は別。私も映画見終わり次第買いに行こうと思う。

4:王道

 時に今年の7月から9月、私は半沢直樹一色だった。アニメではないドラマ、しかも私が好む美少女要素など欠片もない男とスーツばかりの見た目。内容はシンプルに勧善懲悪。金を貪る悪しき者を、土下座で成敗。

 勧善懲悪は王道の一つ。鬼滅の刃も、ジャンプにおける友情努力勝利の王道を踏襲し、様々な作品の色々な要素を取り入れた上で魅力的な作品に仕上げている。王道は古臭いのではない、普遍的な面白さがあるから現代で通用し人気が炸裂する。だからこそ王道を行く半沢直樹は終始視聴率が高い。

 半沢直樹と竈門炭治郎の似ている部分は、物怖じしないところ。どんなに強い敵であろうとも、自分を信じ、信念を貫いて最後に敵を討つ。言うべきことをハッキリというし、私たちが言いたい事、私たちの叫びも見透かされているかのようなセリフ回しが痛快で、感情移入もし易い。悔しい悲しい、熱い、拳を握る。だからこそシンクロした心が躍動と共に体を震わせる。

 半沢直樹の反響が大きい世界であれば、鬼滅の刃を受け入れられないはずがないのです。

300億も射程圏内の理由

 9日で売上100億円を叩き出した【鬼滅の刃 無限列車編】。この勢いはまだ続くと思う理由として、完全新規客の流入が期待される事があります。

「100億円も売り上げる映画!?」と、人気アニメだろうがアニメ映画など見ないという層も、この大ヒットを無視するのは余りにも大きく困難。世間の単純な流行に乗りたくないという人も、逆に自分が遅れていて置いて行かれるかもしれないと、追い上げて来る。その際アニメの正当続編という情報を知れば、サブスクリプションを活用して過去作を見る。私みたいに。

 そもそも興行収入100億って簡単に言いますが、日本で興行収入100億円を突破した映画とは何か? wikiによれば鬼滅を抜いて10作品。これは、歴代の日本映画において、10作品です。間違いなく日本映画の柱ともいえる、誰でも一度は耳にしたことがある強者ばかり。

 この内ジブリが5作品。踊る大捜査線が2作品。南極物語。天気の子、君の名は。

 今回鬼滅は10位の【踊る大捜査線 THE MOVIE(101億)】を上回るどころか【南極物語(110億)】【風立ちぬ(120.2億)】、そして最近入ったばかりの【天気の子(140.2億)】すらもゴボウ抜きする未来が見えます。

 売り上げが全てではもちろんない。が、昨今の情勢的に映画館でこれだけの売り上げを叩き出すポテンシャルの作品はそうない。サブスクリプションにより自宅内で映画が見れる時代。映画館自体に魅力を感じない者もいるのだろう。それでも年に一回のペースで名探偵コナンは物凄い売り上げ、だが100億に僅か届かない。恐らくリピーターも複数いるであろう安心と実績のコナンでさえ、100億円の壁が遠いのだ。

 しかも先に挙げた映画は皆、ロングラン上映の末の最終的な数字であり、鬼滅はまだ上映から10日程度しか経っていないのが常軌を逸している。

 更にこの映画は冒頭で述べた通り、アニメ26話からの続編で、言うなれば原作派は筋書きも顛末も全部承知の上。オリジナルキャラ等も出ない。この無限列車編という作品を映画館で見るために結集し、幾度も見るのです。

 知っている者たちですら魅了されて何度でも見る気になるこの映画。果たしてこれから鬼滅の刃を知る者たちが、どれほど現れるかによって300億円の壁を超えるか超えないかが決まると思います。因みに200億円はこの勢いならほぼ確実に超えるでしょう。日に平均10億円以上売れているので。

鬼滅の刃ブームは生生流転

 この手のアニメの熱狂は、話題がなくなったころに沈静化するのが常。次のアニメ化までの時間が長くなればなるほど、熱は一気に引いていく。

 鬼滅はどうか? 原作が既に最終回を迎え、全体的な流れを俯瞰が可能。その上で細々とした演出の付け加え、破綻のない脚本も容易に出来る。あとは演出をどうするか、次の映画をどうするかにかかっています。勿論制作予算は結構なお値段するでしょうが、それに見合ったペイがあるので臆することはありません。

「次の映画はあるのか?」あるでしょう。この化物級の売り上げを叩き出したのを見て、映画業界が手放す筈ないじゃあないですか。だって今回のタイトルからして【無限列車編】。【編】。つまり、今後も区切りの良いエピソードを映画に仕立てるのは決まったようなものです。

 しかしアニメ2期はどうするのか気がかり。映画自体の出来があまりにも良いのであるなら、再度編集して30分×4話でやる旨味は全くない。金曜ロードショーとかで地上波放映しての翌週から続きを放送でしょうかね。

 あとは鬼滅学園のアニメ化? ともかくアニメ製作を急ピッチで進めてほしいのが本音。

おわりに

 鬼滅の刃は面白い。そして様々な理由があって100億円を超えた。これは奇跡ではなく、鬼滅の刃に賭けた製作陣営の情熱の賜物。しかも100億円は単なる通過点で、本当の爆発はまたすぐにでも起きる事は明白です。大きなスクリーンで鬼滅見たら滂沱と嗚咽でマスクがびしゃびしゃになる未来しか見えないが、アニメ振り返りは残すところ柱会議のみ。

 王道を行く、原作を崩さず、そのまま真っ直ぐアニメ化したら超ヒットを成し遂げた。私は現代のシンデレラを見ている気分です。映画を見終えたら感情剥き出しの感想記事出すでしょう。皆様もまだ見てないならアマプラでも何でもいいから見てほしい。ブームに乗ることは悪ではないから、思いきり見てほしいんだ、鬼滅を、吾峠呼世晴先生の作品を!

 待ってろ映画館!!

サポート1人を1億回繰り返せば音霧カナタは仕事を辞めて日本温泉巡りの旅に行こうかなとか考えてるそうです。そういう奴なので1億人に到達するまではサポート1人増える度に死に物狂いで頑張ります。