機動戦士ガンダム 水星の魔女 14話感想「恵まれない僕らの選択」

前回の水星の魔女!

 突然のテロにもめげずに粛々とホルダーとしての責務をまっとうするスレッタ「ミオリネさんのためにも勝ち続けます!」

 そんなときに地球寮に転校してきたフォルドの夜明けのソフィ&ノレア
「ヒャッハー! ウメェ飯に空気で反吐が出るぜぇエエエ!」

 平和な学園を守ろうとニカは立ち上がり敗北、それを見つけたスレッタは
「決闘で私が勝ったら、ニカさんにひどいことしないで」

 こうして始まる決闘。勝つのはどっちだ!

今回のあらすじ

母と父と花嫁の願う『0』

 クワイエットゼロ。パーメットの全てを掌握する技術で、エアリアルが引き金になるという。掌握することであらゆるガンダムを無効化することも出来るし、あらゆるガンダムを意のままに操作することも出来る。デリングはおそらく前者、プロスペラは後者だろう。

崩壊前夜

 乱戦形式の決闘を行う前夜。それは文化祭開幕前夜と似ている。きっと勝つ。今度こそ勝つ。ホルダーを倒すための計画を練る。水星女をぶっ潰す。

 様々な思惑が渦巻くが、それらは学生の分を超えない。子どもたちの祭りにMSは競技の道具として存在し、野球選手がバットを握るように、サッカー選手がボールを用いるように当たり前のもの。

 しかし株式会社ガンダムの地球寮組は知っている。MSが一度この学園を飛び出した時、巻き起こる凄惨な戦いを。そしてシャディクたちはもっと恐ろしい計画を企てる。たとえそれが多数の死者と、決闘という聖域を侵すことになっても。

聖域侵犯

 きっと皆が見たかったマッチアップがそこらかしこで見られる決闘。ブレードアンテナを撃てば勝ちの競技。1期では横槍も邪魔もない純粋な競技だったそれは、暴力で捻じ伏せられた。学生の犠牲者が少なくとも1人、死にかけもいて、学園はパニックだ。

 シャディクにとってはこの混乱そのものが撒き餌で、本命はサリウスの拉致。学園のことも、そこに在籍する者も彼にとってはどうでもいい存在でしかないと分かってしまう。

魔女の在り処

 大方の予想に答え合わせが行われた。エリクト=エアリアルであること。プロスペラのOP映像やこれまでの言動、青いパーメットの光を最初に見た時の涙を見る限り、彼女の大願はエリクトとの再会と何者かへの復讐でしょう。スレッタも、デリングも、学園も、彼女にとってはエリクトに手を伸ばすための駒でしかないのだ。そのグロテスクな発想と実行力に「吐き気を催す邪悪」を感じても不思議じゃない。

各人の感想

チュチュ先輩

 危ういところで踏みとどまれたと思った。操縦技術は高く、ヤろうと思えばヤれる技量の高さは決闘でシャディクを撃破したことで証明済み。ブチ切れた怒りの衝動をそのままに行くこともできた。一度タガが外れて、血の気で体を洗い流せば、凍てつく指先も暖かくなる。躊躇うより先に行動できる。

 人が平和のために築き上げた規則を無視し、本来の動物になってしまえたら何よりも自由になれる。それでも人が獣になる一線を超えられないのは、文明という名の檻があるから。自分の大切なものを傷つけられた時は果敢に拳を振るうことが出来る彼女だからこそ、すべきことと守るべきものがしっかりと出来ていて、助けを求める人がいたら、それが普段いけ好かない奴らであっても守ろうと動きだす。

 衝動に身を任せて塗り潰される展開は、チュチュ先輩には訪れないだろうと確信した場面だった。


フェルシーちゃん

 ペトラとラウダの距離がなんだか近いなと思っていたんだろうな。でもグエル先輩一筋の彼女にとっては別にどうでもいい案件だろう。割りと取り巻きのような扱いの彼女だが、決闘に参戦できる程度には腕が立つようで少し嬉しくなる。

 エースのラウダが奇襲により瀕死に陥った時、パニックにはならずに必死に守ろうとする姿は「頑張れ」と応援を送りたくなる場面だ。その後救援を送り、彼の身を少しでも延命するために1度機体から離れて介抱したりと、勇気を振り絞って最善手を取り続けた。その健闘は讃えられてしかるべきでしょう。彼女の株が猛烈に上がったと思います。


マルタン寮長

 彼に出来る精一杯のことは、ニカを助けることではない。地球寮の皆を守ることだ。ニカを怪しんでも1度だけ理由を話すチャンスを設けたりしたのも、彼女も含め地球寮メンバーだったから。しかし決闘にテロリストが再び現れ、その場にニカがいないことが決定打。「ニカがこの事態を招いた」と思うのは自然。このまま庇い立てたら『テロリストと内通している可能性がある者を匿っている』と、ただでさえ立場の悪い地球寮の信頼性は地に落ちる。何より学園そのものが危ないとなったら突き出す以外にない。彼のことを非難する声も見かけるが、人としても寮長としてもギリギリのせめぎ合いで折半した良い判断だと思う。


なにやってんだニカああああ!!

「告げ口をしてソフィとノエラを排除したい」「自分が退学になっても構わない」までは覚悟を決めていたニカ。だが、「地球寮の皆から嫌われたくない」故に人気のない場所に逃げてしまうことで告げ口は失敗に終わる。最後の最後で我が身可愛さを出してしまった。

 進めば2つ。それを欲張って3つ取ろうとしたツケが回ってしまい、おそらく彼女の立場は最悪の『とかげの尻尾切り』になってしまうだろう。全ての罪を負っ被されてシャディクから捨てられる。


エンジョイ&エキサイティングな5号君

「孤独だった僕を変えたのは君だよ」
 変えたのはお前じゃねえよ!?
「僕のことを知りたいと言ったのも君だ」
 知りたかったのはお前だけどお前じゃねえよ!?
「好意の証をちょうだぁい(ねっとり)」
 純粋にサブイボ出る!
「君につく悪い虫は僕が払ってあげるよ」
 お前じゃい!悪い虫はお前じゃい!
「だからご褒美をくれよ、2人だけの時間とかさ☆」
 かあっ、気持ちわり、やだおめぇ!

 言うはずないだろうそんなこと! 俺たちのエラン君が! 速くデータストームの海から復活してくれ4号くん!!!!

 まあこんな気持ち悪いことを平気で言うエラン君(5号)だが、自分が消耗品にすぎないこと、ほんの僅かでも強火で生きてやるという気概、冷静な分析力、ガンダムの呪いが降りかかる一歩手前スコア2でそれ以上のソフィやノレアたちと渡り合える実力。正直好きなキャラです。4号くんのフリをしているけど全然似せる気がないのは、4号くんの諦観的な瞳や生き方が好きじゃなかったからでしょうね。

「元々いつ死ぬかもしれない世界の中から選ばれて、折角このイケメンフェイス(+会社の顔)として仕立て上げられて立派な生活も出来るんだ。消耗品だろうがなんだろうが構うもんか、いい思いをして自分の好きな時に盛大に死んでやろう」そんなこと思っているのだろうか。

 今の自分の置かれている立場や、道具としての自覚を持っている彼の生涯は短いだろう。しかし死ぬその時まで「顔」「名前」「生活」の全てを満喫し切るような彼は、まるでシンデレラである。今と未来を精一杯生きる彼は、死に場所を何処に定めるのかとても興味があります。


ソフィが求める幸せ

「お腹いっぱいのご飯」「ふかふかの寝床」「温かいシャワー」
「コミック」「ゲーム」「あたしを好きでいてくれる家族」

 とりあえずソフィの主張を並べると、まるでチェンソーマンのデンジくんだ。もちろん求めるものが色々違うが、根っこにある『幸せになりたい』渇望は同じ。そして現実にも、私達が当たり前のように持つものを生涯かけても得られないかもしれない人はきっといる。その生涯の長さにも、圧倒的な時間の開きがあるだろう。

 デンジくんはどうにか、人としての生活に溶け込み馴染んで営みを築き上げることは出来た。しかしソフィには「強力だが呪われた機体」にしか縋れなかった。その出自には少しだけ同情するし、かわいそうだとも思うし、幸せになって欲しいと願いはする。

 それでも、無関係な人間を殺して、殺して、殺したその先に得られる当たり前で尊い幸せなど、泡のようにかき消される脆く儚い夢でしかない。

お腹いっぱいのご飯は戦火で焼けた大地に実らない。
ふかふかの寝床は平穏無事でない世界では安心して寝れず、
エネルギーを送るパイプなしにシャワーは浴びれず、
面白い漫画やゲームは戦時中に右へ左へと偏り、

 好きでいようがいまいが、戦火に家族が焼かれるかもしれない。

 暴力で勝ち取った幸せの血道には、這うように追いかける何者かの刃が煌めく。それが早いか遅いかの違いであって、ソフィはすぐさまデータストームに脳を焼かれて短い生涯を終えた。


おまけ:Gビット

『ガンダムX』全話視聴済みの私、ビッド式無人MSを見て喜びと同時に「また悪夢が始まる」予感に背筋が凍る。自分の意志1つで意のままに動く人形との連携はまさに魔女と呼ぶにふさわしい。


サポート1人を1億回繰り返せば音霧カナタは仕事を辞めて日本温泉巡りの旅に行こうかなとか考えてるそうです。そういう奴なので1億人に到達するまではサポート1人増える度に死に物狂いで頑張ります。