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夜のクラゲは泳げない11話「好きなもの」感想

Vtuberに救われる命は確実にある。

前回のあらすじ

 木村ちゃんが貰った特大の光は、花音ちゃんを照らす太陽となって甦った。

※この記事は【夜のクラゲは泳げない11話】のネタバレを含みます。


今回のあらすじ

 納得のいくものが出来ない。まひると、復活した花音ちゃんは別々の道で、情熱を求め藻掻いている。その苦しみを克服するべく、原点へと立ち返るまひる。

「過去の陽キャエピソード発言が掘り起こされるくらいなら、皆4ぬしかないじゃない!」

身バレで明かされる嘘

「竜ケ崎ノクスの陽キャエピソードまとめ」が出来るくらいには、彼女への注目度は高かったし、ついてきた嘘の反動はデカい。並の人間であればその羞恥心で心がへし折れるだろうけど、今日も元気にゲーム配信を

コメント「渡瀬キウイ」

 かつて、変わった名前だとバカにされてもオンリーワンだと自信満々に連呼していた名前が、名も知らぬ奴から呼ばれて背筋に寒気が走るキウイちゃん。無数の目が笑って嘲っている。気味が悪いだろう。凄く可哀想な状況だが、有名校の生徒会長だと嘘をつき、人気者であることや虚構のエピソードを並べていたからなあ……事情を知らん人は同情は出来ても擁護は難しいよ。

220万再生!

 ド下手で熱い歌声が鬼バズった木村ちゃん。恥ずかしがってはいるが、君がその恥をかなぐり捨ててくれたおかげで、君の推しが復活し、推しのやる気を取り戻せたのだ。ファンとして出来る最高の働きをしたことを、生涯誇ってくれ。コメント欄も歌唱力について突っ込むものなどより、好意的なコメントばかりだ。これは、嘘で塗り固めていたものが剥がれて炎上しているキウイちゃんと、真心のみで勝負した木村ちゃんとの差であろう。

君はどこかで戦っている。

 だから私も進むと、完全復活ではない状態で立ち上がる花音ちゃんは主人公だ。色々ボロボロで辛くても、心は今まで以上に強いぞ。世の中は100%で挑み続けられる奴なんていない。あるだけの手段でやりくりしているもんだから、この状況もいつかどこかの土壇場で活きる事になるだろう。

そこに愛はあるんか?

 間違いなく技術は上がっている。だが、雪音ピには響かないばかりか「海月ヨルの良さがない」とバッサリ切られる有様だ。これは別に意地悪で言っているわけではない。まひるはこれまで「自分が描きたい物」を優先してのびのび描いていたが、今は商業的な絵を求められている上に、大衆の目に触れる+大勢の人間が関わる失敗できない仕事なのだ。気負い過ぎて肩肘張るだろうし、自分の持ち味を発揮しにくいのは当然の事。

「この絵のどこが好き?」と雪音ピに尋ねられて、「体の角度がよく出来たと思う」とまるでピントがずれた答えをするし、その回答だってどうにか良いところを探した末。自分の絵を好きになりたいと決意した5話からの成長は目覚ましいが、好きとビジネスを両立するにはまだまだ未熟であった。

見ろバカの感想

 帰りのタクシーの中で、メロとまひるが同席。まひるからしたら、花音ちゃんが暴力事件を起こした何らかの事情を知っているかもしれない相手であり、メロからすれば

 先日ストーキングしてきた恐ろしい女と同類なのかどうか分からない相手。

 こいつも花音の昔の事について根掘り葉掘り聞いてくるのだろうかと不信感を持ってしまうのもまあ仕方がないだろう。「暴行事件については話せない」と最初に釘を刺した。尤も、まひるにとってそれはもう終わったことでしかないので、聞くつもりなどサラサラないのであるが。

メロ「見ろバカについてどう思う?」

 どういう意図・返答を望んでの行為か知らないが、メロはまひるに問う。同意を求めたのか? 軽蔑してほしかったのか? 或いは特別親しいであろう彼女には花音は真実を話しているのかと探りを入れたのだろうか?

まひる「最低だと思います……とだけ言うのは良い子ちゃんかな」

 薄情な事を言うようだが、見ろバカによって炎上したアイドルグループについて、まひるは思い入れがない。直接花音ちゃんを燃やしていたなら反応は違っただろうけど、クソでかい愚痴を動画にしていただけと同情すらしている。意外と思ったが、そういえば5話のまひるは物凄く恐ろしいドロドロの内面を覗かせた。誰しもが持つ嫉妬や愚痴。汚くて目をそむけたくなる己の側面は否定できない。

「人に一切の愚痴を抱かない人間だけが見ろバカを叩いていい」という理論。(炎上したアイドルは訴えて良いけど、あれ未成年だったら訴えても勝てないかもしれん)

 花音ちゃんと出会わなければ今も愚痴をこぼすばかりの人生だったかもしれないとまひるは謙虚に伝え、自身も花音に殴られてから見ろバカの活動をやめていたことから、この二人は良くも悪くも花音ちゃんに人生を変えられた子(クラゲ)たちなのである。

YESマンではない

「今のはののたん(山ノ内花音)の歌じゃありませんでした」

 どうにか歌う花音ちゃんに、厳しいながらも愛のこもった否定をする木村ちゃん。大切な人だから、その人が何とか立ち直ろうとしているから、何でもよいしょするのではなく真摯に評価することが正しいと判断出来るファンの鑑。いや、友達の鑑。

 ここで言われる助言が雪音ピの言わんとすることと同じな事に驚いたが、クリエイターとして艱難辛苦を乗り越えてきたが故の有難い言葉なのかもしれない。歌詞を総とっかえなんて大胆な提案をするのもありだ。

 私にも何度か経験がある。何千文字書いた下書きでも、行き詰まったら全部まっさらにして再度書くとか。不調を押して書くものは酷いものになる。

 花音ちゃんが歌詞を書いたのは、カソウライブ直後辺りと考えれば、気分は高揚していても不安定さが極限にまで達していた時だから、どうにか安定した今と齟齬が出来てもおかしくない。木村ちゃんの案は大正解と言える。

タイムリミット

 リテイクを繰り返してきたまひるに、雪音ピは「修正案」を出し、その通りに提出するよう求めた。11月初め、ここから3Dモデリングや会場押さえ、人員の導入などを考えたらまあ悠長に構えていられない。

 ……けどこれは、雪音ピが与えた試練というか問いかけだ。

「君は私のために働いてくれる人間か」
「それともクリエイター海月ヨル先生か」

 仕事においては娘ですら容易く切ってしまえる雪音ピのこと、用意周到に物事を進めている事だろう。海月ヨル先生がこのまま意地を張って評価に値しない絵を持ってきても替えが利くくらいの事はしているはずだ。

 だからこんな修正案をわざわざ提示したその真意は、まひるを試しているに他ならない。昔の、量産型のまひるだったら修正案を「しょうがない」と受け入れてそのまま出していただろう。でも、それをやめた今湧き上がる感情はどうしようもない悔しさだ。背中から滅茶苦茶とげが出てきそうだ。

過去からのメッセージ

 キウイちゃんの知り合いたちから贈られるメッセージの数々。1つ1つは他愛なくとも、数が揃うと心が沈む。まひるにだけは強がりもするし弱みも見せるキウイちゃん、彼女を連れてまひるは壁画の原画を求めて大宮へ向かった。

「デッサンも狂っている、技術も圧倒的に足りていないクラゲの絵」は、しかし今の絵以上に「好き」で煮詰まっていて、ここにしかない輝きを放っていた。結局技術は学べば手に入るけど、それを突き動かすだけの情熱が消えない趣味を見つけるのが難しい。アニメの1話冒頭でも幼い日のまひるは画板に敷いた画用紙一杯に、滅茶苦茶にクラゲを描きちらしていた。拙くても情熱を原動力にクラゲ(好き)を表現しようと必死だった。

無敗のヒーロー

 逃げるな卑怯者! 逃げるなああああ! 新時代の扉見ると勝ち逃げとかマジで酷い。キウイちゃんは潜在的ジャンポケ量産少女だったのだ。

今日は生徒会が忙しいんだ

 嘘で塗り固めてきたことで炎上している。これはもう、仕方がない。悲劇のヒロインぶっちゃいるし同情するけど「それはそれとして」嘘は良くない。この線引きはマジ大事。そういう彼女であっても「今もヒーローなんだ」と言い切れるまひるにキウイちゃんはどれほど救われているのだろう?

君のカッコいいところ

 まひる個人で行こうとしていた地元のゲームセンター。キウイちゃんも「逃げたくない」と付いてくる。そこで運悪く遭遇する旧友3人組(男……だと……?)。キウイちゃんがトイレに行ってその場にいないから、口汚いうわさ話をしてくる。

 マユミの見た目凄くイイけど、量産型とは違う真の陽キャって感じで眩しくて近付きづらい。キウイちゃんのことが苦手=嫌いだったのか遠慮ない物言いだ。……でも10日も経てば別の話題を口にしているだろう。何となくだが、この子らはフワッとしている。キウイちゃん炎上前でも後でも、その時話題になったものに揺れ動いていく感じで、芯がない感じ。からかいの攻撃力というか耐性が陰キャにはないのだ……!

「渡瀬ってあの嘘つきな」←正論で言い返せない
「でも事実じゃん。不登校になったんでしょ?」←クラスの人気者とか言ってたし

まひる「キウイちゃんは今でもカッコいいよ!」

 残念だがまひる、今それを言っても「腰巾着」と思われて当然なんだ……学内エピソードは嘘で塗り固めていて、生徒会長とか、人気者とか言ってたのでさえ全部嘘っぱちでしかなかったのに「今でもカッコいい」は通用しない。キウイちゃんのスゴイ、具体的な成果を伝えてあげないと納得できるはずもない。あの凄い映像全部作ってくれたんだとか。

不変の過去

 それでもこれからを作っていく未来のために、キウイちゃんは矢面に立つ。声は震えているし上手い返しも出来ない、強気な返答も出来ない。体を値踏みされるし、多様性を間違った使い方しているし、「変な事」と言われ___流石に切れた。

「【私】は何にも変わってないって言ってんだろうが!!!」

 思い描いたヒーロー像がある。でも勝手に自分の体は女性的な成長をし、好きな服を着ることも出来ない、周囲の奇異の視線や評価を覆すだけの力を持てずに世界に負けた。

 JELEEの皆は、好きを打ちのめされたか封印したことでクラゲになった。キウイちゃんは「渡瀬キウイ」という絶対的最強のヒーローであり続けたい自分を否定された。

 Vtuberという特異な文化が浸透したこの時代において、彼女は単なる不登校ではなく、自分のなりたかった要素…好きを凝縮した存在を生みだす力を発揮できた。竜ケ崎ノクスは渡瀬キウイがなりたかったヒーロー像。ヒーローなんかじゃなくなった大嫌いな自分を、もう一回好きになるため。

「【俺】は天下無双の最強Vtuber、竜ケ崎ノクス!」

 竜ケ崎ノクスは逃げるための存在じゃない、ありのままの自分を表現するために生み出された、全てを理想的なものに仕上げた渡瀬キウイによる愛と好きの結晶だ。竜ケ崎ノクスとしてのエピソードだとするなら、これまでの嘘だって「でも竜ケ崎ノクスはそういうことをやって来た」と言い張れる。

……まあそれでも批判や嘲笑の声はしばらく続くだろうが、あざ笑う奴らはすぐにまたそういう対象を探して何処かに行ってしまうだろう。熱の籠ったキウイちゃんの主張に対して、困惑とかビビるとか、そういった反応を一切示さなかったマユミ達だって、本気で弄っているわけじゃないから「何でこいつこんなにマジになっているの?」と面倒くさそうな顔しているし。

 元々「住む世界が違う」。キウイちゃんだって小学生時代は皆と明らかに違った神童扱いで、本人もそれを自覚して気が強い性格だったし。本気で過ごさなくても良いと思っている連中にとっても、「あいつは私たちと違う」って意識あっただろうから。どちらも尊重できずとも、過度な干渉をしないでいれば平穏な世界なのです。

「ちゃんと」直せた?

 雪音ピは、母親としては失格と思われても仕方ないかもしれない。けれども人間を育てる気持ちがあると分かったセリフだと思った。

 完璧なリテイク案を前回提示しているのだから、「出来ましたか?」とか、或いは「出来て当然」と特に何も言わずに受け取るでも成立するシーン。

「ちゃんと」という部分は、「私の言うとおりに」以外にも「より良い改善は出来ましたか?」「自分の我を抑えて」等の気持ちが詰まっている。

・言う事を聞かずに間違った訂正をして来た→見限る
・言うとおりの修正をそのまま持ってきた→言いなりの人形として扱う

 雪音ピの思惑は3つあり、2つは使い潰されるか見限られるかでロクな結末を迎えない。しかし、まひる先生は違った。

・言う事を聞かずに修正案以上を持ってくる→最高!(ファンタスティック)

 キウイちゃんの雄姿をしかと見届けた事、原点であるクラゲの絵を見た事で、己の好きを何よりも優先することの情熱を思い出した。

 ぷにぷに感が強く、綺麗よりも愛らしさを重視したサンドー3人のイラスト。背景も星が散りばめられていて宇宙に飛び立つくらいスケールデカくなるって意気込みを感じる。この仕事に雪音ピはいつになく上機嫌。彼女にも「夢」があるんだとわかる。

お願い

「一緒に出させてもらえませんか?」どういう意図で聞いたか分からないけど、サンドーを売り出す舞台に花音ちゃん(橘ののか)を引きずり出すつもりか? いくら海月ヨル先生の頼みだとしても、これは無理でしょ……流石にお願いの度を越えている気がする。

 そして次回最終回……? 全て丸く収まるのか!? 私のヨルクラロスは大丈夫なのか!

サポート1人を1億回繰り返せば音霧カナタは仕事を辞めて日本温泉巡りの旅に行こうかなとか考えてるそうです。そういう奴なので1億人に到達するまではサポート1人増える度に死に物狂いで頑張ります。