ぜったい天使くるみちゃんとは何者か?

 2022/5/8 深夜。突如Twitterに復活の動画をアップした個人Vtuber「ぜったい天使くるみちゃん(以下「天使」と略します)」。

 近年急成長を果たしたホロライブやにじさんじからVtuberを知る方々には聞き馴染みのない名前であり、「何故1個人のVtuber復活にここまで沸き立っているのか」状況把握が出来ないのではないでしょうか。

 今回は彼女について、一介のファン(子羊)である私の知る限りの情報を端的にまとめます。彼女を追うと、出来立てのVtuber界隈の歴史を垣間見ることになるので興味のある方は更に調べてみましょう。

黎明期に誕生

 親分筆頭の四天王(5人)がいて、にじさんじが生まれていない時代。ときのそらちゃんが波に乗り始めた頃。赤い髪の天使が生まれた。

「ぜったい天使くるみちゃん」。絶対ではなく「ぜったい」だ。天使の見た目だが口調は緩めでややハスキー。ゆるさに拍車をかける独特のBGM。

 この頃のVtuberは個人勢の誕生著しく、「絵師に依頼して体を作ってもらう」ではなく全部自分(ツールやアセット等も込)で作り上げるのが主流だった。そんな時代だからか、彼女の姿は短期間で2度ほど変わった。

 また、にじさんじが生まれていない=長尺の配信があまりない。実況動画や創作的動画などがメインの時代。天使の動画は長めの10分超え、かつ勢いよりもゆるさが目立つ「雑談配信見ている気分になる(私見)」。歌配信も行うなど、今思えば「時代の先取り」感が強い方だった。

 これだけ聞くと「少し強力な経歴のVtuberだったんだな」で終わるかもしれないが、これは彼女自身の活動であり、彼女の活動による影響が何をもたらしたかをまだ書いていない。

世界の衝突と融和

 2022年において、各々Vtuberは「それぞれの設定」が一種のスパイスであり、配信を重ねるに連れて容易くボロが出るものという認識が強いかもしれない。しかし2018年初頭のVtuber界隈はひよっこも同然。勢いはあっても吹けば消し飛ぶ小さなもので、だから誰もが慎重だった。設定、つまりは自分の渾身の作品とも言えるVtuberの持つ独自の世界観を、容易く壊すことがアリかなしかも手探りだった。

 それ故に起きた事故が、とある個人Vtuberたちのコラボ。その世界観を「大事にするかしないか」で分かれてしまい、反発を招いたりで炎上した騒動である。知った後で考えたのは、これは【事故】だったということ。双方の認識のすり合わせが出来ていなかったから起きた出来事でした。

 Vtuber同士のコラボは危険。そんな風潮が強まってしまいかねない、誰もが慎重すぎる世界へ進路が動き出すーーーーー前に、

 そのコラボに参加していた天使が速攻であっくん大魔王とのコラボを成立させ、概ね好評の内に幕を下ろした。(リンクはいわゆる切り抜き)このあと、コラボをすることに対する緊張感が大きく緩和されたのは言うまでもないでしょう。

 先陣を切ったこの一手で、Vtuberの可能性を大きく広げることになりました。これは本当に今の状況を思えば、素晴らしい判断でした。

鮮烈なバレンタイン

 活動も波に乗って登録者数も順当に伸び続けた矢先、2018年バレンタインで起きた事件。天使のTwitterアカウントが何者かに乗っ取られてしまい、事件に巻き込まれたのではないかとざわめいた。

 天使は私達にVの持つ可能性を示しわからせてくれたが、Vはある日唐突に消えるのだということも思い知らせてくれた。

 これからという存在が目の前で何もかも消えていく。

 その喪失感は私を震わせたし、私だけではない大勢の人も混乱に陥った。

 程なく、あっくん大魔王宛に天使の家族を名乗るものからDMが届き、事態は悪化しかけたし、大魔王に大勢の困惑するファンたちの言葉が降ってきたと私は危惧した。当時私は静観するばかりで何も出来なかったが、

「私ですらこんなに辛いのに、数日前まで楽しんでいた仲間はどれほどキツかったのだろう」と考えて筆を執り、親書を送った。そして届いた。今読むと随分な文面でしたし、コレがなくても自然と立ち直っていたかもしれない。それでも微かな一助になれたことは本当に嬉しかった。(当時の私の名前は【時折】)

 この天使を失った事件は、Vtuber界隈に激震を走らせたし、ネットリテラシーや心構えなど、様々な警鐘を鳴らした。

 なお、この際に天使が伝えた「バーチャルユーチューバーを楽しんでください」という小さな約束を未だに守る人も多いと思います。

夕日は赤く、桜は薄紅

 少しずつ界隈に落ち着きが取り戻されていく2018年3月末。天使が関わった、というより、現れた配信。

「まだ一ヶ月しか経ってないじゃないか」なんてツッコミは当然。このころも激動でした。にじさんじも生まれて、配信文化が生まれ始め、動画勢も配信に乗り出す頃。

 物理演算を多用して摩訶不思議な可愛さを醸し出す、天魔機忍の【機】、ニーツちゃんによるバーチャルファッションモール探訪配信。VRCHATを用いた大きな世界を練り歩いたりするワチャワチャ感がすごい。3Dのクオリティに物申したい方もいるでしょうが、企業勢もこの頃は3D配信そのものを安定化させることに苦心していたことを考えると、

 ここから約4年で今の3D技術水準にバク上がりしたことが奇跡みたいなんですよ。そしてこの配信って恐らく、後々のバーチャルマーケットへと繋がっていく前身だったのではないかと思っています。

 約1ヶ月間の渇望期に、くるみちゃんがここにも登場する。しかも良いシチュエーションで。なにかドラマでも見ている気分だった。

天への道を開いた日

 個人Vtuberグループで有名なのは、天使筆頭の【天魔機忍】。と同時に色々とギリギリの奴らが集まった【BANs】も存在する(正確に言うとコミュニティ)。

 そのリーダー微糖カイジは、似てるのだ…! 顔も…話し方も…! 全部、モロ…! 激似、なんてもんじゃない…! こんなの公式が見たら

 一捻り…!! 圧倒的、一捻り…! お前のことなど、一捻り…!!

 しかし、まかり通る…! 4月、GW直前まで…生かされていた…!

 そんな微糖カイジが、色々ありすぎて伝説の配信を行うことになってしまった(リンクはまとめ記事)。前半は既になくなっているが、後半部分は2枠あったため片方が残っていて、貴重な歴史資料です。

 大規模コラボの先駆けとも言えるこの配信、このあと400人コラボ大会なんて「勢い任せ」の凄いのも起きますがこういうノリが許される界隈。

 この配信最後に現れた天使、そしてこの配信を最後に微糖カイジが消え、そのまま消滅せずに天を開き転生した。完全に見届人ポジションである。出てきた時点でわっと湧いて、その後伝説になる。完璧な流れ。

 他にも大きな舞台での活躍はあるけど、それは自分で探してみてほしい。ここまで読んでくれる方なら更に知りたくなっているだろうから。

その実力と姫力


「わかった。いろいろな歴史に関わっていた天使なんだね。でも関わるだけならば誰でも出来る。実力はどうなんだい?」

 そんな穿った見方をする方にも自信を持って、今も健在と叫びたい。いや健在なのではない。

 以前もすごかったが、更にすごくなっていた。まあとりあえず聞きなさい、飛ぶぞ。もう1曲目で「お前のことなど」される。一握りされる。握撃に心がはね飛ぶ。タバコで耳がゾクゾクする。ガナリ声も、笑い声も、至高の領域だ。待ちわびて上がりまくったハードルなんぞ翼があれば飛び越えるのも簡単だったってことですよ、これだから天使は~!

 未視聴で初見の方へ。存分にハードルを上げてから見てくれ。損はさせない。とりあえず登録者数1万人に到達した時点での同時接続数は3600人を超えていて、2時間超えの配信に3000人以上引き止め続けていたことを考えるとその影響力、心を鷲掴みならぬ【ひとにぎり】の威力を知ることになる。歌で全て黙らせる。わからされる。この方は尋常ならざる存在なのだと。

帰還

 何年かかっても戻ってきたってかまわない。そんな前例を作ってくれた。引退したって、二度とYouTubeに関わらないって言ったって、間違ってもいないのに宣言した約束なんぞ反故にして良い。根強いファンは待ってた。私だって待ってた。こんな感じでふらりと帰ってきてほしい方が多いんだVtuber界隈には。

最後に

 1つ。約束がありました。

「バーチャルユーチューバーを楽しんでください!」この約束。私は私なりにずっと楽しんできたし、これからもそのつもりなのですが、

 帰ってきたくるみちゃんにはこの言葉を、そっくりそのまま、返します。

「是非とも、今のバーチャルユーチューバーを楽しんでください!」

 以上、くるみちゃんに関する記事でした。

サポート1人を1億回繰り返せば音霧カナタは仕事を辞めて日本温泉巡りの旅に行こうかなとか考えてるそうです。そういう奴なので1億人に到達するまではサポート1人増える度に死に物狂いで頑張ります。