機動戦士ガンダム水星の魔女16話感想「被害者たち」

今回の、水星の魔女!(ネタバレあり)

 デリング不在、ジェタークCEO死去、強いぞ僕らのフォルドの夜明けと次第に地球に漏れ出す機密情報。ベネリットグループの情勢は不安定で、そろそろミオリネの誕生日が近いけど決闘もお役御免な現状、総裁選をしようじゃないかと四つ子が言い出す。

 勧誘されるニカ姉、暗躍するシャディク…以上に目立つ主役の帰還。ミオリネ社長の復帰、運び屋の寄り付き。それぞれの思惑が総裁選に向けて加速する中で、ミオリネは真実を聞かされるのだった。

ハイライト

8を横にすると∞(無限)

 今までのパーメットスコアの限界値は6が最大だった。

 だが、今は違う!(ギュッ)クワイエットゼロが成功すれば、最大スコア8に到達できるようになるのだ!

 14話でお亡くなりになったソフィも、スコア6になってしまえば体の自由が効かなくなるほどの強制力があった。それでも、データストームの海にいるエリクトが物質世界において自由になるには、更に広く拡張しなければならない。VRで満足できずに現実に呼び出すほどの技術となれば、電磁波とかどうなるんだろう怖い。

 突き詰めればプロスペラの目的はデリングへの復讐以上に、エリクトの完全な復活と、彼女の命が二度と脅かされることのない『平和』な世界の実現。だから全てを奪ったデリングの協力者になって計画を進めるべく、綿密に駒を進めている。

 パーメットスコア8が実現した場合、GAND技術で悪さすることはもう不可能になるのでこの世界にガンダムはエアリアル&その従者しか存在できない。そしてGAND技術はもう誰も進めることが出来ないため、GAND医療の道も閉ざされる(安全に使えば怖くないとは言え、いつ制御を乗っ取られるかわからないシステムを好んで使う者はいない)


サビーナの勧誘

 ニカ姉の理想を追う姿勢を気に入ったのか、ノレアに散々ボコボコに蹴り飛ばされた体の治療をしてくれた上で、整備技術の高さを買い勧誘するシャディクガールズのクール美女サビーナ。「力なき理念は無力」とアバン先生みたいなことを言うけど、手段が既に血塗られていることでニカ姉はこれを拒否。断ったらその場で口封じに殺されるんじゃないかとヒヤヒヤしたよ! でも残念なのは、シャディクの描く理想の果てがサビーナのものと少しずれている可能性があること。そこら辺、大丈夫なのか気になるところです。


グエル再び

 15話で軌道エレベーターへの場所を訪ねていたグエル先輩。このまま2~3話くらいは放浪のためにフェードアウトし、凛々しい顔とか引っ提げて返ってくるんだろうな~。

 って思ったのにCM入の直前に戻ってきた!? 展開が早い!

 戻ってきてラウダ君嬉しさと安心感で緊張の糸がぶっつり切れてしまった。本当に兄さんのことが第一過ぎだ。その後はペトラから事情を聞いてすかさず

「ラウダを頼む。あとは俺が引き継ぐ」と頼もしすぎる姿を見せてくれる。これだよ、視聴者が求めているものは!!! 総裁選勝てるかは分からないし、そもそも勝つ気があるのかすら分からないんだが、地球という修羅場をその身で感じた経験値が揺るがぬハートを築き上げている。

 この先ラウダに父親殺しの一件がバレる展開……あるだろうなあ。でも堂々と答えてくれるだろう。進んだ先に何があっても、彼はもう決して逃げない。


ペトラとラウダ

「兄さん! 兄さんが生きて―――」の場面は何度もリピートしている私。呼吸から嬉しさ爆発で放ったこのセリフ、つまりもう死んでいる可能性が高いと思ってたんだろうな。ラウダくんが重圧に負けずに会社を守ろうと奮闘していたのは、ここが大切な場所であり、万が一グエルが生きていた時戻ってこれるよう必死になっていたのだろう。それでも投資先や顧客が離れまくっていること自体に歯止めをかけることが出来なかったのも無理はない。決闘で3回も負けて、地球ではヘイトを集めてしまったから彼のせいではない。

 そんな献身的なラウダに寄り添うように秘書になってサポートするペトラも凄いと思う。どう見ても没落寸前の斜陽企業と分かっていて、希望がほぼ見えないと分かっていても支える選択を取るって愛がないと無理だ。青春でほのかに香る甘い恋愛ではこうならない。


フェルシーの決意

 14話のMVPの面構えが少しばかり険しい。大破したMSを目の前にして何を思っているのだろうか。少なくともその瞳に諦めの色はないので、ここで終わる子じゃない。


ニカ姉の決意

「目的が正しくても、手段は間違えたくない」と、自分の理念を曲げないニカ姉。あれだけ痛めつけられたり、脅されても、連絡役という不名誉なとかげの尻尾切りにされかけても、自暴自棄になったり怯え竦んだりせず。頑固で欲張りな理想主義を貫く。その理想は、地球寮の皆とやるGAND医療に賭けているんだろうね。

エリクトの戸締まり

5号君「スレッタ・マーキュリーを篭絡する作戦は?」
4つ子「おめー全然好感度稼げてないからボツ」

 総裁選のドサクサに紛れて、回収中のエアリアルを勝手に奪っちゃえという作戦。どうやらノレアたちとの戦いで本気を出さなかった一件がバレバレの様子で、今度しくじったら本当に直火で炙った焼きとうもろこしにされると釘を差されてしまう。

 というわけでエアリアルにそのまま乗り込んだが、乗り込む前に「あかん、無理」と視聴者は分かっていたわけで。

エリクト「4号君 スキ! お前は 邪魔」
5号「うわあああああああ!?」

 パーメットスコアも一気に引き上げられて死ぬと思ったら死ななかった、優しい! おめえよぉ、ときメモで習わなかったのか!? 好感度0の相手にデートを仕掛けても断られるんだ、ましてやエリクトは4号くんと接触したことがあるんだぜ? 顔だけ似せても生体データでバレバレなんだぜ。


無言のティルさん

 手を貸してくれてありがとう…スレッタがプラントクエタで間違えたそもそもの原因「コミュニケーションエラー」を未然に防いでくれた。


未だ被害者のフリ

 ニカ姉は被害者としてではない道を選んだが、ベルメリアさんは未だ自分が被害者なのだと思っている。研究のすべてを白紙にされた上で生き残るために強化人士を生み出し、そのデータを取り、庇ったが4号も廃棄されてしまったことも「仕方がなかった」「だったらどうすればよかったんだ」と自分を丸め込む。

 人の命をその手で摘み取ってでも生き残りたいという罪禍の輪に列席しているのに、その自覚がない。魔女と言って差し支えない所業をしてもなお、彼女は弱い人間であるだけなのだと逃げ続けている。

 今回5号君に引っ叩かれて怒声を浴びせられるのは当たり前だ。14話でニカ姉にノレアが「どの口が」と連呼して踏みつけまくっていた場面と同じに見えるが、そんな直線的で単調な暴力よりも心をぐさりと突き刺す「現実」というナイフでベルメリアさんの心を砕いた。

 5号君からしたらベルメリアさんは「替え玉を拾って仕立て上げ、死ぬとわかっているMSに乗せてデータを取り、用済みになれば廃棄する魔女」なんだ。本当の被害者の前で加害者が被害者面したら、そりゃあブチ切れる。


敷かれたレールは正しさ満点

「ミオリネさんを救う(目的)ためにヤッたことは正しかった(手段)」

 人殺しを恐れていたスレッタは、母親から刷り込まれた情報によりいとも容易く躊躇なく人を殺めた上、「あの時人を殺したことは正しかった」と、母親からの言葉で罪の意識を何処かへと飛ばした。

「学校の夢を諦めろ」と言われたら「困る」だけ。「株式会社ガンダムの理念に反する人殺しをしろと言われたら」逡巡して「でもお母さんが言う事なら」と。母親に言われたことは正しいのだと。だからそのとおりに進むのだと。

 或いは自分が、エアリアル(エリクト)の生体端末にすぎない存在だったと打ち明けられても、母親がそれについて説得したらすぐさま思考を切り替えるのだろう。

「逃げたら1つ。(言う通りに)進めば2つ手に入る」。父に逆らってでも進んだら何も得られないどころか失い続けるグエル君の生き様が、スレッタの精神的支柱である言葉にNOを突きつけることが出来る。今思えば3話は様々な意味でのターニングポイントだった。父親の意向に従うばかりではないという「自分の人生」の舞台に立ち、親の敷いたレールも自分から離れた。

 あと、ニカ姉の「目的が正しくても、手段は間違えたくない」がそのままぶっ刺さる。スレッタの場合は正しいことのためにやることは全て正しいし罪悪感を覚える必要はないとさえ思っているのだ。


今後の展開予想

 いくつかの予想を述べていきます。


目撃者5号君による暴露

「サリウス拉致の現場の映像」「エアリアルに乗ったことで得た何者かの意識」「ベルメリアの謀反の可能性」と、かなり重要な情報を掴んでいる5号君。4号君も結構大事な情報を持っていたけど、満ち足りてしまった彼はそれを墓まで持っていった。だが、生き残りたいという強烈な思想を持つ5号君は絶対にこれらの情報を使う。


グエル君の父親殺しを察するラウダ

 総裁選でシャディクの悪事が明るみになる展開が来た時、ニカ姉の証言や、その場に居合わせたグエル君が「お前が、お前の、お前のせいで俺は……父さんを!」というニュアンスのことを言ってラウダが【兄さんは父さんを手に掛けた】事実を知り【それをさせた諸悪の根源】の存在もシャディクだと分かって激高する展開。闇落ちではない


GAND医療へのバックアップ

 物凄く端折られたが、地球で軌道エレベーターに乗り込むまでにした冒険や地球の抱える問題などをその目で見て、体で感じたグエル君は必ずいる。シーシアを助けられなかったことだって未だに心に留めているだろう。

 そんなグエル君がGAND医療という「命を救う技術」を知ったら興味を示さずにはいられないと思う。ジェターク社はこれまでGANDに頼らない武力(兵器)中心の会社だったため、技術を医学に転用できたらと思ったりするだろう。そのために地球寮との協力路線を敷いて「新生ジェターク社」「新しい投資先」「イメージの払拭」などを図る展開。

 幸い地球寮へのわだかまりのほぼ全てが取っ払われていて、ラウダ君はスレッタ&エアリアルにだけ拒否反応を示すが概ね関係は良好だ。下地は出来ている。


3度目の決闘

「どうして進めば2つも手に入るんだ?」とグエル君がスレッタに言う展開。お母さんの言葉に疑問を投げかけられ、動揺し怒り出す。これがミオリネだと困惑するばかりだが、グエル君との仲はまだまだ改善されていない(と思っているスレッタ)ため、母のほうが正しいんだと証明するべく『スレッタからグエルに決闘を申し込む』展開。

 総裁選の当日に、決闘委員会もいるので可能とかありそう。それでシャディクがめまいを起こす展開とかも。


スレッタがすべてを失う

 手に入れてばかりのスレッタが逆にホルダーの立場を失うという転落があると思うんだ私には。「どうして?? 進んで、…進んで、おかあ、さんの言う通りに、す、っ進んだのに?? あれ? おかしいよ、何で、何で?」1話で負けても経験値とか手に入ると自分で知っているはずだが、ホルダーの地位を守るというのはミオリネとの約束事項にまで昇華しているため負けることは大切な人との約束を違える重大な事態。スレッタが動揺しまくっている中、ホルダーの衣装が変わってしまう特大の曇らせを皮切りにエアリアルを失い、プロスペラに「あなたは器なの」と言われて、そこで『スレッタ・マーキュリー』としての自我を取り戻す展開。

 今週は特に濃密な展開だったため何度も視聴している。戦闘シーンがなくても人間ドラマがあつすぎる、これもまたガンダムの良いところだ!


サポート1人を1億回繰り返せば音霧カナタは仕事を辞めて日本温泉巡りの旅に行こうかなとか考えてるそうです。そういう奴なので1億人に到達するまではサポート1人増える度に死に物狂いで頑張ります。