機動戦士ガンダム水星の魔女24話感想(前編)「届け地球の果てまで!」

※この記事は機動戦士ガンダム水星の魔女24話(最終回)のネタバレを含みます。まだ見ていない人は必ず見てください見ろ絶対見てくれ頼むから本当にこんな個人の感想見る前に絶対見てくれ!!!
今回の記事は2分割です。

 1つにまとめたら1万文字OVERでスクロールバーが大変かもしれないと思いこのような形式になります。前編は本編の7割。後編は本編の3割+総括もどきの感想になります。
 こちらは前編です。

失礼だな、誤射だよ。だから今度はMSだ

 クワイエットゼロ共々ベネリットグループを叩いて砕いてやろう、そんな大人の下心がエリクトとガンドノードだけで阻まれたら良い気はしない。誤射という建前にこだわらずMS舞台を展開するという外道畜生な判断を下す議会連合。どんな局面でも「大義名分」は大事なんだよおじさん……それがないと部下すらやる気を失うんだって。

満身創痍のこの体

 OPを挟む余裕があるのか!? 音霧カナタは訝しんだ。四肢を失ったエアリアルと、無傷のキャリバーンに乗った重体のスレッタ。パーメットの流入が許容値を超えかけている危険な領域。それにしてもエントロピーか……僕と契約して、魔法少……あれ、既に魔女? ワケガワカラナイヨ。
「痛いところはないか?」と、言っちゃ悪いが愚問を投げかけるアリヤさん。いでぇよおお!! と叫んだって良いくらいの状況のはずで、正気でいられる方がおかしい。エリクトのリプリチャイルドだけのことはあり、常人よりもデータストームへの耐性が高いスレッタでなければ、ガンドノードとの戦闘中に死んでいるわ。
 そんな満身創痍でも皆を助けるために這って進もうとするスレッタに「時間がある」ことを伝えたロウジ君は、気合だけでどうにかしようとする人間の扱いを心得ている。アリヤさんも今自分に出来ることが「お茶を入れてくる」くらいしか無いことを理解しているから、皆が皆の出来ることを精一杯やっている頑張りで、視聴者の心も一息つけて癒やされた。

フロントの平和をうんぬんかんぬん

 送電システム使う時点でヤバいのにMS部隊も送ってまた送電システム使おうとしている破壊者がなんか言っている。平和を乱しているのは自分だと自覚しているのに頑なに認めない姿勢は唾棄すべきものだ。
 クワイエットゼロを倒すだけが目的ならまだしも、一網打尽にしてやろうという助平心を隠すにはお題目がちゃっちい。

思わぬファインプレーのラウダ君

 ミオリネとの思い出が詰まった(?)変な人形アクセサリーを、拾ってくれたのはラウダくんだ。「許したわけじゃないが、このまま出撃するだろう兄さんに何かあったらもっと許さないからな」と厳しい釘刺し。前回和解したため精神的に落ち着いているけど、こういう好戦的な部分はまだまだ隠せない子供である。しかしここで拾ったアクセサリーがとんでもない生存フラグになるとは思いもよらなかったわ。ありがとうラウダ君。
「なんで前回いきなり攻撃してきたラウダがここで穏やかに話しているの?」
「知るか!」「わからないわ」「意味☆不明」


「あんなものに巻き込まれてたまるか」

あんなもの=送電システムの射線上での戦闘で味方諸共手が滑ったされる
     =醜悪な利権闘争の道具にされること
 議会連合のMS部隊は結構な数とともにやって来たが、戦闘にはならなかった。指示を受けていないこともそうだが、デリングによる協議が開催されること、クワイエットゼロも無害化されていたこと等を踏まえれば、これ以上戦う意味がない。虎の子の送電システムも防ぐような鉄壁の要塞相手に戦いに行くのも馬鹿げている(ガンドノードがいないことはまだ知られていない)。
 しかし、ここで戦闘にならずにホッとしたのはなにもグエル先輩やドミニコス隊だけじゃあない。制作スタッフもだ! 激しい戦闘描写をこれ以上増やせば、ただでさえ遅れに遅れたスケジュールが死ぬからね!

おかえりなさい

 エアリアルを連れ帰ったスレッタに「スレッタ用の母モード」で応じるプロスペラ。再びクワイエットゼロへの接続を施し、今度こそ大願成就をするためなら自分の身が危ないという弱味を曝け出すことすら厭わない。本当の意味で母は強い。スレッタだけが満身創痍と思いきや、プロスペラもボロボロだった。
「お母さんを助けたい。でもエリクトも助けたい」ここで言うお母さんを助ける望みは、クワイエットゼロ起動をした瞬間に「悪い魔法使い」となるため芽が摘まれる。だからその身一つで送電システムのオーバーライドを成して争いを止めるために、
 2つ手に入れるために自分の体を投げ打つ覚悟でスコアをひたすら上げるスレッタ。
 気合だけで、人の身では到達し得ない領域に手を伸ばそうと無謀にも突き進む。

遅かったじゃないか、エラン・ケレス

 我々はこの耳飾りを知っている!

視聴者「来たか!?」
視聴者「遅えんだよ!」
視聴者「待ちかねたぞ氷の君!!!」
 散々2期のOPで存在を匂わせて期待値爆上げしておいて、最終回のどん詰まりにようやく待ち合わせに来るとは巌流島ですら可愛く見える遅刻だぜ! だがそんな一日千秋の思いなど今消滅した! 復っ活!! エランケレス復活!!
4号「また、困ってる?」
 うおおおおおおおおおお!!
 氷の君!! エラン!! 4号!! 初恋の人!!
 氷の君!! エラン!! 4号!! 初恋の人!!
  儚げでややメンヘラで自分の命の価値すら見いだせなかった氷の君が再び喋っている! これが奇跡! ガンダム初見の人、こんな奇跡要素を出して良いのかって思うかな? むしろ他作品でもバシバシやっているから無問題だ! 奇跡はいくらでもある!!
 でも死者との交信をするっていうのは本来あまり良くないんだぜ!
 互いに言いたかったこと、謝りたかったことを言葉にして交わし、「始めよう」と、シャル・ウィ・ダンス仕掛けてくるんだ! 株式会社ガンダムを立ち上げたあの日に壇上に登っていたのは本当は君だったんだよ4号君!!! デートの準備は40秒もいらねえ! やるんだよ、今、ここで!!!
 というかここの4号君は「肉体」ではなく「情報」という新しい体で生きているようなものなのね。なるほど、データストームの先は天国に一番近そうだ。
 スレッタよ、4号君は感謝していると思うぞ。仮に4号君が決闘に勝っても絶対に幸せな思いを獲得できずに消滅していただろうから。スレッタが勝利したから、こんなに穏やかな再会を果たすことが出来たんだ。胸を張れ!
 余談だけどさ、「デー【ト】ストーム」ってコメントしてた人には座布団を送電システムで叩きつけたいわ。

継承、「エリクトの無念を晴らす!」

 私、MCUシリーズも最新作まで嗜んでいるのですが、単作で傑作と思う作品の中に「シャン・チー/テン・リングスの伝説」ってのがあるんですよ。それを思い出した。

 合体! 合体ですよ! カブンの子たちとの合体! そして生まれるパーメットスコア8をも越える、虹色! スコア9か10かわからないが10としよう!

 こういうガチャガチャとしたギミックに私の心に巣食う男の子は弱い!


あるところにクワイエットゼロがありました

 この時代におけるチート機能。先日SNSが少し制限されてドタバタな大騒ぎだったのだ、ネットワークを完璧に操れるのは恐ろしすぎる。


花婿は全ネットワークを掌握、花嫁は衝撃の発言をしました

 議会連合が攻撃を仕掛ける理由。「クワイエットゼロの破壊」「ベネリットグループの体制破壊」ここに私腹肥やしな男の「復興支援にペイル社を据えることで天下り的な安寧の確保」なる欲望溢れた3つ目の理由も添えたもの。一回目の送電線システムは失敗に終わり、いずれの目標も達成していないのでもう一発。

 そんな時に通信系統のジャックで、遥か遠くの月はおろか地球圏の電子機器にまでパーメットのオーバーライドが到達するという恐るべき事態が発生。これスレッタたちがやるから安心できるけど、敵がこんなのやってきたら恐怖だよ。

「ベネリットグループ解散・資産精算の手続き」
「資産はグラスレー社同様に地球の企業へんの売却、或いは合併という形で合意に至る」
「議会連合の理事会とグラスレーが一連の事件に関与した証拠資料をシャディクが公表します」

 これでは攻撃など無駄。ペイル社と分け合う算段の資産は全て議会連合ではなく地球の企業へと流れることが確定。シャディクによる企てと関与した組織全員洗いざらい喋る=黒だった議会連合理事会の大義名分が消滅。

 風向きどころか潮目が変わったこの発言は、電波ジャックによって地球全土の人々の耳に入ることになる。

 詰みである。

 そして風見鶏おばさんたちは知らぬ間に会社の資産が丸っと売却されていたことにブチギレ。視聴者からの拍手喝采、響くぜ!


性格の悪い王子様は1ヌケしました

 ここまで特にこれと言った活躍のない本物エラン様は辞表を提出しておさらば。こんなところで顔芸しないでw ヘッドハンティングってどこから? と思ったけど、本編見た後だとなるほど、マルタンからの情報とニカ姉の情報を聞いたセセリアさんが嗅ぎつけたのかもしれんな。因みにここの辞表の文面を解読した人がいたようで、その内容が面白かった。


僅かな大義名分

 艦隊を一方的にやっつけられる機能を備えたクワイエットゼロが健在であることを理由に送電システムをぶつけようとするのは、もう単なる八つ当たりだ。仕留めた場合も先のベネリットグループ関連のお話が地球全土に広がっている以上、議会連合への突き上げはトンでもないことになる。


マジカルステージ!!

ガンダムエアリアルのびやかに
ガンダムシュバルゼッテしなやかに
ガンダムファラクト高らかに
ガンダムキャリバーンすずやかに

マジカルステージ!!!!

 送電システムが来たら今度こそ防げないという絶体絶命の状況下、スレッタは「止めて見せる」ことを宣言した。先んじて敵を倒すのかと思ったが、そうではない。

 この場にいる全員が駄目になるかならないかなんだ、やって見る価値はありますぜ! と送電システムを止める方針。さっきのオーバーライドでも機能停止には至らなかったため、それ以上のパーメットスコアが必要になる。虹の先の光!? キャリバーン1機でどうやって

 半壊のエアリアル、格納庫にいたシュバルゼッテ、ファラクトの操縦権をオーバーライドして4機集合! 美しすぎるんだよこの絵面!!

 いずれも呪われたガンダムという機体が、最後の戦いを終わらせるためにその身を使って祝福を起こすの激アツです!!

 その魔女はガンダムを駆る。そうだな、別に1機限定とは誰も言ってないわな!!

 光が優しくも強い真っ白で、「これは攻撃ではない」というのは直感で理解した。敵を傷つけずに制圧する。今度は手を出さない。無用な血を流さない。スレッタの出した、己の心と向き合った「人を殺したくはない」想いが形になった、これは奇跡の魔法である。


情報はただ消える。人に光を残して

 広範囲の領域がスコア8を超えた光で包まれた。パーメットを引き上げずとも、人の目に情報が見える。5号君は、ノレアとソフィを見た。もう一度出会えたんだなという安堵と、見守ってくれてたことへの感謝の笑み。しかしそれ以上の言葉はいらないようだ。

 そしてまだ過去に囚われて進めずにいたプロスペらは、恩師・最愛の夫・よき仕事仲間から「復讐などやめて進め」と諭される。それでも動けない。奪っていった憎い者たちを許せない、エリクトをまだ救えないことが許せない。スレッタからの言葉ですら、彼女には届かなかった。

 スレッタの優しさが凄い。あれだけ利用されて、捨てられて、それでも愛しているからと突き進んで、母のことを肯定までしてみせた。君も進み続けて子供から大人になったんだなと父性が芽生えそうだ。


母は強いの反対は?

 スレッタからの呼びかけでわずかに氷解仕掛けたプロスペラの心。それでもまだ足りない。最後の一押しはやはり実の娘でなければならないようだ。

 エリクトを感じることは出来ても、姿を見ることは出来なかったプロスペラ。遂にこの空間内で再会を果たした時、膝を折って(足を止める=復讐へ進むことを止めた)エリクトを見つめた。仮面は剥がれ落ち、母として、エルノラ・サマヤとしてエリクトと向き合い、その身を抱きしめた時、あらゆる言葉の中から絞り出された一言は「ごめんね」だった。

 自分勝手な復讐に巻き込んだこと。守り切ることが出来なかったこと。PROLOGUEで人殺しをさせてしまったこと。この世界にエリクトが自由に生きる世界を作れなかったこと。なによりも、ずっと長い間寂しい思いをさせ続け、抱きしめてあげることも出来なかった不甲斐ない自分を恥じてだろうか。

 会えて嬉しいもある中で、それ以上に娘に酷なことを強いた悔いをエリクトに、スレッタに告げる彼女の心には、最早復讐などという些事は微塵も残っていない。

 母は強いが同時に、母は娘に弱い。スレッタにも謝っていたのはきっと直前にミオリネが「等しく愛してあげなさいよ!」の言葉が思いの外効いていたからでしょう。


作画班に慈悲

 ここでパーメット粒子レベルまで分解の場面で「ネジとか部品全部がパーメットなわけないじゃん」という者たちにはきっと人の心がない。それ全部描こうとしたら作画班が血眼になってしまう……。


一時的に争いが止まった世界で

 パーメットを利用した最強のガンダムは、スコアの上げすぎで塵に還った。残されたスレッタは、1話のミオリネを救ったときのように、今度はミオリネから救われるという回帰が美しい。部屋は汚く顔はきれいなミオリネが、泣いたり笑ったりで表情が壊れるの親愛が凄い。図らずもヘルメットへの頭突きが1話である。

 結局最終回では戦闘が一切行われることなく、争いの火種だけが消滅して終わるという過去に類を見ない決着となった。

 こんなにキレイなガンダム作品私見たこと無いんだが????

 後半に続きます。


サポート1人を1億回繰り返せば音霧カナタは仕事を辞めて日本温泉巡りの旅に行こうかなとか考えてるそうです。そういう奴なので1億人に到達するまではサポート1人増える度に死に物狂いで頑張ります。