TidalCycles リズムを構築する
久々にTidalCycles (以下: Tidal) を触るので、今一度基本的な文法を復習しようと思います。起動方法は省略します。
1. いわゆるテクノの4つ打ち
d1
$ sound "bd bd bd bd"
d1 silence
hush
d1 - これは「リズム(シーケンス)のレイヤー」というイメージです。Tidal では、d1 ~d9 まで、最大9つのリズムを記述して、各々を詳細にコントロールすることができます。また、d1 から $ ... とどんどんコードが増えて行きますが、レイヤーを構成する塊が 1 行以上改行しないように注意します。
$ sound "bd bd bd bd" - ここでメインのリズムを記述しています。"bd" は音色です。( bd - Bass Drum)これは、HHSuperCollider の 参照している[ Dirt-Samples ] フォルダー内の [ bd ]フォルダーの、一番上の音源を再生しています。例えば、[Dirt-Sample]に自分の音源を入れれば、より作り込んだ音色で演奏ができます。
d1 silence - これで [ d1 ] レイヤーの演奏が停止されます。ライブパフォーマンスを考える際に、d1 は キック d2 は ハットみたいに棲み分けて、各レイヤーを再生・停止することで変化を表現することが可能です。
hush - [d1] [d2] [d3] ... と複数のレイヤーを同時に演奏している際、この一行を実行することで、全てのレイヤーが停止されます。
d1
$ sound "bd*4"
最初のコードを [ * ] を使うことで上のようにまとめることができます。簡単に言えば繰り返しです。
d1
$ s "bd*128"
こんなこともできます。$ sound は、$ s と省略できます。
少し込み入った話ですが、Tidal は、SuperCollider で音響生成をしていますが、例えばDAW上に立ち上げたプラグインにMIDIデータを送ったり、MIDI CC を扱うこともできます。しかし、僕が試した限りですが、MIDI (特にMIDI CC)を扱う場合、ノート単位で作り込むと全く音が出なくなりしました。対して上のコードは音響の生成を行なっているので、多くのノートを扱いますが、正確に処理されます。
2. レイヤーを追加する
d1
$ s "bd*4"
d2
$ s "~ hc ~ hc ~ hc ~ hc"
先ほどの、バスドラに、裏拍をとるハイハットを加えました。[ ~ ] は休符を意味しています。
d1
$ s "bd*4"
d2
$ s "[~ hc]*4"
[ ] で囲まれたところは、一つの塊、ブロック、として扱えるため * と組み合わせてこのように書き換えられます。
3. Tidal でリズムを構築する 僕の捉え方
Tidal は、1つのループを Cycle (サイクル)として取扱い、サイクル内のノート数に応じて そのサイクルを分割します。
d1
$ s "bd bd bd"
d2
$ s "hc hc hc hc hc"
サイクルを 1小節 と考えた方が分かりやすいと思います。
まず d1 レイヤーで [ bd ] が 3 つ。ということは、一つのサイクルが3分割されるので、3分音符と同じです。
d2 では、[ hc ]が、5つ = 5分音符。なのでこれは 3分と5分が共存する、簡単なポリリズムになり思います。(3分音符 - 5分音符 という表現は適切ではないですが、僕はそのように解釈しています。)
d1
$ s "bd*3 [hc*4 ~ ]"
先ほど出てきたように [ ] で囲った部分は一つのノートとしてカウントされるので、ここでは ここでは bd*3 と [] の中とで、大きく2分割されています。
では、bd 一つあたりは何分音符でしょうか?
まず、大きなブロック( bd , [ ] )が二つあるので / 2 。その中を * でさらに3分割するので、/ 3 。よって、6分音符です。
次に hc はどうでしょうか?
まず bd と同じく、大きく2分割された中で、hc*4 と ~ で2分割されています。さらにその中で4回繰り返しがある。= 1 cycle / 2 / 2 / 4 = 16分音符です。
もちろん人によって解釈が変わりますが、つまりは、音価を自在に構築することができるのです!
DAW内では、「ここからここまでが8分で ... 次にクラップが3分の速さで 3回 ... 最後に 19分の速さで ハイハットが 10回鳴って はじめに戻る」みたいなことを正確に打ち込むことは不可能、もしくは相当時間がかかります。
コードを書くと体感としてわかると思いますが、コードを足し続けて行くと、全く想定外のリズムを構築できます。
4. まとめ
市販のシーケンサーや、DAWソフトウェエアとは、全く違う捉え方がで、直感的にリズムを組み立てることができるのが、一番の面白いと思います。