トキシラズ

写真作家のかたわらライター業にも勤しむ人。ものぐさだけどやるときはやる。本を読んだり眺…

トキシラズ

写真作家のかたわらライター業にも勤しむ人。ものぐさだけどやるときはやる。本を読んだり眺めたり音楽を聴いたりするのが好き。お酒も好き。

最近の記事

サンタクロースが一度もこなかった子どもは

子どものころ、サンタクロースは一度もこなかった。 (祖母の宗教上の理由からだったけど子どものころはわからなかった) 「どうしてうちにはサンタがこないんだ。あ、煙突がないからか!」 親にバレないように、こっそりベランダの鍵を開けて寝たこともある。それでもサンタクロースはこなくて、プレゼントのためにずらした枕が定位置に戻っていた。 嬉々として枕元に置いていた靴下は、いつのまにか出すこともしなくなった。 クリスマスの朝、学校はサンタクロースの話題でもちきり。何をもらったのか

    • かつて私は、タキシード仮面でセーラーウラヌスだった

      子どもだったころ、友だちとごっこ遊びをしていた。 レンジャーとか、仮面ライダーとか、いろいろやったけど、女の子とのごっこ遊びはいつだってセーラームーンだった。 そして、いつも私はタキシード仮面(地場 衛)だった。 そのときの私は、女の子っぽい服装や髪型に抵抗があって、ばっさりショートにしていた。 髪が長くて、スカートが好きで、ママの化粧に興味がある。そんないわゆる女の子らしい友だちたちの中で、私は少し異質だったのだろう。 かなり、男の子っぽかったと思う。少なくとも兄

      • トイレットペーパーを引きちぎる妖精がいる

        トイレでたまに遭遇する、引きちぎったかのような切り口のトイレットペーパー。 力いっぱい握りしめて上下にブチっと引きちぎったような、トイレットペーパー。 地面につかんばかりに30cmは伸びっぱなしになっている、トイレットペーパー。 見ていると、なんとなく嫌な気分になるのです。 未使用で綺麗なのはわかっているけど、ちょっと嫌な気分になるのです。 「このトイレットペーパーでデリケートな部分は吹きたくないなぁ」なんて思うのです。 神経質かもしれない。 私だけかもしれない。 けど、

        • 一日の終わり、父と飲む缶ビールにふと寂しさが混じる

          実家での暮らしも何年になっただろう。 東京から地元の沖縄へと戻ってきて習慣になったのが、父との晩酌だ。 「乾杯!」と声に出したり、缶をぶつけたりはしない。 父が先に飲んでいることもあるし、私が先に飲んでいることもある。 自由なタイミングで缶ビールのプルタブを開ける。 うちではプシュッという音が乾杯代わりなのだ。 晩酌のときは何も話さずテレビを観ていることもあるし、Amazonプライムで映画を観たりすることもある。 洋画好きの父は、昔から私たちにハリウッド俳優の名前を教え

        サンタクロースが一度もこなかった子どもは

          「頑張らなくていいよ」じゃなくて、「コーヒーでもいかが?」と笑ったあなた

          写真が好きで、好きでいつづけることがつらかった時期がある。 思うような写真が撮れなくて、悩んで、足掻いて、撮ること自体を苦痛に感じたこともあった。 いっそ忘れられればと距離を置いても、無意識にカメラに触れてしまう。 好きでいることよりも、撮ることよりも、写真から離れるほうがつらいのだから答えは出ていた。 名ばかりの写真作家を続けたくて、アルバイトに明け暮れた日々。写真を優先できる環境であれば何でもやったし健康なんて二の次だった。 空を見上げる余裕さえない。次のバイト先へ

          「頑張らなくていいよ」じゃなくて、「コーヒーでもいかが?」と笑ったあなた

          負けず嫌いで弱虫な私は、トイレでくつろいで浴室で泣く

          人とかかわることを「煩わしい」と思うときは誰にでもあると思う。 私もそうだし、9:1(頑張って8:2)の割合で一人の時間が多くないとダメだ。 でも私の家は家族が多くて、昔から家のどこにいても家族の存在を感じられた。個人の部屋なんてなくて、兄が家を出るまで、私が家を出るまで、兄妹みんな同じ部屋だった。 一人になりたい。 いっそ孤独だと感じるくらい一人になりたかった。 そんな私のくつろげる場所は、トイレだった。 入っている間は、誰も話しかけてこない。 時間帯さえ気をつけ

          負けず嫌いで弱虫な私は、トイレでくつろいで浴室で泣く

          ビブリオフィリアからビブリオマニアへの進化条件とはなんだろう

          私は活字中毒者だ。 (書籍も電子もたしなむし、読むものがなければ取説もおいしくいただける) 寝る前に本を読まなければ違和感で眠れないし、たとえ寝不足になろうと本を手放せない。 「あと10分」が正常に機能したことはない、典型的な本好きだと思う。 本好きに拍車をかけたのは、まぎれもなく父だ。 子どものころ、一緒に本屋へ行くと必ずほしい本を聞かれたものだ。 あるとき「これがほしい」とシリーズ小説の2巻を指さした。 「1巻は読んだのか?」 「うん、クラスの子から借りて読んだ

          ビブリオフィリアからビブリオマニアへの進化条件とはなんだろう

          ほんとはピンクやオレンジじゃなくて、青や黒がよかった

          私には兄が二人いる。 私は待望の女の子で、父も母もとても喜んだらしい。 小さい私が着ている服は、兄のときには買わなかったであろうかわいいものばかり。一歳下の妹が生まれると服や靴、髪型、いろんなものが“おそろい”になった。 世界一かわいい妹とおそろいでいられることを、苦痛に感じたことはない。 でも、ほんとは白やピンクやオレンジじゃなくて、青やネイビーや黒がよかった。 好きな色を伝えたことはなかったと思う。 言っていれば好きな色の服を買ってもらえたのかもしれないけど、母の笑

          ほんとはピンクやオレンジじゃなくて、青や黒がよかった

          お風呂で思わず歌っちゃうみたいに、言葉を生かす場にnoteを選んだだけ

          はじめまして。 トキです。 このたびnoteをはじめることにしました。 「言葉を吐き出したかったから」という単純な理由ですが、これくらいのシンプルさが私にはちょうどいい。 家族や友だちと話したり、Twitterでつぶやいたり、言葉を発する機会はいくらでもあるけど、それでも言葉ってどんどん溜まる。 声に出しても書き出しても追いつかなくて、ほんとは10年前に伝えたかった言葉がずっと心の中に溜まっていることもある。 何億年かけてできた地層みたいに、それはそれである意味奥深い

          お風呂で思わず歌っちゃうみたいに、言葉を生かす場にnoteを選んだだけ