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京都流議定書

カンファレンスに参加しまして、非常に刺激的だったのでレポートにまとめておきます。

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第13回京都流議定書
2020年9月8日、9日
「人類はどのように共存していくのか」
https://kyotostyle.jp/kyotoryu/

Day1(2020年9月8日)

■【セッション1 人と地球と社会】

〇パネラー:
・木多道宏氏 (大阪大学大学院工学研究科 教授)
・塩瀬隆之氏 (京都大学総合博物館 准教授)
・深堀昂氏 (avatarin株式会社 代表取締役 CEO)
〇ファシリテーター:
・西村勇哉氏 (NPO法人ミラツク 代表理事)

・書籍「問いのデザイン」誰に何を考えてほしいかを想定して問いをたてる。解く問題なのか、ブレストする問題なのか、本質を探るのか。誰と何を話すかによって変わってくる。

・先々代からもらったものは贈与なので、次の世代に渡していく恩送り。工学の考え方は交換なので、贈与ではない。

・建物を建てるだけならハードを考えれば良いが、そこに住まう人、周囲に住む人のことを考えるのか否か。どこまでを含むのかによって、議論する内容が変わってくる。

・日本の庭を作る庭師は「完成した」とは言わない。「手を離れた」と表現する。そこに住まう人が季節などで庭に手を加えていく。自分の手を離れて、別の方が関わり、庭を育てていく。

・自然から学ぶ。パーマカルチャーは自然に近い人工物で作られる。鶏のエサを農作物にあげるなど、循環を意識する。

・自分がマイノリティになることで素直に没入できることがある。自分以外が盲目の人だと、自分はマイノリティになり、彼らに教えてもらわないとコミュニケーションが成り立たないことに気づく。頼る気持ち、不安な気持ち。自分がマジョリティだと思っていると見えないことがたくさんある。

・1/1000と1000/100万は割合として同じだけれど、1000/100万であれば、一部のエリアで逆転現象がおこる可能性がある。そのエリアでは10人が固まればマジョリティになる。その10人に囲まれた人は変化する。そうして変化が伝播する。

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■【セッション2 金融】

〇パネラー:
・江上広行氏 (株式会社URUU 代表取締役)
・加藤徹生氏 (一般財団法人リープ共創基金 代表理事)※
・新田信行氏 (第一勧業信用組合 会長)※
・米良はるか氏 (READYFOR 代表取締役)※
〇ファシリテーター:
・新井和宏氏 (株式会社eumo 代表取締役)

・「金融をして何を成し遂げようとするか」成し遂げる意図があって、それぞれの器で金融を使っていく。その目的が大切なのではないか。お金自体が目的化している部分がある。
寄付やクラファンは、溜める・使うではなく、寄付する・共助する。お金を通して成し遂げたいことは何であるか?が変わってきている。

・信用組合なので、「自分たちの地域にある会社を一社もつぶさないんだ!」という発信をしている。
もともと講の意図が強い。人々が苦しい時に危機対応の中から生まれてきた金融であり、コロナ前もコロナ後も変わらない。コロナで人と人が分断してしまったが、金融は繋ぐ役割を果たすことができる。経済の血液としてつながる。人・モノ・経営資源の仲介をしている。
つながることで価値が生まれる、人も情報も行き交う。

・お金の流れが変わると、社会の仕組みが変わっていく。格差が問題。危機の際には弱い立場の方が苦しむ。
それは最終的にその地域住む富裕層も含め、平和で安心した生活を脅かす。弱い立場の人をみんなで支える。
現在は、お金が集まるところにさらにお金が流れる仕組み成っているので、その流れを変えたい。社会を変えるためには、お金の流れを変えるのが一番早い。リソースとして重要なお金を使って、社会の仕組みを変える。

・金融は本来黒子であり、リアルエコノミーの方が幸せに直結する。リアルをどうしたいかを踏まえて、黒子がどう動くかを考える。その時に黒子を上手く使う技術は大事。

・資金の循環をどう作るか。高齢者から若者へ。首都圏から地方へ。富裕層から貧困層へ。金融はメインテーマではなく、テーマが先にあるべき。
経営者としてパーパース。その企業の目的、パーパースに合わせて金融を手段として使う。寄付・融資・投資、いろいろ方法がある。

・儲かることが良いものであるという固定観念がある。お金があるところに、お金が集まってしまう。人がお金を増やすことに囚われているからおかしなことになる。お金の魔力。お金に欲を持ってしまうことが、社会の仕組みを入り込んでゆがみをつくっている。
実態経済を動かすのがまっとうだが、お金がお金を産むことが最も効率的だと気づいてしまった。

・金融の世界では、約束したことを守るというマナーがある。
預金を溜める、約束したリターンを返す。だまされない文化。
お金が共通の交換できるものだから、それが可能。
事業家が事業計画を書いても、事業がその通りになるかは分からないが、お金は契約書に書ける。

・自分の価値を何に求めて良いか分からないので、自己定義を生涯年収やお金に求めている。でも今その価値観が壊れてきている

・新しい指標がない中で、「自分がいいことをやっている」と言い続けることも難しい。クラファンではいいことを言うと、お金が集まる。応援してくれる。志をほめてもらえる。

・教育として、金融のリテラシーを上げていく必要がある。お金で買えないもの、友情、幸せ。お金の限界を知る。お金に振り回されておぼれるのではなく、コントロールできること。
お金で手に入らない自分の人生を大事にする。
お金で買えないものって何?人って何?を問う。

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Day2 9月9日 「一日だけの経営大学院」

■【プログラム1 里山資本】

藻谷浩介氏(日本総合研究所 主席研究員)

・肉を食べたい人もいるけど、野菜もおいしい。きのこも食べたくなるし、こんにゃくによってお腹がキレイになる。色んな人がいる多様性で、「野菜も美味しい」と「野菜だけ食べてろ」という議論は全然違う。

・データで考えること。多数の意見も正しいとは限らない。正解は少数派の方かも知れない。自分の目で現場を見て、データを見て、考えて、口にする。そういう姿勢を続けること。

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■【プログラム2 共感資本】

新井和宏氏 (株式会社eumo 代表取締役)

・株式会社を作った。資本主義だけれども、金額の過多に関わらず議決権は1人1票としている。

・ピケティからの気づきして、トリクルダウンは起こらない。世界のトップの26人の富と、下位38億人の富が同じという世界は、これで幸せなのだろうか?富は偏在していく、偏っていく。格差を生み出すのはお金。

・大切なものを大切にしたい社会。共感。「共感」というあいまいなもの。Aに共感しても、Bに共感してもいい。多様性。大切にしたいものを大切にできる社会。共感という貨幣換算できないものを基礎として、資本主義をデザインする。

・人によって成功はちがう。他人が決めた成功を得ても自分は満足できない。チャレンジして、がむしゃらに努力し続ける自分でいたい。それが自分にとっての成功。

・社会実験はたくさんやるしかない。100個やれば、1個くらい成功するかもしれない。ある意味、他力本願で、他の方のエネルギーを信じる。他人のその力を引き出したい。
「お金って、みんなデザインできるよね」ということを常識にしたい。「僕らのプラットフォームでそれをやってみて、それでみんなの地域が豊かになればいいよね」というスタンス。

・今の社会は競争をずっとやってきた。その中で評価される。
その中で、誰かが「これいいよね」と言うと、周りはいきなり自己否定された気になって「むかつく」となる。そうではなくて、「それもいいよね。自分とは違うけど」と認めあえること。多様性。

・人が幸せになっていくための一番のファクターは、良好な人間関係。自分たちがこうありたいと思っている中での、価値観の同じ人を見つけること。多様性の社会において、マジョリティ理論は意味をなさない。

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■【プログラム3 知識資本】

紺野登氏(多摩大学大学院教授) [事前収録]

・人間と環境とのコンフリクトが起こっている。それが生み出す意識の変化に私たちは直面している。知識社会、知識経済が本格化する。イノベーションを起こしていく。今までと異なるのは、資本ではなく、人間を単位とする経済になっていくこと。

・今、人口の7割が都市に住む。都市化と環境の境界がやぶれてくる。平均すると7-8年おきにコロナクラスのリスクがやってくる。SARSとMERS。それに応じた都市のデザインが求められている。

・環境革命がもたらす意識革命の時代。

・組織化された市民社会の時代になってきている。知識社会のネットワークの力が強くなってきている。社会の全ての人が事業家・起業家として社会をつくっていく存在に。ドラッカーが提示した「知識社会、ナレッジワーカー」、自らの知識を持って、新たな付加価値や知的生産物を生み出していく。

・知識による経済成長の理論が発達していく。知識はダイナミックに我々の間を流通している。知識は資本とは異なり、使用してもなくならない。「価値のイノベーション」が起こる。経験の価値体系が本質的価値へ。価値構造の転換が起こる。「社会のためのイノベーション」こういう時代になってきている。

・今まで経済を中心とした経営学だったが、人間を中心とした経営学・経済学になっていく。「人」のことが置き去りにされてきた。基盤に、モノ・生産性・効率をおくのではなく、自然・人間・環境を置くことになっていく。

・「情報」は工業社会に属する。データが資源になった。デトロイトで作った車がNYで売れるためには、情報の精度やスピードが必要だった。これらの情報は企業が持っており、ホワイトカラーはこれらを処理する仕事をしていた。ドラッカーの知識社会においては、生産設備が知識労働者の頭の中に入っているので、自立するのは当たり前。生産設備を持っている人自身の意識の革命が必要であり、どのように知識を使っていくのかを間違えれば、誤った道を行ってしまう。

・『問題はそれが起きたのと、同じレベルで解決することはない』byアインシュタイン

・意識の革命は、自然とゆっくりと起こるのではないか。マインドフルネスが広まっていることは一つの現れ。社会的な交流をしながら徐々に進む。それを意識の革命のゆっくりした発露ではないか。徐々に変わっているので、気づかないうつに起こるかも。

・その場しのぎ的にやったことは、大きなリスクになって帰ってくる。変化は必要だけれども、人間が扱える範囲でなければ揺り戻しが起こる。対話できるスピード、科学技術のスピードではなく、人間のスピードでやっていく。複雑性の対処と持続性の対処を両方やらなければならない。

・科学技術は目的をもっていないので、どう使うかについて、人類の対話が必要になる。社会的な対話。民主主義。対話ができる場とスピード感で進めていくことが大切。

・エネルギー問題であれはこの1万年先を見て、色々踏まえた対話が必要だろう。シベリアの凍土が解けている、というスピード感だけで対処すると、別な問題が生まれるかも。AIやロボットはビット処理するので早くなるけど、方向性を定める対話は、人間が人間らしくやっていくしかない。

・On ヒューマン、By ヒューマン、For ヒューマン

・経済や社会や都市を、バラバラにしないで一緒に考えていく。サーキュラーエコノミーのように。経済活動を戻せば、公害問題がひきおこされるということでは解決されない。

・エコシステムは難しいが、企業はじっくり考えていく必要がある。エコシステムは一見、見えない存在だが、企業を含むものであり、その上で利益を享受していく。一社だけでなく、社会と経済をバラバラにせず、包括していく。

・「ゼロからイチを生む」のではなくて、ここにゼロがあると発見することが重要な観点になっていく。ここに何かがないよね、真空地帯、ゼロだよね、と。それが分かると、そのためにすることが見つかる。「何がないのかを発見する」。じっくり考える必要がある。ゼロに立ち返るために、今を保留する

・これまでの常識は上手く行っていないので、いったんカッコに入れて、無いものと仮置きして、そこにある無の場所を出発点にすると、今ままでのものは溶けて、新しいものが立ち現れてくる。山だと思っていたが、空で捉え直して再構成する。オットー・シャーマー氏のU理論も通じる。

・今求められているのが、過去と未来をむすぶ歴史的な構想力。今この段階で、過去と現在と未来が一緒になっているという軸。過去も見るけど、未来も見て、現在を判断する。

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■大室悦賀氏 (京都市ソーシャルイノベーション研究所)
・SDGsも含め、自然環境、動植物・地球、インターラクションを通じて行きている。

・知識社会は、それ以外のものも含んでいく、エコシステムといっている部分もある。線形で意思決定したり、売れる、という考え方ではない。エコシステム、創発性、イノベーションあたりの領域。
そのためには、無意識に前提となっているものを取り除いてみる、という作業をしていかないといけない。また、自分のこだわりが求められる。

・知識社会の前提になっているのが、関係性である。関係性の多様化があると、知識社会が生まれる。都市、地方という表現ではなく、コミュニティがあるかどうか。
海士町「ないものなんて、ない」という感覚で見ていく。東京にあるものが地域にない、という呪縛から離れて、無で見てみる。無を発見する構想力。

・「禅」の空(くう)とは、「ある」こと。関係性がある。多相な関係性が多層にある。瞬間的に変化する。離れてくっついて、捉えられない。エコシステムもそのようなもので、一瞬一瞬で関係性は変化し、説明するのは難しい。

・空は大事。先に壊していかないと新しいものを作れない。先に空白を作らないと、新しいものが生まれない。合理性、効率性によって、早い渦に巻き込まれている。生態変化は渦の遠方で起きる。真ん中では空白がないので、新しい物が生まれる余白がない。余白を作る、長期的なもの、空間的な余白、時間的な余白。

・頭をとめないといけない。頭脳を止める。脳は情報処理機関。体中からいろんな情報をキャッチしている。目から入る情報が非常に強い。いったん目を止めると、身体からあらゆる情報があがってくる。心、身体、で感じる。ロジックの外側である知の器官が無視されている
自然との相互関係は、頭ではなく体が反応してなされる。美意識もロジックではない。そういうものをフル総動員することができるか

「イノベーション全書」紺野登氏

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非常に充実したセッションでした。

ご登壇の皆さま、運営の皆さまに、感謝 (^人^)

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