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よく効くクラスルーム・マネージメント

中、高校(セカンダリースクール)では、最初の日に生徒の前で優しい態度や笑顔を作ってはいけない、と先輩先生たちから言われた。けれども、小学校では全く違うアプローチが必要になる。

プレップさんは日本でいえば年長さんだから、ターム1の最初の日本語の時間はその時の生徒の状況でかなり私のストレス度が変わってくる。

名前を聞いても、オーストラリアに来たばっかりで英語自体が分からない子もいるし、アスペルガー症候群か、ADDなどでコミュニケーションがうまくできない子もいる。けれども、一番困るのはずうーーーーーーーーーーーーと一時間泣いてるような子だ。

他の子が私の声を聞けないばかりでなく(それも私の分かりにくい英語だよ!)、初めての日本語のクラスで担任の先生もおらず、普通でも集中することが難しい年齢で、さらにクラスメイトがギャーギャー大声で泣いているとあれば、大丈夫な子も不安になる。塗り絵などのハンドアウトを渡して、何らかの作業を始めなければ、他の生徒は落ち着かない。私も全然落ち着かない!!ストレスはつのるばかり。

泣いてる子のことをどうなぐさめようが、こればっかりはなかなか止まらない。しかし、私にはほかに約19人の生徒がいるわけだ。だから、私が考えたのは、泣く前に何か対処ができないか、とういうことだ。

2 生徒をエンターテインせよ!

それで考え付いたのが手ぐるみだ(パペット)だ。

まずは簡単に自己紹介、’Please remember my name like this. Me-You-Key sensei. Sensei means teacher.' 「こういう風におぼえてね。ミーユーキイ 先生(私ーあなたーかぎ)せんせいはteacher だよ。」

そして、ロール(出席)を取って名前の読み方を確認した後に、
「今日は、みゆき先生ね、お友達を連れてきたんだ!でも、とってもシャイなの。とらさん、とらさん!出てきて!大丈夫、ここにいる子供たちは優しいよ!」

「とらさん、Don't be shy! You will be fine! はずかしがらないで!大丈夫だよ。」

私がゆっくりとらのパペットを背中からのぞかせる。ちらっ。生徒は興味津々だ。そして、とらのパペットをゆっくり生徒に見せる。

もちろん、頭のいい子も、普通の子も私がとらのパペットを動かしているのを分かってはいるとは思う。けれども、小さい子供たちはやはり素直だ。

とらさんはふるえながら私にダッコちゃんのようにくっついている。そして、私は生徒に、「とらさんに日本語であいさつしてみようか?Can you say こんにちは?こんにちはmeans Hello in English! こんにちは!」

生徒はみんな私が言ったことをリピートしてくれる。「こんにちは!」
「みんな上手に言えたね。じゃ、もう一度言えるかな?こんにちは。」生徒はちゃんと、「こんにちは!」と言いかえしてくれる。私はとらさんの頭をさげながら、もう一度、こんにちは!ここまでくれば、つかみはオッケー!

’Do you know the song, Head and shoulders?’ 生徒はうんうんとうなずっく。とらさんと一緒にHead and shoulders をする。
「あったま、かた、ひーざ、あし、ひーざ、あし!ひーざ、あし!あったま、かた、ひーざ、あし!め、みみ、くち、はな~~~!」

'Well done!よくできました。じゃ、もう少し早くやってみようか?Can you do it a little bit quicker? '

とらさんの手が短くて耳になかなか届かないが、それも愛嬌。

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アクションソングが終わったところで、
「みんな、とらさんと握手したい?」もちろん、生徒は握手する気満々。一人一人ととらさんを通じて握手をする。でも、とらさんの出番はここまで!こっちが持たないし、片手がふさがっていると他のアクティビティーができないからね。

で、このころになると、生徒はホームシックだったのをすっかり忘れている。生徒はA4サイズのペーパーウオレットとエクササイズブックを日本語のクラスで使うことにしているのだが、ペーパーウオレットのふたの部分にクラスのラベルを張るのだ。ラベルは子どもたちの大好きなキャラクターを使っている。日本語でタイプした名前のラベルを張らせ(私が子どもたちの名前を早く覚えるためもある)、キャラクターに色を塗らせる。このぐらいの子どもたちはみんな塗り絵が大好き。

塗り絵が終わってラベルを集め、かたずけをする。時間があれば、空手の型をやってみたり、ハンドムーブメントをしたり。そのころにはほぼ1時間がたって担任の先生が帰って来る。

「はい、みんな、よくできました。Your sensei is here, so it's time to say good-bye. 担任の先生が戻ってきたから、さようならを言う時間です。Can you say さようなら、ミーユーキイ先生?」「さようなら、ミーユーキイせんせい!」

子どもたちは手をふりながら、見送ってくれる。

このように手を変え品を変え、子たちが興味を持って日本語を学んでくれるよう、日々戦っているのであります。

ティーチングは一日にしてならず。




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