【with wedding vol.14】結婚式場にもできるシェアリングサービス

※株式会社リクシィ代表安藤が寄稿したウェデングジャーナル
連載号:2018年8月号 第86号 の内容を転載しております。

シェアリングサービスと呼ばれる業態が注目を集めています。シェアリングサービスとは、モノや場所を多くの人と共有したり、個人間で貸し借り・売買をできるサービスで、従来、共有していなかったものやできなかったものを、正に共有(シェア)することで、今まで得られなかった収入を得たり、お得に使えたりするというメリットがあります。代表的なものはairbnbのような民泊のサービス、Uberのようなタクシーのサービスがあげられ、普通の家を貸すことでホテルに変わったり、普通の自動車にタクシーを探している方を顧客として乗車してもらうことでタクシーに変わったりしています。背景には、スマートフォンの普及により、個人と個人が発見しやすくなったこと、決済やコミュニケーションが不要となり便利になったこと、レイティングが働き信頼度が高まったこと、などがあげられます。日本でも、クラウドソーシングのような労働力のシェアリングサービスや、場所をシェアするサービス、隙間の土地を駐車場として使えるサービスなど、様々なサービスが誕生しています。今回は、その中でも、ウエディング産業にもヒントになるものを紹介しながら、今後の展開を探っていきたいと思います。

TLUNCH(トランチ)

TLUNCHはフードトラックのプラットフォームです。オフィスビルのエントランスなどでフードトラックを置けるスペースを集め、TLUNCHに登録しているフードトラックを日替わりで派遣しています。リクシィの近くの駐車場も毎日昼間は4-6種類のフードトラックが並び、ランチに困ることがありません。コンビニしかなく、食事が偏ってしまう会社員には大変喜ばれているサービスです。フードトラックは1日40食程度を売ることができれば採算が合うとのことで、自分の城をもちたい調理人から見ても参入しやすく、非常に注目されている事業形態です。今後、自動運転が普及していくと、運転に不安のある調理人も参画できますし、ビッグデータでどこにどんな食のニーズがあるかがわかるようになり、適材適所なマッチングも可能になるでしょう。

<ウエディングでは?>
フードトラックの稼働は平日がメインになります。結婚式場の場合、キッチンの稼働は土日がメインになるので、平日の時間に余裕があるならばフードトラックとの相性は非常に良いと言えるでしょう。結婚式場のキッチンは、どうしても定型のコースメニューを出すことが多いため、決められた料理を繰り返しつくることが多くなってしまい、クリエイティビティを発揮する機会が限られることで、モチベーションが下がってしまったり、さらなる成長を求めて退職してしまったりするケースが少なくないと思います。フードトラックであれば、低コストで参入しやすく、自分のつくりたい料理を出すことができるので、結婚式場にとって、非常に相性が良い方法なのではないかと思います。

ecbo cloak(エクボクローク)

ecbo cloakは、クロークのシェアリングサービスです。訪日外国人観光客が増え、東京オリンピックも2年後に迫る中で、宿泊施設など環境整備が間に合っていないという話がニュースになっていると思いますが、コインロッカーの数も足りないと言われています。その中で登場してきたのが、ecbo cloakです。ecbo cloakは、飲食店や不動産屋など街中にある「店舗をクロークにする」というサービスです。荷物を預かっても良いよという店舗がecbo cloakに加盟すると、ecbo cloakのサイト上に表示がされるようになり、使用する訪日外国人観光客が発見して、荷物を預けにやってきます。決済もやりとりもサイトで完結するので言葉がわからなくても、通貨の問題も気にする必要がありません。これにより、加盟店は、荷物を預かるだけで収入を得ることができ、コインロッカー不足の問題も解消してしまうというサービスになります。アクセスの良い立地にある店舗だと、月50万円程度の粗利を得られるケースもあるとのことで、アパマンショップ全国87店舗での導入も決定したそうです。

<ウエディングでは?>
結婚式場こそ、そもそもクロークのスペースがふんだんにあると考えると、非常に参画しやすいサービスと言えるでしょう。訪日外国人をターゲットと紹介してみましたが、実際には日本人でも問題はなく、観光地など顧客が多いエリアでは、コインロッカー探しをしている方が多数いらっしゃるので、オペレーションも普段されているわけですし、引き受けてみるのもありなのではないかと思います。

その他のシェアリングサービス

Akippaは、駐車場のプラットフォームサービスで、空きスペースを駐車場として貸すことができるサービスです。やはりスマホのアプリでマッチングが行われ、決済もアプリ上なので、何もする必要がありません。結婚式場には多くの駐車場があるわけですから、有効活用できるような気がします。また、ラクスルは印刷のプラットフォームのサービスとして東証マザーズに上場した会社ですが、TV CMのシェアリングのサービスも展開しています。ローカルのTV CMの配信枠を安く集めて安く販売することで、最低30万円からテレビCMをトライすることが可能です。特に、従来の広告媒体の費用対効果が低下している状況では、独自の集客手法の確立が必要不可欠であり、特色あるイベントやサービスの告知と合わせて実施する価値があると考えられます。

最後に

ウエディングの中でも、ここで紹介したようなシェアリングサービスとはちょっと違うものの、似たような構造のサービスや現象はいくつか挙げられると思います。配膳会などは最たる例だと言えますし、ワタベウエディングは自社運営するドレス工場で、オリジナルドレスを1着から短納期で安くOEMで製造するサービスを結婚式場に対して行っていたり、海外挙式の販売代理のスキームで拡販を行っていたりもします。消費者サイドでも、インスタグラム上で見つけた卒花からドレスを買い、自分の結婚式が終わったら他のプレ花嫁に販売するという現象が見られたり、手作りのアイテムをメルカリ等で販売したりするなど、ウエディングアイテムのシェアリングも進んでいます。

シェアリングサービスと注目されてはいますが、発想自体は昔から存在していました。インターネット、スマートフォンの進化により、元々あるモデルでもスケーラビリティが生まれることもあります。今後、AIの進化、自動運転の普及、5Gの発展など、大きな変化が我々を待ち受けています。時代の節目に新たなサービスが誕生し、伸びるもの。テクノロジーを絡めることでどんなことができるのかを考えながら、自社の展開を想像するのも良いでしょう。

安藤 正樹 - Masaki Ando
株式会社リクシィ代表

花嫁の不安を“トキハナツ”式場探し「トキハナ」を提供するウエディングプラットフォーム事業、ブライダル企業の事業をサポートするブライダルコンサルティング事業、ブライダル特化の人材紹介サービス「リクシィキャリア」などを提供するブライダルビジネスサポート事業を柱に展開。
ブライダル業界の構造改革、結婚式であふれた世界を創ることを目指しています。

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