【with wedding vol.13】Chooleリリースを通じて得られた気づき

※株式会社リクシィ代表安藤が寄稿したウェデングジャーナル
連載号:2018年7月号 第85号 の内容を転載しております。

2018/6/1にChoole(チュール https://choole.jp )というサービスをリリースしました。詳細は以前のウェディングジャーナル内でも紹介された通りです。今回は、リリース至る経緯を紹介しながら得た、様々な気付きを紹介させていただきたいと思います。

経緯

リクシィは2016年5月に誕生した会社です。このChooleはその時点から構想していたサービスです。この2年間は、B2Bでコンサルティング事業、人材事業(リクシィキャリア)を、B2Cでgensen weddingというエージェント事業を行ってきました。もちろんそれぞれの事業に対してビジョンを掲げ、社会的に存在意義のあるサービスとして真剣に取り組んでいますが、それらの事業が、Chooleにつながるという戦略的な狙いもありました。
創業直後、すぐにChooleに取り組まなかった理由はシンプルで、とにかく確かめたかったからです。Chooleのようなアイディア自体は誰もが思いついたことがあるはずですが、誰も実行しなかった。その理由は、既存の事業構造上のハードルがあることと、実行するだけのノウハウ・アセットをもっていなかったからと考えられます。幸い、後者については我々には心配無用でしたが、前者については、既存のプレイヤーがどんなことを考えているのか、確かめる必要がありました。
この2年間、コンサルティング、リクシィキャリア、gensen weddingなどの取り組みを通じて、全国の様々な会社の方々とお話をさせて頂く機会に恵まれました。そこで、ほとんどの結婚式場の方々が、結婚式の未来は今のままではいけないという想いをもたれている、そして、既存の構造が限界に来ていることへの実感があることを確かめることができました。インスタグラムがここまで結婚式に影響を及ぼすというのは、創業当初は予想できていたわけではありませんが、市場ニーズの高まりも感じられ、今がその時期だなと判断して、リリースに至ったわけですが、その中で感じた気づきをシェアしたいと思います。

気づき

①素晴らしいクリエイターの存在が業界内に知られていない
今回、Chooleのイベントで協力いただいた、サウンドクチュール(音)、farver(フラワー)、Lim(ヘアメイク)、mutin(ドレス)などの会社は、自分の無知さ加減を思い知らされるようなクオリティでサービスやプロダクトを提供されている方々でした。起業するまではその存在を知らず、9年間この業界にいるというのが恥ずかしい気持ちになりました。クオリティの高さを言葉で表現する自信がないので説明は省かせていただきますが(汗)、自分自身、起業しなければ出会えなかったと思いますし、起業前に出会えていたとしても、そのクオリティを理解できず、そこにこだわる意味を見出せなかったような気がします。結婚式場に所属していると「自分たちの結婚式が一番だ」とほとんどの人が思うものですし、その自負がないとできない仕事なので当然です。一方、モチベーションが極めて重要なので、経営トップは結婚式への誇りをもたせるために自分の会社を誉めることが多い傾向もあるように思います。付き合いのあるパートナー・ショップも固定されますし、パートナー・ショップもビジネス上の立場なから批判的な声をあげることは少ない。結果、世界・視野が狭くなる。そうなると、クオリティの高さに気づける感覚がどんどん失われてしまいます。自分がどんな顔をしているのかは自分にはわからないのと同じで、自分の会社のことは自分たちにはわからないものです。ただ、gensen weddingをやっていてもそうですが、外から見るとそのクオリティの違いは顕著に見えるわけで、この気づけない構造がもたらすロスは計り知れないなと思いました。

②実は感度の高い消費者は知っている
花嫁会などを開催すると、クリエイターの存在を彼女たちの方が知っています。「良いものは良い」と純粋に言える立場ですから、ピュアに発見できるのでしょう。花嫁会に参加するような方々は感度が高い方々なのは間違いないですが、そのような方々のインスタに影響を受けて、一般の消費者の方々も学習しています。「いや、うちのお客様でそんなクリエイターとかって情報をもっている人は少ないけどなあ・・・」と感じる方もいらっしゃるでしょうが、自分の会場に来るのは自分の会場に来たい人だけなので、限られたサンプルで世相をとらえてはいけません。クリエイターやアイテムに関しては、お客様の方が詳しい。今まではプロフェッショナルは自分たちなのだから、自分たちにお客様を導いていく責任があると考えていましたが、それは大きな過ちだと思いました。よかれと思っていたとしても、「お仕着せの結婚式」というマイナスイメージを助長してしまうリスクすらあります。

③必要なのは、新規見学よりも施行見学
よくお客様になりすましてライバル会場の見学に行くという話があると思いますが、本当にやるべきなのは施行見学なのだろうと思います。ある意味、施行を相互に見せ合うのは、目の前のお客様の奪い合いにはならないですし、学びの機会として価値があるのではないでしょうか。業界内のセミナー・研修も、もっとクオリティに関する学びや気づきがあって良いと思いますし、そのような場が開かれると、クリエイターや卒花・プレ花のみならず、ウエディングプランナーにとっても、学びの多い貴重な機会になるように思いました。クオリティが高まる=組数が増える、という構造になっているとは言い難いのがブライダルの哀しいところですが、ブランディングの価値が高まっている中では、リターンが生まれる日も近いように思います。狭い視野にとらわれない努力をする、そのような機会を設けていくことが重要だと思います。

最後に

ウエディング業界においても、新しいサービスは、いくつか出現してきましたが、基本的には既存のプレイヤーを批判し、だからダメなのだと自身の地位を向上するやり方をとってきたような印象があります。ですが、この国で実際に結婚式を手掛けてきているのは紛れもなく今のプレイヤーなわけで、自社の利益だけを考えるならまだしも、本当に結婚式を変えたいならば、そのような手法は合理的に考えてあり得ません。また、この業界に携わる方々は、皆、結婚式が好きです、ここに自分の大切な時間を注いでいます。結婚式をより良いものにしたいという想いを誰もがもっています。その想いを知っている自覚があるなら、感情的にもそのような方法をとってはいけません。過去、本コラムでも、共創やアジャストなどと伝えてきましたが、正にそれを体現できるサービス、会社にしたいと思います。ぜひ応援いただければと思います。

安藤 正樹 - Masaki Ando
株式会社リクシィ代表

花嫁の不安を“トキハナツ”式場探し「トキハナ」を提供するウエディングプラットフォーム事業、ブライダル企業の事業をサポートするブライダルコンサルティング事業、ブライダル特化の人材紹介サービス「リクシィキャリア」などを提供するブライダルビジネスサポート事業を柱に展開。
ブライダル業界の構造改革、結婚式であふれた世界を創ることを目指しています。

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