【with wedding vol.11】採用力のある会社、ない会社は何が違うのか?

※株式会社リクシィ代表安藤が寄稿したウェデングジャーナル
連載号:2018年5月号 第81号 の内容を転載しております。

深刻なブライダル業界の採用力の低さ

今回は「採用力のある会社ない会社」というお話です。なかなか良い人材からの応募が来ないという悩みをお持ちの会社は多いのではないでしょうか。リクシィでも人材エージェント業を行っており、成果報酬型で人材の紹介を行っていますが、「どうすればいい人が来ますかね」という相談も多いです。現実、以前の寄稿でも言及した通り、若年人口が減り、完全に売り手市場の中では、ブライダル企業の採用競合は同業のみならず、異業種もまたなわけで、この状態を認識することから始めるべきかなと思います。

と言うのも、採用環境が大幅に変わっているのに、採用スタイルが全く変わっていない、ともすれば理解に苦しむ会社が多い状態を憂いているためです。様々な会社様の採用部門の方とやりとりをさせていただきますが、「この会社は採用力がありそうだな」「この会社はあまり良くないのではないか」などと感じながら仕事をさせていただいています。「中途の年収240万円では行くわけがない」「そこまで契約社員にこだわる意味があるのか」「入社に悩む人材に、いつまでに答えなければいりませんと言いますか」など、疑問に直面することも少なくなく、ブライダル業界全体の採用力の低さに危機感があるのが背景です。採用マーケットでは、個社に対する認識などなく、ブライダル全体の印象が優先するので、1社でも劣悪な対応をしていると、すなわち業界全体の採用競争力を貶めてしまう現実があり、我々も心を痛めているという本音もあります。業界全体の魅力を高める意味でも、本当は働き手にとって魅力がある会社なのに採用部門の動き1つで全然変わるのにと感じて、本稿を記させていただきます。

自社の採用条件を頻繁に見直して調整する重要性

例えば、「ブライダル経験者で、28歳くらいの女性で、上昇志向もあり、希望年収350万円くらい」みたいな条件の方がいると、採用しやすいと思いますが、そのような人材は異業種含めて引っ張りだこの状態です。採用できる会社は、他社にはない個性や魅力が無い限り難しいです。

例えば、
・ママになった後の制度が充実している
・有給取得率100%である
・残業代がしっかりでて、給与面の待遇が良い
などの環境があると採用力は高まります。ブライダルの会社でもこのあたりは以前よりは整ってきたとはいえ、既存社員との調整などを考えると、一朝一夕には対応が難しいもので、ここで差別化できると母集団形成は有利に働き、売り手市場から買い手市場に転換できるくらいのインパクトがあります。この状態を保てる会社は大崩れはしないでしょう。

現状そうではない会社ではあるが、採用を打開したい場合にお勧めできるのは以下の手法です。
・採用可能年齢を40歳程度にする
・管理職採用をありにする
・待遇の良さを売りにする

多くの会社が盲目的に上記の人材は書類で落としてしまいますが、個人個人を見れば能力も人柄も優れた方は当然存在しています。そのような人材に目を向けるだけで、採用の質はあがりますし、何より新しい考え方を取り入れられるという期待値が生まれるものです。

とはいえ、表面的な制度で優位性をつくるのは危険

採用を意識して、体よく、育休の取得可能な年齢を上げたり、社員に報いようとしている制度をつくる流れは確かにありますが、これが本当に良いかどうかは冷静に考えるべきでしょう。

と言うのは、さも社員を大切にしているかのような制度があるにも関わらず、企業文化として浸透しておらず「社員はいつか辞めるものだと思っている」というスタンスのままだと、既存社員の絶望感を産み出す可能性が高いためです。

制度面で抱く印象で応募者も会社のことをイメージしますから、短期的に採用に活かせるという観点で制度を整えるのは社内ハレーションを生むこともあります。長く在籍すれば手当を出しているのに、本質的に社員がやりたいことを「できるわけがない」などと抑圧している事実がある場合、既存社員は「パフォーマンスに過ぎない」と見抜きますし、制度に魅かれて入社した社員のことを「わかっていない」と距離を置き、入社した社員も「思っていた会社と違った」と、誰が得なのかわからない状態というケースもあるように思います。やるならば本質的なコミットメントが必要不可欠でしょう。

大事なのは組織ビジョンで、それありきでアクションは決める必要があるはずです。自社の風土を踏まえて、採用競合先の強み弱みを知った上で、制度作りを進めるのが良いでしょう。

採用部門が高圧的なスタンスは、百害あって一利なし

こうした方がいいという話を紹介させていただきましたが、それ以前の状態の会社もあります。それは、「採用してあげる」というスタンスが露骨に出ていて、高圧的な会社です。この人材難の時代に、高圧的なスタンスの時点でセンスを疑いますが、そのような会社も多い印象です。裏を返せば、応募者に対してリスペクトの姿勢を貫くだけで応募は増える状態なので、真摯な会社にとっては恵まれている環境も言えますが、それが良い構造なのかどうかは業界全体を考えると、レベルが高いとは言い難いなという印象です。やはり採用通知書は丁寧に書くべきですし、質問があったら人事が直接会うくらいのことは普通にすべきだと思いますので、自社がそのようなアクションをできていなければ即刻改善なさった方が良いのではと思います。

もっとも効果的なのは、社長が1次面接ででてくること

色々なテクニック論を述べてまいりましたが、最短ルートで採用力を高める方法は、社長が必ず面接をするというアプローチです。やはり、応募者は必ず社長を見ますし、「ビジネスモデルは変えられるけど、社長を変えることはできない」という定説は、特に人材エージェントでは常識ですから、やはり社長が肝ということは断言できます。採用が経営課題であれば、社長自ら対応する価値があるでしょう。ブライダルの会社で、最初に社長が出てくるところは多くないので、チャンスがあるように思います。ただ、社長がトップダウンで決めてしまうことで採用部門がモチベーションを失い、結果として応募者にとって失礼な対応を無意識にしてしまうケースもありますので、やはり企業文化ありきで動く必要があるでしょう。

まとめ

採用環境を見てみるに、昔よりも新卒の応募が減っているという会社も少なくありません。一方で、無駄に採用のハードルが高い会社が多いなと感じているのも事実です。「今までこうだったから」を忘れて、良い人材を採るにはどうすればいいのか、ちょっと工夫するだけで様変わりする会社が非常に多いなという所感から本記事を書かせていただきました。ブライダル業界の発展のためには、結局、この業界にどれだけ良い人材が集まるかにかかっています。会社単位では人材確保に注力していると思いますが、その手前としてブライダル業界として映っている景色がダメであれば、各社がどれだけ努力をしても、採用マーケット上では全く伝わりません。リクシィとしては、業界全体の採用競争力を高めることにコミットしたいがゆえに、このような内容とさせていただきました。失礼があったかもしれませんが、本来、もっと応募者が多くても良いのに、もったいない会社が多い事実を見て、良かれと思っての内容であることを、お赦しいただければ幸いです。より詳しい話にニーズがあれば、気軽にお問い合わせくださいませ。許可をいただけるなら、すべてを明らかにさせていただきます。

安藤 正樹 - Masaki Ando
株式会社リクシィ代表

花嫁の不安を“トキハナツ”式場探し「トキハナ」を提供するウエディングプラットフォーム事業、ブライダル企業の事業をサポートするブライダルコンサルティング事業、ブライダル特化の人材紹介サービス「リクシィキャリア」などを提供するブライダルビジネスサポート事業を柱に展開。
ブライダル業界の構造改革、結婚式であふれた世界を創ることを目指しています。

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