宇佐美ときはです。 読書と創作とゲームが趣味です。 ファンタジー世界が大好きで、ハイファンタジーの小説を書き始めました。 タイトルは「ファルナの国の物語」 舞台は小さな島国、ファルナ国。 かつて太陽と月が昇っていたファルナ国だったが、今は太陽が昇らない、月の国となっていた。 そんな夜の闇に包まれた国には、人間と魔法使いが住んでいる。 主人公の少女、ナズナ・フレールは魔法使いの女の子。 普通の家庭で、何不自由なく過ごしていた彼女だが、ある日自身の魔法を暴
雨の中、傘の下で泣きながら歩く。 寂しい。さみしいなぁ、と。 ふと、そんな時。傘の向こう側が淡く光り輝いた。 傘を上げて前を見れば、可愛らしい一軒家が一つ。緑色の扉が開き、招くように揺れている。 こっちにおいで、と。 頬を伝った涙が、オレンジ色の光を反射する。 誘われるように、わたしは扉をくぐり抜けた。 そこは、木に囲まれた、森のようなカフェだった。 珈琲豆の香ばしい匂いが鼻をつく。少し先にカウンター席。左右にテーブル席。客はいなく、申し訳程度のBGM
白いカーテンがふわりと揺れた。空いた窓から差し込む朝日と冷たい風は、床の上を滑ってイーゼルの足にぶつかってゆく。 木の足が七本、そこに立っている。三本はキャンバスを支える方。残りの四本は正方形を作るように並んで、座る彼女を抱き留めている。 綺麗な素足をぶらりと放って、彼女は右手を上げる。三つの指で優しく添えているのは細長い絵筆。先には夕焼けよりも濃厚な、熟した林檎のような色がのっている。 彼女の口元に笑みが浮かぶ。吐息が一つ漏れて、キャンバスに筆がおかれた。