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「あなたは変われないよ」その言葉が呪縛のように


憂鬱な夜は、ふとした瞬間に。
理由もなく、心が重たく感じられる時、静かな夜がその感情を引き立てる。
そんな時、どうしても過去を振り返る。
「あの時あぁしていれば」と思う。
けど、あの頃出て行った彼女が最後に言った
「あなたは変われないよ」
その言葉が呪縛のように。


「別れたいです」

家に帰ったら、テーブルの上に
それだけの置き手紙が置いてあった。
がらんとした部屋に、心臓が凍るような感覚を今でも覚えている。
その当時の僕にとってはそれだけが世界の全てだったから。

情けないが、僕はその置き手紙を見るまで
彼女の気持ちなど1ミリもわかっていなかった。

それから、彼女に気持ちを聞くまでは見えなかった自分自身の事実が、全て心当たりのある一語一句だった。
「変わるから」僕が言った言葉に彼女は
「あなたは変われないよ」
そうはっきりと答えた。
その言葉の強さに、今までの彼女の我慢が詰まっていたのがわかった。

僕は毎日死にたかった。
本当に死にたい訳ではなく、
死にたいほど先の未来が怖く感じる時間が多かったのだと思う。


それから一年後、色々あり会社を辞めた。

そして喫茶「時々、雨」を始めた。

お店にその彼女が遊びに来てくれた。

その時、「おめでとう。あなたは変われないんじゃなくて、変わらないでよかったんだよ。そのままでいてね」
そう最後に言った。

全てが報われた気がした。

「あなたは変われないよ」彼女が最後に言ったその呪縛は、ある意味彼女の願いだったのかもしれない。

僕は僕のままで、彼女は彼女のままで。


交わる事のない人生は、交わる必要を持たずに、そのまま真っ直ぐに続いていくのかもしれない。



そして永遠に交わる事はなく真っ直ぐ進んでいく。

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