2024/01/29 白道(はくどう)

「今日の月は、昨日よりは南寄り。あの山にかかるようになった」
月を眺めてる友人が隣でそんな事を言い放つ。

「うわぁ。寒いのにそんなのよくわかるね。今日も昨日も明日も変わんないよ」
私は震えながら欠けつつある月を眺める。友人がひと月前に「月を見よう」なんて、酔狂な事を言い出したからだ。おかげで毎夜一時間、付き合わされている。

「ちょっと待って。写真を撮ったら、帰ろう」

友人は嬉々としてカメラで月をとっている。私も一度真似て撮ってみたが、夜の撮影が難しいことを痛感しただけだった。最新のスマホはそれらをすべてクリアしてるらしい。

「知ってる?月の軌道は白い道。はくどうって言うんだ」

友人はまた昨夜と同じことを話し始める。こうなると止まらない。白い無言の月と違って、白い月のような唇で友人のお喋りは延々と続いた。

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