2024/07/29 「七福神の日」

神様たちはいつも争っていた。
『七福神』の座をかけて。

「私がその椅子に座るべきだと思うのよ」
「いや。わしが」「俺が」「おらが」「いいえ。わらわですわ」
「引っ込んでなさいよ。田舎者」

およそ神とは思えない罵詈雑言が飛び交い、時には神通力が飛び交う。七福神に興味のない神様たちは呆れかえって、その喧嘩を止めることもしない。

その裏側で地道に布教に励む神様が一体。
気が付くと残りの席は6つになっていた。それに気が付いた神様たちは喧嘩ではなく亀の甲の占いで席を決めることにした。

「こう割れたから、これは私ね」
「いやいや、この割れ方はわしじゃ」

ああでもないこうでもないと亀の甲の占いでも決まらない。

すでに席についている神様は悠々とその喧嘩を見守っていた。しかし、あまりにも長引くのでたいくつになってしまい地上の人間たちを見てくることにした。

地上では吉祥天・恵比寿・大黒天・毘沙門天・布袋・寿老人・弁財天の七柱が七福神となっている。すでに席についていた吉祥天は絵や像を眺めながら地上を一回りして、天に帰った。

天に帰ってみると、席は全て埋まっていて吉祥天の場所はなかった。

「そこはわたくしの席よ」
「いやいや。ここはわしじゃよ」
そう言って福禄寿は地上の絵を見せた。そこに吉祥天はなかった。

悔しがりながらも吉祥天はその座を諦めて、元の住処に戻っていった。


***
「へぇ。そういう話があったの?」
真面目に聞いていた同居人がそう聞いた。
「ないよ。でも七福神は入れ替えが激しかったらしいから、いつの間にか変わった神様も混ざり込んでいたかもね」

「あれだ。七聖人と一緒だね」
「聖人はわからないけど、そんなものかな」

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