2024/04/15 「遺言の日」

見知らぬ男が「伯父さんがあなたに遺産を残した」という事を伝えに来た。借金は要らないと答えたが、借金ではなく土地家屋だという。厄介なものを持ち込んできたなと思って一度は断ったが『売れば金になる』と言われて実物を見に行くことになった。

「本当にここ?」
「ええ。そうです」

そこは博物館の敷地の一角だった。

売ればお金になるが膨大な違約金が発生する。相続放棄をしたところでその壁には私そっくりのご先祖様の顔があり、ネット上ではすでに私が遺言に書かれた相手として個人情報が広まっていた。そのせいで死後ひと月も経たずにこの男は私を見つけ出すことができたらしい。

「つまり、私はこの土地家屋を相続して警護を付けなければならないっていうわけね」

警護費用は博物館持ちの契約になっているとの事だった。負の遺産を前に選択肢はなかった。


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