2024/07/31 黎明(れいめい)
朝が始まる空の中に彼は消えた。
おそらくそうだったのだろうというのは、スマホの中に写真が残っていたからだ。事故か自殺かは最後までわからなかった。
三年後に手紙が届くまでは。
手紙にはスマホにあったのと同じような写真とその裏に「会いにいく」という言葉が残っていた。その言葉の意味を誰も分からなかった。誰に会いに行ったのか。両親は健在で恋人もいた。亡くした友人もいない。
一体、誰に会いに行ったのだろう。
「そう思って、ずっとこの日は朝日を眺めるようにしてる」
同居人はそう語った。彼の恋人の死はいまだに謎のままだ。
「そう」
私はその話を聞きながら、同居人と一緒に朝日が昇る前の変わりゆく空を見つめた。
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