2024/07/21 「自然公園の日」

緑あふれる公園……という言葉を見ながら、公園なんて緑があって当たり前じゃないかと同居人が言った。

「いや。そうでもないのよ」
私は同居人が言う『公園』とこちらの公園の意味が少し違うのだろうなと思う。言葉にするよりも、わかりやすく同居人を公園に連れていく。

「こう、えん?」
同居人が首をかしげる。
ここは住宅地の一角の公園。緑は……ない。砂地にいくつかの遊具があるだけ。以前は小さな植え込みぐらいはあったけれど、害虫の発生で一斉撤去されてしまった。

「そう。公園。子どもたちが遊ぶ場所で遊具があるでしょ」

「違うよ。これは広場。遊具がある広場」
なるほど、確かに言われてみたらそうなのかも。そして、暑さにまけて早々に退散した。誰も遊んでいないのは暑すぎて遊べないからだ。

「公園はこんなに暑くならない。日陰がある。遊具もいらない」
同居人の言いたいことがわかって来た。
「うん。緑があるから影もあるってことね」
「そう」

「じゃぁ。明日は公園に行こう」

そう約束して、翌日、公園に行った。
「これ。ここが公園」
少し広めの緑あふれる公園。昨日の公園とは違って、遊具はないが芝生の広場がある。遊歩道もあり、いつもお散歩をしている人たちがいる。

「あ……痛い」
同居人が小さく叫んだ。私は虫除けシートを同居人に張り付けて、薬を腫れてきた部分に塗る。
「準備いいね。そっか。こっちでは、蚊がいるんだね」

「高温多湿だから……そっちは寒くて、いなかった?」
「見かけないね。マラリアにはならないの?」

同居人の言葉は不安げだった。蚊のいない地域にとっては、そういうイメージなのかと思った。
「ここでは聞いたことがない。でも、帰る?」
「そうする」

緑があれば散歩が楽しめると言っていたけど、蚊の恐怖には勝てなかったようだ。

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