2024/04/30 あやめ

ひたりと、死の足音がする。

かすむ視界の中で、紫があでやかに伸びる。夏まで持たないと言ったのは誰だったろうか。

咳を小さくしてから、兄が私の額に濡れた布を置いてくれた。ひやりとしたのは一瞬で、次の瞬間それは先ほどと変わらないものになる。

すでに行ってしまった弟と妹が隣にちょこんと座っている。なぜか、小さなころの姿だ。

「何か、ほしいものはあるか?」

兄がすまなさそうにそう言った。私はふっと笑って、「詠んで」と告げる。


『寝る妹に 衣打ちかけぬ 花あやめ』(俳人:富田木歩)




/花のことば辞典 四季を愉しむ から創造してみた。

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