2023/12/27 人魚

羽を休めるために岩場に降り立つと、ふいに霧が濃くなった。疲れていなければ、こんな場所で休んだりはしない。この辺りは人魚のテリトリー領域だ。
私の透き通った羽は光を放って揺れる。この間は、この光に人魚が近づいてきて、水中にまで引きずり込まれた。警戒しながら辺りを見つめると、ポチャンと水の中から人魚が現れた。
人魚は私を見てから、「違う」と一言放って消えてしまった。

彼女の髪には櫛がなかった。人魚の櫛は想い人に渡すのだという。
私はホッと息をついて、休憩を終えて飛び立った。

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