2024/07/28 「菜っ葉の日」

シャリシャリ

変な音がリビングから響いてきた。見てみると友人がお皿にレタスを載せて、それをむしゃむしゃと食べている。
「芋虫?」

思わずそう言ってしまった。両手で葉っぱを持って無表情で食べてる姿はそうとしか見えなかった。

「冷蔵庫に何もなかったから」
そういえば、最近、忙しくて食材の補充をしてなかった。料理に興味のない彼女は、なるべく手をかけないでモノを食べようとする。このレタスもそうだ。

「ドレッシングかけた?」
「かけてない。葉っぱだけ」
「何かかけなよ。味ないでしょ」
「お腹に入れば何でもいい。不味くないよ」

彼女の不味くないは『嫌いで食べれないものではない』程度の意味だ。ほうれん草も入っているのに、そちらには一切、手を付けていない。

ぼくはため息をついて、ほうれん草を取り出す。洗ってぶつ切りにして、適当に茹でる。
「まだ、いる?」
すでに食べ終えている友人に聞くと、少し考えてから「いる」と返ってきた。

先ほどのほうれん草にトマトを切って入れて、ついでにハムも足す。最後にドレッシングをかけて、彼女の前に出すと「わぁお。魔法」と返ってきた。

「これくらいやっていいんだよ」
「火。刃物。ダメ」

彼女はそう言って、料理をほぼしない。だから、先ほどのようにレタスをもぐもぐする芋虫になる。
自分の皿にも同じように盛り付けをして、インスタントスープを付ける。彼女がじっとこちらを見るのでお椀とインスタントスープを渡すとぶつくさ言いながらも自分でお湯を入れた。

ものぐさにもほどがある。

そう思いながらも、二人で食事をした。

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