2024/07/24 「卒業アルバムの日」

遊びに来た子供がぺらぺらと何かをめくっている。
黙って遊んでいてくれるならいいかと、部屋の掃除をしていると「ねぇ」と声がかかった。来年は中学生になるというその子は、私の想像していた中学生よりも大きく高校生と言ってもいいような気がする。

今の子は成長が早いんだなと思いながら、小学生にしては低いその声に「何?」と返事をする。

「どうして、住所や電話番号が書いてあるの? 個人情報ヤバくない?」

今どきの子どもらしい質問だなと思う。手にしていたのは私の卒業アルバムで、その表紙をこちらに向けている。
「昔はインターネットがないから、電話と住所が連絡先だったのよ。それに……そこまで悪質な人は稀だったから。今は平気で全世界に個人情報をたれ流せる世界になってるけど」

後半は嫌味も入ってるなと思う。でも、事実だ。昔はせいぜい「名簿業者」が警戒すべきものだったけど、今ではクラスメイトすら平気で全世界に個人情報を流してしまうのだから。

「ネットがないって、不便じゃない?」
「それね。私も思った。テレビがないって不便じゃない?って。でも、なければないで、人間は工夫するものだから昔の人の方が豊かだったかもしれない」

知らなくて良い事は知らないままで、必要な情報だけしか目の前に出てこない。情報の取捨選択は最小限で済むのは悪いことではない。

「今の時代だと、こんなの悪用されて終わりだよ」
「そのうち、卒業アルバムも卒業アプリとかスマホの中に入っちゃいそうだよね」
冗談になってるのか分からない事を言いながら、本当にそうなりそうだなと思う。今の時代、昔の同級生に連絡を取ることすらしなくなりそうだ。

そういう私も卒業後に連絡を取った人なんて一人もいないが……昔も変わらないのか。ただ、写真があるから見直せば思い出すこともある。
この先の時代は写真すら残るのかどうか怪しい。

「ああ。うちの学校、なんかそういう話が出てるとか言ってたかも」
冗談が冗談にならないってこういう事かと思ってしまった。

「それって。写真をアプリで保存して、連絡もアプリで出来るみたいな?」
「うん。スマホ持ってない子がいないから」

100%のスマホ保有率の小学六年生……そうか。そういう時代なのかと思ってしまった。卒業アルバムも随分形を変えてしまうけど、それでいいのだろうか。

紙だって燃えれば終わりだったけど、スマホはもっと変化が激しそうなのに。

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