2024/03/26 春挽糸(はるびきいと)

からりからりと音がする。
今どきどこにそんな骨董品があったんだというようなよくわからない『機織機のようなもの』を前に私はじっとそれを見ていた。

「ああ。これね。ただのフリだから。スイッチ一つで全自動なんだよ」

私はそのスイッチを探そうとしたが、ぱっと見では分からない。友人が手元を指さした。よく見ると配線があちこちに張り巡らされている。

「糸は去年のだから、質はちょっと低いけど。これはおばあちゃんが最後に紡いだ糸だから、おばあちゃんが使ってた機織機で織りたいなって」

使いたいがために機織機を全自動にしてしまう友人の技術もまたすごいと感心してしまう。


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