2024/01/30　冬うらら（ふゆうらら）

外に出るとふわりと暖かい空気に包まれる。家の中の方が寒い空気が溜まっていて、寒いようだ。

「いや。あり得ないでしょ」

話を聞いた隣人が笑いながらそう言った。それはそうだ。隣人の家は今の密閉された家でエアコン完備。冬は暖かく、夏は冷たい。

「あり得るから言ってるんだよ。うちは古いんだ」
古いから隙間風はあちこちから入り、冬は寒く、夏は暑い。だからこそ、隣人の家に来ると別世界を体験できる。家では原始時代を体験する。

「そっちにだって、ストーブぐらいあるだろ」
「あるよ。その場所だけ暖かいけど、あっという間に冷める。さらに不完全燃焼を起こしたら、一酸化中毒のおまけ付き。無色無臭で死ねるやつね」

「いや。死なないだろ。そんな危険なストーブ、今どきないって」
「ある。死にたくなったら、うち来いよ。体験させてやるから」

隣人の顔が嘘かホントか分からずに困っている。

どちらでもいい。今日はとりあえず、暖かいのだから。