2024/02/11 「わんこそば記念日」
「もう、いらない!」
部屋に入るなり、少年の叫びが響いた。少年の手にはお茶碗。その中にはソバ。彼は終わらせ方を知らないのだろう。
そう叫んだところで、ソバを手に構えている男たちも首を傾げている。
私には彼の言葉が分かったが、彼の言葉は男たちには分からない。言語が違うのだから。
私は面白そうなので、しばらく眺める。
食べ終えるごとに、彼は叫び、男たちはソバを彼の茶碗に入れる。
「本当にもう食べれないんだ」
彼の言葉に男たちは嬉しそうにソバを追加した。
言語の壁とは面白いものだ……が、さすがにこれ以上はかわいそうな気もしてきたので私は間に入って彼の言葉を伝えた。男たちは謝りながらソバを片付け始めた。
少年は不思議そうに首を傾げている。
「これは、蓋をしないと終わらないルールなんだ」
彼にはそう伝えて、茶碗の蓋を彼に渡す。彼は蓋を乗せた。
そして、私に聞いた。
「なんで、あんたはもっと前にそれを教えてくれなかったんだ?」
男たちがそれを聞いて、新しいソバを少年に渡した。言語の壁は……面倒なものかもしれない。
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