2024/08/05 暈(かさ)

ひょこんひょこ。

遊ぶようにかやの輪をくぐったり抜けたりしている子供がいる。
あれは……一方通行ではなかっただろうか。そう思いながら子どもを見ていると、もう一つ気が付いたことがあった。着物だ。
浴衣だと思っていたけれど、帯が簡易で柄が古い。色合いもくすんでいる。

「何を見てるの?」
後からやってきた同居人が後ろからそう聞いてきた。

「あれ……」
そう言って指さすとそこには輪があるだけで子供がいない。
「すごい。おっきい輪だね。あれ、何?」
「……詳しくは知らないけど、厄除けだったかな。くぐると厄が取れるとかなんとか」

同居人は面白そうと言ってくぐろうとする。神社から鳥居側に抜けようとするので、おそらく逆だと伝えた。作法は知らないけど、あれは鳥居から信者神社に行く前にくぐって厄を落として神様にあいさつするのではないだろうか。

同居人は鳥居側からくぐる。私がくぐるのも待っているので、私も真似てみる。

真上でトンビが鳴いた。その声に釣られるように上を見上げると空にも光の輪が出来ている。珍しい太陽の暈だ。

「あれも通れる?」

同居人の声に「通れるよ」という声が響き、さきほどの子供が光の輪をくぐった……ように見えた。

私たち二人はぽかんと顔を見合わせてしまった。

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