2024/01/21 「スイートピーの日」

差し出されたピンクの花束に、面食らう。
「門出を祝って」
「え。ちょ……ちょっと待って」
私は慌てて、親友の顔に花束を押し付け返してしまった。

「なんか、勘違いしてる。私は出ていかないよ?」
ピンクの花びらがはらはらと落ちるのと同じく、親友の顔も曇ってしまった。
「え? でも、明日からは県外で一人暮らしだって聞いたけど」
「それは、お兄ちゃん。県の端っこだから暮らすのが県外になったの。今日は引越しの手伝いってだけ」

親友は花束に顔をうずめてしまった。
「でも、県外の学校に決まったって聞いたけど」
「それは……海外の間違い。だから、引っ越しは9月でまだ先」

ピンクの花びらは蝶々みたいだ。
親友はその蝶の中に埋まったまま無言になってしまった。

「ありがとう。スイートピーの花言葉は門出だよね。早いけど、もらっておく。まだ1月だし高校も終わってないし、今の話は内緒だからね」
私は念を押す様に親友に伝えると、彼はやっと顔をあげてピンクの笑顔を振りまいた。

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