2024/08/02 氷菓子(こおりがし)
凍らせた果実に口に含む。小さなサクランボのような見た目だが、桃だという。知らない果物だ。
「これね。冷たい方が好き」
同居人がそう言って凍らせていたものだ。ティータイムだから食べようという事になった。凍った果実は味がしない。水分が多くて味が薄いものなのかなと思っていたら、じわじわと変わった味が広がっていく。
「これ、何?」
「桃……みたいなもの」
こちらの国にはなくて、翻訳が役に立たなかったのだろう。同居人も説明できず、『甘い果物』と言うばかりでよくわからない。
広がった味は甘味を含んでいる。確かに桃だ……と思っていたら、酸っぱいレモンの味に変わっていく。
「桃?」
「みたいなもの」
何度も繰り返した言葉に頷く。最初は桃のような甘さが広がった。次はレモンに変わる。徐々にそれが混ざって、なんとも形容しがたい味になる。嫌いではないが、説明ができない。
「冷たい果実」
同居人は諦めてそう言った。
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