2024/03/18 「春の睡眠の日」

うとうとと……沈む意識の間を漂っていた。

ことんと小さな音がする。小人が走り回る音が続く。
……眠い。起きた方がいいのだろうかという意識と、眠いという意識が戦っている。

スズメの鳴き声もするが全てが遠い。眠った方がいいのだろうかと思いながら、意識はまだはざまにいる。

誰かが私の髪を引っ張った。痛みはない。ただ、髪を動かされた感覚だけがある。起きた方がいい。

意識がふわりと浮くと同時に、空から落ちる感覚に足が跳ねあがった。

目が覚めると、小人がいる。

夢だ。

起きたつもりで、夢の中から出ていないのだと思った。
その小人が何かを言っている。声は出ていなくて、口だけが動いている。なんだろう……と耳を澄ましたところで、目が覚めた。


コツンコツンとスズメが窓の外で歩いている。
小人はいない。

あるのは春の暖かい空気。
傍には小さな人形。

「お前のせいか」
大掃除で見つけて、つい窓辺に飾ってしまった古い人形。それは小人と同じ顔をしていた。

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