2024/06/18 「おにぎりの日」 

「食べる?」

そう言って差し出されたのは、海苔が巻かれたおにぎりだった。

「んー。中身何?」
「食べてのお楽しみ」
同居人が不敵に笑う。向こうの国は小麦がメインで米料理はあまり聞かない。

「梅干しは嫌いだからね」
うちにはその食材はないが、私の知らないうちに同居人が買い足してる可能性もあるのでそう言ってみた。同居人はきょとんとしている。

「この国の調味料……いや。料理?じゃないの?」
「それでも嫌いなの。郷土料理が嫌いな人がいても不思議じゃないでしょ」

「それはそうだね。私も、×△は嫌いだし」
料理名のようだったけど、聞き取れなかった。彼の国の料理なのだろう。

「大丈夫。梅干しはいれてない。前に美味しそうに食べてたから、嫌いな食べ物じゃないと思うよ」
同居人はにこにこと私を見る。じっとおにぎりを見て、割ってみるべきか、かじるべきかに少し迷った後、かぶりと意を決してかじりついた。


「あ。うえぇ??」

思わず変な声が出る。思った味とは全く違うものが口の中に広がる。
甘い。その中に少し酸味もあるだろうか。甘いおにぎりは予想ができなかった。

「何を入れたの?」
「いちごジャム。赤いから、一緒だと思って」

同居人の言葉に脱力する。確かに赤い。でも、味は全く違う。口の中で混ざる米とイチゴジャム。……お団子なら、ありなのだろうか。みたらしと思えば。

そう思いながらも、みたらしの甘さとは違う。何とも言えない味を飲み込むと、同居人は私をじっと見てる。

「えっとさ。もしかして、全部、イチゴジャム?」
「違うよ」

その言葉にホッとする。おにぎりは3つある。一つがいちごジャムなだけなのだろう……と思ったが、違った。

「こっちはオレンジジャムに、こっちは桃ジャム」

ジャムおにぎりを前に私は茫然とした。

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