2024/04/17 「恐竜の日」

目の前にある……いや。いるのは恐竜のように見えた。骨ではなくて、肉と皮に羽毛付きの爬虫類。昔は爬虫類のようにごつごつした皮膚だったが、最近の研究では羽毛があったのではと言われている。それに沿って映画やアニメでも羽毛付き恐竜が増えた。

でも、目の前のこれは立体映像のようだ。向こう側が透けていて動きがない。
問題はなぜこんな山奥にこんな立体映像がでてくるのかという事だ。現代科学の力で立体映像がポンポン出せるなんて聞いたことがない。何かの装置があれば別だが、ここにはそんなものはない。

「おおー。おもしろいね。この国は山の中にこんなアトラクションがあるんだね」
同居人が面白そうにそう言った。

「そんなわけあるか。私も今、装置らしきものを探してるところなんだから」

光をさえぎってみるけど不思議なことに立体映像が歪んだり消えたりすることはない。同居人も映像に触れようとしたり辺りを探っているけど、立体映像がある以外は木々の生い茂る森だ。

ガサリ。

振り返ると恐竜がいた。立体映像ではない実像で首を傾げるような動きをしている。

「「は?」」
同居人と声が重なった。

「君たち、何してるの。ここは立ち入り禁止。どこから来たの?」
恐竜の後ろから警備員のような制服を着た人もやって来た。なんだか、苛立ったような声で私たちを掴むとぐいぐいと立体映像の場所から引きはがされていく。

「どこって、私たちはただハイキングをしてて、道に迷って」
「バカ言ってるんじゃないよ。こんな場所、ハイキングで来るわけ……。君たち、何年生まれ?」
警備員は引きずる動作を緩めて、私たちに聞いた。
「何年って? 西暦のこと?」
「ああ。その時代……という事は、事故か」

ブツブツと何かを呟くと香水のようなものをかけられた。


気が付くと先ほどの立体映像の場所だった。でも、映像がない。
同居人も目を白黒させている。

「あの人、白目がなかった。羽のようなものも生えてた」
警備員の事を言っているのはわかった。あの人は腕に羽毛が生えていた。そして、あの時、巨木があった場所には今は小さな若木が生えていた。

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