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運動指導の未来

人々に運動を提供する方々の希望の未来と運動の可能性

2025年問題。みなさんご存知でしょうか?簡単に言うと、運動を自費指導しているトレーナーや指導者の方に+しかないものです。変わりに習得しなければならない知識や技術が多くなるのも確かです。

2025年を目安に日本の高度経済成長および現状の経済発展を支えてきた団塊世代が後期高齢者(75歳以上)となり(2015年時は前期高齢者)、医療費や社会保障の課題が山積みとなっています。2025年の医療保険給付額は、約54兆円と現状よりも12兆円多くなることが予想されています。
こういった問題を背景に2016年、2018年に医療保険における診療報酬の改正が行われました。また、2020年にも再度改正が行われます。(2018年は介護保険の改正、診療報酬は2年ごとに見直し)
この中で各種リハビリテーションの算定期日が縮小しており、2019年3月31日をもって要介護被保険者の維持期、生活期リハビリテーションが医療保険では行えず全て介護保険にて移行しました。

保険の難しい話になると本筋が見えてこないと思われますので、ざっくりと概要を述べます。

日本は超高齢社会になり医療保険料の増加により国の負担、現役世代の保険料の負担が増加します。

医療保険の縮小。介護保険への移行。高齢者の自己負担。各疾病有病者の自己負担増加。

今まで病院で受けられていたリハビリテーションが受けられなくなる。(各種病院の縮小。病院内での自費施設の立ち上げ。短期間デイケアの立ち上げ)

他施設においてリハビリテーションを行わなければならない。

術後や関節症など、その他今まで当たり前のように病院で理学療法士のリハビリを受けていた人々がフィットネスクラブ、パーソナルトレーニングといった業界に参入してくる。(要介護者は介護施設、通所リハビリなど)

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理学療法士は厚生労働省から認可がおりて医療保険を使用してリハビリテーションを行う国家資格取得者です。そのため、理学療法士は理学療法を医師の指示なしに保険適用なしに行うことができません。(理学療法士で自費施設を立ち上げでる方もおられますが、その中で理学療法を行うことは原則としてタブー。国として大きな問題となっており、その他のトレーニング施設といった名目で立ち上げを行っている現状)
そのため、現存の病院における医師や理学療法士にとって今後の医療保険制度の改革は大きな痛手となるでしょう。


今後、疾患の適切なリハビリテーションを求めている患者様に質の高いリハビリテーションを提供していく、提供していかなければならない人は誰でしょうか?
そうです。トレーナーです。

健康や運動、スポーツに関わり運動指導をする資格↓

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フィットネスジムで働くトレーナー、パーソナルジムを経営しているトレーナー、スポーツを観てきたアスレチックトレーナー。
これらの方々が「運動」というものを対象の状態に合わせて処方できることが求められてきています。


普段は、パーソナルトレーニングをみている筋骨隆々のNSCA-CPTやJATIといったトレーニング資格取得者の方がこぞって解剖学、リハビリテーション、運動器疾患の講習会、学会、セミナーに参加しているのを近頃よく見受けます。彼らのカリキュラムの中には、リハビリテーションや誰かを治すといったことは含まれていません。そのため、今後のニーズに応え(おそらく来られている方は現状で運動器リハビリテーションを必要としている方をクライアントとして抱えている)、知識を蓄えています。これは、とても素晴らしい行動だと思います。時代、世の変革に柔軟に対応して自分の資格の枠組みを超えて知識や技術を蓄えていくことは。

その中で、JSPO-AT、NATA-ATCはアスリートを対象にリハビリテーション、トレーニング、その他コンディショニングを行う専門家です。
理学療法士と比べると遥かに解剖学、治療技術は劣りますが、対象がアスリートであるというだけで障害や外傷を持った人への機能改善を運動によって行うことは間違いありません。
こういったアスレチックトレーナーの方々も結局のところスポーツ現場には仕事がないのが現状、様々なニーズに応え変革を起こしているのが現状です。他のパーソナルトレーニング資格よりも遥かに難解で多種多様な知識を持つある種のコメディカル資格ともいえるアスレチックトレーナーは、今後の世の中においてリハビリテーションを医療保険の枠組みから外れてみることができる最も上級の資格といってもいいのではないかと思っています。

現在、筆者も日本スポーツ協会公認アスレチックトレーナーおよび健康運動指導士を有しており、職場として整形外科での運動療法、パーソナルトレーニング、スポーツ現場と3つを主軸に働いています。老若男女、疾病、疾患問わず運動を処方している現状です。

業界人やスポーツ現場の方々には、アスレチックトレーナーの保有しているとそれなりに価値を認めてもらてます。しかし外に出たら全くの無名資格。「よく患者さんからも何をする人なんですか?」と言われます。
アスレチックトレーナーの資格が日本にできたのが1994年のことです。そこから早25年。どうでしょうか?どれだけアスレチックトレーナーを知っている方がいますか?

なぜここまでATが認知されていないかというと活動の場が狭すぎるから。今でこそ、多様な働き方をするATさんもたくさんいますが、専らATはスポーツ現場にしかいないから。
2020年の東京五輪を目指してATを取り囲む環境も少しずつ変わってきました。東京五輪でアスリートをサポートできる人を増やそうという目的でAT人口が増加傾向にあります。
しかし、知り合いのATの中にも目標として「2020年東京五輪」を掲げる方がかなりいらっしゃることも確かです。僕自身にとっても「2020年」は特別な年になると思います。自分の見た選手が母国開催の五輪で目の前でメダルでも取ろうものならATとしては死んでも本望だなと思えるくらい歓喜と感動を得られると思います。
しかし、2020年後も時代は進み、ATは生きて行きます。その中で2020年はあくまで通過点でしかなく、ゴールではありません。ATが考えなくてはいけないのは2020年以降です。おそらくこの1年、2年はATがメディアに取り上げられることもあり社会的認知も高まるかもしれませんが五輪後は一発屋芸人のように社会から認知されない資格に戻っていくのではと思います。2020年以降、スポーツ現場においてATの雇用にかける費用も大幅にカットされるのでは?と思っています。

この中で、医療保険制度の改正はATおよび人に運動を提供する全ての方に大きなチャンスを与える可能性があります。
2020年以降、運動を提供写真の方が自分の枠組みにしばられず、もっともっと色々な人に価値を提供して、認知を広げられると思っています。それが僕らにとっても世の中にとってもお互いがハッピーになれる道かと思います。

僕自身、スポーツ現場は捨てません。長年の夢であり、やりたかったこと、楽しいことだから。でも、僕らが得てきたもの、持っているものを求めている人、提供を受けて幸せになる人が今後の世の中には五万といます。僕らが動くことで、アスリート以上に治せる人がいる、生活が変わる人がいるのが今後の世の中です。
だから、僕はATやその他トレーニング指導の資格認知を広げる目的かつたくさんの人々を治したいという思いから色々な場所で仕事をしていきたいと思っています。現状でも整形外科での運動療法に加え企業へ健康増進活動のお話にいっています。

現状で運動を処方しているトレーナーの方々。今後の世の中の変動を考慮して働き方改革を行っていくことが重要だと思います。

最後に僕らの追い風となるであろう研究報告を1つあげます。


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2005年にArthrocopyに発表さらたレビュー論文です。

概要を述べると、
股関節痛を訴える300名の患者に股関節関節鏡による検査を行ったところ、その90%が股関節インピンジメント(股関節の骨盤側の受け皿と大腿骨側の骨頭がぶつかることで起こる障害)であったとしています。また、驚くべきごとにその内で「臼蓋形成不全」(もともと先天的に骨盤の受け皿が変形や小さいなどでインピンジメントが起こりやすい形態のこと)を有する者はわずか4%に過ぎないという結果でした。とりわけ股関節痛を訴えるものの中には活動性の高いスポーツ従事者に多い傾向がありました。

ここから言えるのは、
「臼蓋形成不全」のような股関節の形態的問題から荷重ストレスにより容易にインピンジメントが生じるとは限らず、運動においての股関節の「関節運動の使い方」でインピンジメントを回避できる可能性があるということです。むしろ使い方がほとんどでインピンジメントが起こっているということです。

となると運動を処方する私たちの腕の見せ所ではないのだろうか。
そもそも整形外科学とは形が崩れたものを整える学問であり、画像所見によって形の崩れといった器質的な変化の見られない問題には対処しきれていないのかと思います。(スポーツ現場に従事するドクターは筋硬度や筋機能にしっかりと着目していますが)
しかし、私たち運動処方者は形の見えない筋力やインナーマッスルの使い方など身体の質的なものへのアプローチを行います。
上記のような股関節痛への患者へは、既存の整形外科学では原因が掴めないこともある。そのため、筋力や筋機能の身体の質的なものに着目して評価し、適切に運動を処方できる人が必要だと思います。


僕たちのまだまだ知らない所にもたくさんの人々が僕たちを必要としています。
だからこそトレーナー呼ばれる人々や運動を指導する様々な方々が知識、技術をもっともっと蓄えて社会貢献し、社会的地位、認知を高められたらと思います。

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