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ファンクショナルトレーニングの五大原則

ファンクショナルトレーニングとは?

ファンクショナル→機能的

機能的とは、無駄がないこと、効率がよく巧みな動きができること。この場合の機能的はヒトとして本来持つ機能を使いこなしているということになります。

ファンクショナルトレーニングは、人間本来が持つ正しい身体の機能的な動きに則って行われるトレーニングです。

そのため、怪我や障害予防およびそのリハビリテーション、また、人間本来が最も美しいと感じる姿勢や筋の発達を促すためのエクササイズとなります。

ファンクショナルトレーニングの理論はアメリカの理学療法士のGray Cook氏から発信されてきました。(functional movement screen:FMSの発案者)

ファンクショナルトレーニングは以下の五大原則があります。


1.重力(GRAVITY)を利用する
2.分離(DISSOCIATE)と協同(INTEGRATE)
3.運動連鎖(KINETIC CHAIN)
4.3面運動(3DIMENSION MOVEMENT PATTERN)
5.力の吸収(LOADING)と力の発揮(UNLOADING)

この五大原則をベースで押さえることは、トレーニングを行う、指導する上で相手がどんな目的であれ重要です。筋力をつけたい。筋肉を大きくしたい。痩せたい。足を細くしたい。健康的になりたい。姿勢を良くしたい。いまある身体の痛みをなくしたい。スポーツが上手くなりたい...

以下に五大原則について細かく説明していきます。

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(1)重力
ファンクショナルトレーニングには、重力の力を利用して行うことが重要です。重力とは地球が持つ引力と自転による遠心力の合力になります。人は常に重力がかかった状況下で活動をしていますが、それに抵抗しながら自己調節をすることが、より良いパフォーマンスの向上につながっていきます。私たちは地球上にいる限り重力の影響からは逃れられません。重力は私たちの身体を常に地面へ引っ張り続けています。もし重力に対してバランスが取れていないと、その分余計な力を抗重力筋と呼ばれる筋群を使うことで姿勢を保とうとします。このような状態が長く続くと、身体が局所的に固まる、自由に可動しない、ある一定の部位が脆弱するなど、様々な問題を引き起こします。一方で、重力に対して身体のバランスの取り戻していくと、不必要な力みや代償は取り除かれ、結果的に身体の適切な機能状態となります。

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重力に対して、適切な身体バランスを整える中で最も重要な機能が体幹の機能になります。体幹の機能を重力を利用して発育、発達学に則ってトレーニングおよび負荷設定を行うことが、機能的にする上で大変重要です。

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ヒトの身体は、仰臥位(仰向け)は、体幹の機能が入りやすい姿位であり、そのあとに四つ這いなどと続きます。ヒトは発育、発達の段階で筋力を発達させながら上記の姿勢を徐々にとれるようになります。そのため、体幹機能の低下に対しては、発育、発達に則り、仰臥位、うつ伏せ、四つ這い、膝立ち、立位という風に姿勢を変えながらトレーニングをしていくことで、正しい機能を0から獲得していくことが可能となります。


(2)分離と共同(joint by joint)
人体は様々な筋肉や関節があります。それらには適切な動かし方、可動範囲があり、それぞれの役割をもっています。各関節には大きく2つの機能があり、「Mobilty:可動」と「Stability:安定」に分かれます。それぞれどういった機能をもった関節かというと、モビリティの関節は、とにかく大きく可動することが理想の関節、スタビリティ関節は、正常範囲の動きの中で正しく安定して動くことが求められる関節です。


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これらモビリティ関節とスタビリティ関節は、人体において交互に並んでいます。例えば、胸椎はモビリティ、となりの腰椎はスタビリティ、そして股関節はモビリティ、膝関節はスタビリティ、といった具合です。

腰椎と胸椎を例に説明すると、胸椎は骨の構造的に回旋可動域が出やすい関節であり、通常35°はどの回旋をする関節です。対して、腰椎は骨の構造上、回旋する可動域は5°しかありません。

しかし、例えば、デスクワークやスマートフォンの使用などで、いわゆる猫背姿勢が繰り返されると胸の前の筋肉や首、肩の周囲の筋肉が硬くなり、胸の回旋可動域も硬くなってしまいます。そうなると、ヒトの身体は出なくなってしまった胸椎の可動域を出すために他の関節に補わせることをします。このことから、本来は5°しか回旋の可動域を持っていない腰椎が、胸椎が硬くなってしまったことを補うように過剰な5°以上の可動をしてしまうといったことが生じます。

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これがjoint by joint(関節から関節へ)理論です。ある一つの関節の機能的な破綻が次の関節へ、また次の関節へと連鎖し、全身の機能の破綻に繋がり、様々な障害を引き起こすといったものです。

動作時には、これらの各関節がそれぞれの役割を果たし、最終的に協同して働く必要があります。例えば、腰椎の不安定性に対していわゆる体幹のトレーニングだけでは不十分であり、腰椎を安定させながら胸椎を動かすそれぞれの関節を分離して協同させるトレーニングなどが重要です。問題のある部分には、その問題が見られる部分のみをアプローチするというだけではなく、問題のある部分の上下の関節、はたまた、その先の関節の役割を十分に発揮できるように、全身運動の中でトレーニングをしていくことが重要です。


(3)運動連鎖(kinetic chain)
人の動作には、多くの筋肉や関節の可動性が関わっています。その筋肉や関節の動きの連動性がスムーズであることが、身体の正しい姿勢、筋の発達、発揮、またスポーツ動作において重要です。

運動連鎖を示す上でも、関節の連鎖および筋肉、筋膜の連鎖とあります。関節の連鎖と筋、筋膜の運動連鎖二つに分けて説明をしていきます。

ⅰ.関節の運動連鎖

関節の連鎖には、とりわけリハビリテーションの分野で多く使われますが、

OKC(open kinetic chain)開運動連鎖

CKC(closed kinetic chain)閉運動連鎖

上行性運動連鎖

下行性運動連鎖

などがあります。

OKCは、運動をする末端が固定されていない運動であり、単関節運動や単純な関節の動作であることが多いです。(アームカール、レッグエクステンション)

CKCは、運動をする末端が固定されている運動であり、多関節および複雑な関節の動作であることが多いです。(腕立て伏せ、スクワット)

上行性運動連鎖

上行性運動連鎖とは、末端である足関節のアライメント(関節の位置、ポジショニング、運動)が上位の関節の運動、アライメントに影響を与えるかを表したものです。

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下行性運動連鎖

下行性運動連鎖は、骨盤のアライメント(前傾、後傾)が下位の関節の運動、アライメントに影響を与えるかを表したものです。

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これらの関節の運動連鎖をもとに、動作時の不良がトレーニングの際に生じているとき、不良が生じている関節だけでなく、別の関節の動きにも注目し、上位、下位含め、全体の関節運動をみて、修正していくことが重要です。

例えば、ランジ(前方への踏み込み動作)の際に、有名なエラーとしてknee-in(膝が内に入る動作)があります。ただし、knee-in自体も膝関節自体の安定性がないこともしかり、骨盤の前傾による下行性の運動連鎖であったり、はたまた足関節の回内からの上行性の運動連鎖であったりと原因は様々です。それを一つ一つのレップから読み取り正しい修正のためのキューイングが重要となります。

ⅱ.筋筋膜の運動連鎖(Anatomy train)

筋筋膜の運動連鎖を示す有名な理論として、アナトミートレイン(筋筋膜経線)の考えがあります。

アナトミートレインとは、人体の長軸上の筋膜的な接続のことで、接続されている筋膜が動作時に協調して働くとされています。

以下に筋筋膜の主要なライン(繋がり)を示します。

浅層バックライン(superficial back line)

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浅層フロントライン(superficial front line)

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ラテラルライン(lattelal line)

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スパイラルライン(spiral line)

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ファンクショナルライン(functional line)

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深層フロントライン(deapficial front line)

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以上の主要筋筋膜経線は、協同的に働き、それぞれのラインの機能を担っていると言われています。

例えば、ファンクショナルラインの後面で言えば、大臀筋と対側広背筋は腰背筋膜で接続されており、協同的に働きます。そのため、大殿筋のエクササイズの際には、対側広背筋を収縮させながら、もしくはそれぞれの機能である股関節の伸展と肩甲骨の内転などを協同させながら行うことで、それぞれの機能を賦活させつつ、協調性を向上させることができ、日常生活はもとよりスポーツ動作などの人間が持つ「動き」に対して即時転化可能なエクササイズとなります。


(4)3面運動
身体動作は三つの面の運動で成立しています。解剖学的用語では、「矢状面」「前額面」「水平面」です。各関節の運動方向で表すと
・矢状面 → 屈曲、伸展、背屈、底屈、
・前額面 → 側屈、内反、外反、内転、外転、橈屈、尺屈、肩甲骨の上方回旋、下方回旋、挙上、下制
・水平面 → 外旋、内旋、頸部、胸椎回旋、肩甲骨外転、内転、肩関節水平外転、内転

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ヒトの運動は、この三面の運動の複合によって行われています。歩行一つの動作をとっても、矢状面上で股関節の屈曲、伸展、水平面上で胸椎の回旋、肩甲骨の内外転、前額面上で足関節の内外反、肩甲骨の上方回旋、下方回旋など三面の中で様々な関節が動きながら運動を行なっています。そのため、トレーニングの中でもこれらのそれぞれの動きを協調させて取り入れることで、ヒトの身体運動に近い機能的なトレーニングを行うことができます。


(5)力の吸収と力の発散
身体の運動において、効率的に大きな力を発揮する際には、必ず筋肉の伸長と収縮が必要となります。

特にジャンプを行うときをイメージしてもらうと、飛ぶ前に一度軽くしゃがみこんでジャンプすることが多いと思います。そのため日常生活動作やスポーツにおいても強い力を発揮するためには、事前に「タメ」となる動作が重要になります。

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以上がファンクショナルトレーニングの五大原則になります。

トレーニングはもとより、ヒト本来の身体の適切な構造、動かし方を知る上で重要な理論になります。

現場において、たくさんの人々にトレーニングを処方させていただく中で、上記の機能的な要素をないがしろにした重さ重視であったりするトレーニングでは、目的、目標とするボディメイクやスポーツ動作の向上には全くといっていいほど繋がっていかないことを感じます。

極論、重さを全くかけていなくてもまずは機能的な面に着目してトレーニングすることで、目的、目標に近づく上で近道となると思います。(実際に何人もそういった方を見てきています。)

ウェイトトレーニングやボディメイクのトレーニングをしていて、中々結果が出ないという方はまず、身体の機能的な側面に着目して自分の身体を見つめ直すことが重要です。

その上で、重りなどの負荷をかけていくことで、格段に身体の使い方、目的とする筋への刺激、スポーツ動作の向上が見込まれると思います!

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