見出し画像

第15回 海外勢と日本勢の対応力の比較

 こんにちは、Tokiです。今回は以前にも行った海外勢と日本勢の比較・分析を行っていきたいと思います。

Light: 日本の選手は大抵とてもしっかりとしたゲームプランを持ってるんだけど、そのゲームプランが崩れると何をすればいいのか分からなくなっちゃうと思ってる。
Maisterは今のところそのゲームプランを上手く崩してると思う

EE: 対応するのが苦手って事?

Light: そう、俺が思うに–
そうなんじゃないかなって思った

TK: 彼らは2先が好きなんだよ

EE: だからいつもEVOに来てたのか

TK: www

fob様のTwitterより引用

引用:fob

 先日開催されたSummit4にて上記のような日本勢の対応力について触れていたシーンがありました。そこで日本と世界の最上位勢の対応力には数値として違いが出るのかと疑問に思い、簡単ではありますが、日本と世界の最上位勢の対応力を比較・分析をしてみました。

 前回は海外勢と日本勢の防御行動の比較をしていたので、興味のある方はこちらをご覧ください。

分析対象

敬称略
世界
 MkLeo
 Sparg0
 Tweek
 Light
日本
 プロトバナム
 ザクレイ
 てぃー
 しゅーとん

 対応力の比較ということで、世界と日本それぞれの最上位勢の中でもさらにトップ層を比較したほうがいいので、世界最上位勢は以前PGstats.comが投稿した以下のランキングを参考にします。

引用:PGstats.com


 この中でもS+tierである3人と、Summit4にて対応力の話をしていた本人であり、個人的Stierの中で一番好きなLightを世界最上位勢の分析対象とします。
 日本最上位勢は個人的にもベスト4はこの4人だろうと思っていますが、下記のランキングでの上位4人を分析対象とします。

引用:Barnard's Loop

分析方法

 少し長くなりますが分析の前提となる部分ですのでお付き合いください。こんな長いの読んでいられないというのであれば最後に要点はまとめてあるのでそちらだけでも読んでください。

 そもそも対応力の比較・分析とは言うものの、対応力とは何か。対応力と一言で言ってもいろいろあると思います。相手の癖を読む力、相手のやりたい行動を通さない力、相手の行動に回答を見つけ、実行する力等々。それらすべて試合から発見するというのは、自分には到底できないので、数値化するためにも簡略化します。

 まず対応力と言えば、MkLeoのリバース3-0が思いつきました。そこからゲーム5で勝ち切る力が対応力だと仮定して、相手に2セット取られてから逆転勝ちしたセット数をカウントしました。

 例えばMkLeoによくみられる2-0の状態から逆転勝ちした場合、カウント数3。1-2で負けている状態から2連勝した場合カウント数2。2-2の状態で1セット取り切れればカウント数1というようにカウントします。最後のパターンの場合1本ずつ取り合って最後の5セット目で勝つというのと、2-0から2-2に追い込まれてから最後の1本を勝つというのだと、後者の方が対応できていそうではありますが、今回は同じ1としてカウントします。

 このようにして逆転勝ちしたセット数をリバースセット数とし、以下のグラフなどではRSと省略しています。

 また5セットの中では勝ちきれず、一度負けても同じ大会内で再度対戦し、勝った場合も対応できたとし、RS-2としてカウントします。このRS-2は同じ大会内での逆転のみを集計し、別大会でリベンジを果たした場合はRS,RS-2どちらもカウントしません。

 例えばしゅーとんさんとがくとさんが大会ごとに勝ち負けを繰り返していますが、同じ大会内で再度対戦して結果が覆らない限りそれはカウントしません。

 またこれらは対応力を比較するため、3先の試合のみを集計します。2先では対応力よりもそのプレイヤーの調子や、やりたいことを相手にわからせる前にやり切って勝てることがあるためです。今回の趣旨とは異なるので省きます。

 そのため西武撃やマエスマTOPなどでは2先が多いですが、その試合は集計しません。ただしRS-2では2先に負けた相手に3先で勝った場合はRS-2で3としてカウントします。

集計はliquipediaを用いました。

 この中のMajor Tournamentsとなっている大会のSingles Bracketの試合をカウントします。ただし日本は大会数が少なく、日本勢の試合が少なくなったので、EPI2とマエスマオフラインも集計対象としています。
セットカウントがわからないためPoolsの対戦は集計しません。

 この中で一部配信がされていないため、どの順番に勝ったかがわからない場合がありますが、それはRSの振れ幅1~3としてカウントします。(結果しゅーとんさん、Sparg0、Lightにそれぞれ1試合あっただけでしたので、そこまで大きな影響はありません)

まとめると、Liquipediaにある大型大会の本戦及びEPI2、マエスマオフライン内での3先の試合における
1. RS:リバースセット(相手に2セット取られてから逆転勝ちしたセット数)
2. RS-2:一度負けた相手に同一大会内で逆転した場合にとったセット数(基本3)

この2点をカウントして比較します。

リバースセット数

画像1

 こちらはそれぞれの選手のリバースセット数を示したグラフです。青色がRS、黄色がRS-2、赤色の部分は振れ幅です。

 まずはRS、つまり1試合のうちに逆転勝ちできたセット数について見ていきます。RSを見るとTweekを除いた3人の海外勢のリバースセット数が日本勢よりも圧倒的に多いのがわかります。日本勢で一番RSの多いバナムさんですら3人には及びません。このグラフだけを見ても海外勢の対応力の高さがよくわかります。

 続いて黄色のRS-2、つまり大会全体で逆転したセット数を見ていきます。RS-2を見ると日本勢は海外勢より大会全体での逆転する力はあるようでしたが、MkLeoはそれをさらに凌駕するセット数がありました。

 このグラフを見て、日本勢と海外勢との差があまりにも大きいと思うかもしれません。実際のところは海外大会の数が日本の大会よりも多く、さらに配信の数なども多いため、海外勢の試合数のほうが多くなっています。

勝ち試合数

 こちらは集計した試合のうちの勝ち試合の数をグラフにしたものです。
 RSの多かったMkLeoやSparg0の勝ち試合数が他の選手よりもかなり多く、この二人のRSも当然多くなります。
 そこで最も試合数の多いMkLeoの試合数に他の人も合わせる補正係数をかけます。
 例えばMkLeoが30戦しててバナムさんが15戦であればバナムさんのRSやRS-2を2倍してやるという単純なものです。

画像3

 こちらは補正したグラフです。
 これを見ると、補正したとしてもなおTweekを除いた海外勢のRSが日本勢よりも多いです。Lightは補正係数が大きいため補正の影響を受けていますが、少ない勝ち試合の中でもゲーム5を何度も勝ち切っているため、もっともRS数が高くなっています。同じくらいの補正係数であるしゅーとんさんの倍以上のRS数となっており、Lightの対応力の高さがわかります。

 Sparg0はMkLeoとほとんど試合数も変わらないため補正の影響は小さいですが、MkLeoよりも多いRS数を誇り、Sparg0はMkLeoにも負けない対応力を持っている可能性があると、このグラフを見るだけでも推測できます。

 RS-2を含めた全体で見ると海外勢には及ばないものの、補正前のグラフを見た時よりは日本勢と海外勢で対応力の差は小さくなりましたが、なお海外勢の対応力の高さがわかります。

考察

 今回対応力の比較をしてきましたが、今回のグラフを見てTweekには対応力はないのかと言われると実際そうではないでしょうし、日本勢は対応力が低いとは言い切れないと思います。そもそも対応力のない人間がここまで勝つことはできないでしょう。

 これはこの分析方法の限界で、別の方法でないとTweekの対応力の高さを数値化することはできないということもわかりました。

 今回ゲーム5で勝ち切るという点に注目しているので、Tweekはゲーム5にそもそもならなかったり、ゲーム5で勝つのが苦手なのかもしれません。

 またMkLeoとSparg0を比較するとリバース3-0をした回数がMkLeoは6回あり、Sparg0は2回とかなり差がありました。Sparg0は2-1や2-2で勝つ試合が多く、ゲーム5になった試合数がMkLeoの1.5倍多かったです。
 以上のことより、RSはSparg0のほうが大きいですが、対応力として考えると一概にSparg0のほうが優れているとは言えない可能性もあります。

 今回LightのRSが一番多くなっていましたが、試合数が一番少なく補正の影響を強く受けているので、この結果からLightの対応力が一番高いとも言い切れません。もちろんLightの対応力自体は高く、少ない試合数で多くのゲーム5に勝っていることは間違いありません。

 今回の分析の中でRSに日本勢と海外勢で差があるのは明確でした。このことより日本勢と海外勢で対応力に差はあるのかもしれません。ただしRS-2を含めてみるとその差は小さくなっていることから、じっくり落ち着いて考えて対策すれば日本勢も海外勢に負けないのかもしれません。またRSでは明らかに差があることからも試合という短い時間の中で対応する早さが日本勢と海外勢との差であると推測されます。

 このような結果となった理由として、日本は大型大会以外では2先が多く、一部の大型大会終盤じゃないと3先にならないということもあります。(マエスマTOPなど)
 海外では3先が主流であることから対応力が海外では培われ、逆に日本では2先が多いため対応力よりも一気に相手に勝ち切る力が日本勢では培われたのではないかと推測されます。

 余談になりますがつい先日Summit4の振り返りをしたバナムさんが海外勢の対応力について触れていたので、バナムさんの動画が投稿されたらそちらを見るとより詳しくわかるかと思われます。
※2022年3月30日追記
バナムさんが対応力に関する動画を投稿していました。実はこちらの内容を配信で聞いて、参考にしていました。見ていない方は是非ご覧ください。

まとめ

 今回2-0から逆転勝ちした時に獲得したセット数から世界と日本の最上位勢の対応力を比較しました。その結果RSは海外勢が多く、RS-2を含めてカウントすると差は小さくなっていました。

 このことより
1.じっくり時間をかけて対策を考えるなどすれば日本と世界の最上位勢の差は小さくなる。
2.試合という短い時間の中で対応する力、対応の早さに日本勢と海外勢との差があると思われる。

 これらは日本と海外の大会の形式の違いによって生じたのではないかと推測されます。

終わりに

 今回は海外勢と日本勢の対応力を比較して見ました。今回文章化するのに時間がかかり、自分の考えをうまくまとめられませんでしたが、やってみたかったことをグラフ化はできたのでよしとします。ここはこうじゃないかというような意見などがありましたら、コメントなどで補足していただけると助かります。次回の分析については未定です。
 
 Twitterやnoteでの反応はとても励みになりますので、気軽に反応していただけると嬉しいです!

 ここまで見てくださってありがとうございました。よければ今後も最上位勢の分析を行っていく予定なのでフォローをしてくださるとうれしいです。また、何か質問やリクエスト、さらなる分析・考察がありましたらコメントをくれるとありがたいです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?