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【拙訳】『イニストラード:真夜中の狩り』ドラフトガイド by Anze Mlakar(from CARD GAME BASE)

 さあ、狩りの時間だ――

 というわけで無事MTGO、MTGAで『イニストラード:真夜中の狩り』が実装されました。今回もいろいろとドラフトガイドを探してみましたが、やっぱりCARD GAME BASEさんのガイドが一番詳しかった(しかも実装後に微修正済!)のため、翻訳を試みました。

(↓原文はこちら↓)

 前回よりさらに長くなっていて、相当な分量ですが、アーキタイプ別にかなり詳しく書かれていますので、皆さんのドラフトの一助になれば幸いです。
(決して回し者ではありませんが、これだけの内容を届けてくれるショップさんは他になかなかないので、できればカード注文もぜひCARD GAME BASEさんから海外通販してください……。今回は末尾の宣伝部分もしっかり訳してあります、参考までに。)

※今回はなんと約25,000字の長文です。閲覧の際はご注意ください。
※前回同様、全文無料で公開していますが、作業にかなりの労力がかかっており、皆さまからの投げ銭(記事購入)によるご支援、またはエントリ末尾からのサポートをいただけると大変励みになります。ぜひよろしくお願い申し上げます。
(ご支援の結果によって、今後のコンテンツ公開方針(有料化など)を検討していきたいと思います。何卒ご了承ください) 

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Innistrad: Midnight Hunt Draft Guide
September 15, 2021 by A. Mlakar

 『イニストラード:真夜中の狩り』ドラフトガイドへようこそ! 旧イニストラード環境は楽しいドラフト環境を提供してくれましたが、今回もその期待に応えてくれそうですね。せっかくなら負けるより勝って楽しみたいところですよね。本稿がその一助になれればと思っています。

 まずは環境の全体像を探っていきます。いつものように、メカニズムがどのように環境に影響を及ぼすのかから考察していきます。そして、各色のベストコモンを列挙していきます。

 その後、ドラフト時に相対するであろうアーキタイプ別の解説を行っていきます。特定のアーキタイプで中核を担うであろうアンコモンについても言及します。アーキタイプ別のパワーランキングも作成しました。

 最後に、いくつか追加で環境のコツを話し、本稿を締めくくります(この内容が役立つことを願っています)。

 とまぁ、話すべきことは山ほどあるので、早速始めていきましょう。イニストラードのメカニズムを掘り下げることで、ゾンビや吸血鬼、狼男、その他の恐るべき怪物達の世界に迫っていきましょう。

1.『真夜中の狩り』のメカニズム

 メカニズムは複数あり、頻繁に遭遇するものもあれば、そうでないものもあります。次に列挙します:

(1)フラッシュバック
(2)降霊
(3)昼と夜
(4)その他の変身カード
(5)集会
(6)腐乱
(7)調査

 すべてが小難しいメカニズムというわけではありませんが、基礎的な知識を持っておくことは重要で、無用な間違いを起こしづらくなります。決して損にはなりません。

(1)フラッシュバック

 フラッシュバックは一部のインスタントとソーサリーに書かれている能力です。カードに「フラッシュバック 〇〇」(〇〇はコスト)と書かれていれば、墓地からそのカードを唱えることができます(その後そのカードは追放されます)。

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 《蟻の隆盛》を見てみましょう。手札から6マナで唱えて3/3トークン2体と2点のライフを得た後、さらに墓地から8マナで唱えて、さらに2体のトークンと2点のライフを得ることができるのです。(カードは追放されます)

 留意すべきは、最初に手札から唱える必要はない、という点です。《蟻の隆盛》を手札から捨てる、あるいはライブラリーを切削して墓地に送り込むことができます。とはいえ深く考えずとも、通常、フラッシュバックは2体1交換を生み出し得るカードなのです。

 フラッシュバックのカードが多ければ多いほど、自分のライブラリーを切削するうまみが出るのです。もちろん、相手の墓地のカードを追放する効果も、相手のフラッシュバックを防ぐことができるため、普段より価値が高まります。

 フラッシュバックを持つカードは38枚、すべての色に存在しますが、ほとんどは青と緑に含まれます。青緑はフラッシュバックがテーマに設定されています。

(2)降霊

 降霊はフラッシュバックに近い能力ですが、クリーチャーにしか書かれていません。要するに、降霊を持つクリーチャーは、降霊コストを支払うことで墓地から唱えることができます。その際、変身した状態で戦場に出るのです。

 すべての降霊持ちは裏面がスピリットで、墓地に置かれる代わりに追放される能力を持っています。

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 例えば、普段通り《哀悼の巡回兵》を3マナでプレイし、後に4マナでプレイし直して2/1警戒・飛行を手に入れることができます。繰り返しになりますが、簡単に2体1交換が生み出せるカードなのです。

 これも繰り返しになりますが、クリーチャー・カードがどのようにして墓地に置かれたかは問われないので、降霊クリーチャーが多数いるなら、自身のライブラリーを切削することもアドバンテージになり得るでしょう。

 降霊持ちは12枚です。黒の《思慮深き巾着切り》以外は青と白で、おのずと白青デッキは降霊がテーマになります。詳しくはアーキタイプの項で。

(3)昼と夜

 このセットで一番複雑なメカニズムなので、少しの間座学に付き合ってください(耐えられなくなったら「狼になっていい?」と尋ねること!)。

・~一日の始まり~

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 昼と夜はMtGのゲーム内で指定されます。ゲーム開始時は昼でも夜でもありません。戦場に出た際に昼か夜かをチェックするカードは、主に2種類存在します。

・「日暮」を持つカード(《酒場の悪漢》など)
・具体的に昼や夜が明記されているカード(《偏執的な天文学者》など)

 いずれのケースにおいても、最初は昼になります(稀に日暮のカードが戦場に出る際に夜になることがありますが、ドラフトではまず起こりえないでしょう。一番起こり得るのは《不自然な月の出》を唱えたときでしょう)。

・~昼になる/夜になる~

 その後、プレイヤーが自分のターン中に呪文を唱えなければ、昼が夜になります。

 一方で、プレイヤーが自分のターン中に少なくとも2つの呪文を唱えたなら、夜が昼になります。

・~効果~

 では、昼になったり夜になったりすることで、何が起こるのでしょうか? 昼になると、すべての「日暮」パーマネントが昼面(表面)になります。

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 昼が夜になれば、すべての日暮パーマネントは夜面(裏面)になります。加えて重要なのが、夜の間は日暮パーマネントがすべて裏面で戦場に出るということです。

 このメカニズムは主に狼男に使用されるメカニズムであり、通常、夜の面のほうが能力的に優れています。しかし、《材料収集家》のように、昼と夜が繰り返されることで利益を得られるカードもあります。

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・~ドラフトでは何を意味するのか~

 さて、これはドラフトにおいて何を意味するのでしょうか? 狼男を含むデッキをプレイするなら、通常よりも瞬速持ち、インスタント、起動型能力の価値が高くなります。狼男を変身させるために、呪文をプレイせずに自分のターンをパスしたいことがあるためです。しかし、せっかくであればマナの使い道を用意したいところです。対戦相手に行動できればマナは無駄にはなりません。

 昼から夜に変えたいデッキと対戦するなら、2つの呪文を唱えることが大切になるので、《考慮》のようなカードは重宝します。対戦相手の大きな狼を小さな狼男に変えることができます。

 さらに、夜の間ではさらに強力になるカードもあります(《オリヴィアの真夜中の待ち伏せ》が良い例です)。念のため記しておくと、対戦相手が日暮持ちを入れている可能性は十分にあり、自分で日暮カードを使う必要は必ずしもない、ということに留意しましょう。

(4)その他の変身カード

 昼/夜カードや降霊クリーチャーの他にも、様々な方法で変身するカードもあります。フォーマット全体に特別な影響を与えるものではないので、最近のプレイヤーが混乱するほどではありませんが、言及しておきます。

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 例えば《有頂天の呼び覚ます者》は3マナと他のクリーチャー1体の生け贄で変身します。カード1枚と4/4が手に入れられるのです。

(5)集会

 集会はキーワード能力で、集会持ちカードはそれぞれパワーの異なる3体以上のクリーチャーをコントロールすることでカードの能力が向上します。

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 《蝋燭林の魔女》は戦闘開始時、3体以上のパワーの異なるクリーチャーがいれば、飛行を得ることができます。もちろん、このクリーチャー自身も1体としてカウントされます。

 ほとんどの集会はごくわずかな効果でしかないので、このメカニズム達成のために無理をする必要はありません。特定のパワーがデッキにいないからといって、質の悪いクリーチャーに頼るようでは本末転倒です。

 それでも、同程度のカードパワーのクリーチャーのうち、どちらを採用するか迷ったときには、タイブレーク要素としてパワーの値を参照することはあるでしょう。その場合には、デッキの中に少ないパワーを持つクリーチャーを採用することになるでしょう。

 集会持ちは16枚、それらはすべて緑か白に含まれています。集会について詳しく知りたいなら、リンク先を参照してください。

(6)腐乱持ちゾンビ

 『真夜中の狩り』ドラフトにおいて、腐乱を持った2/2ゾンビトークンを見ることがあるでしょう。これらのトークンはブロックできず、攻撃すると戦闘終了時に生け贄に捧げられます。これは1回限りのアタッカー、あるいは生け贄要員として活用することができます。

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 トークンを過大評価すべきではありません。普通の1/1トークンよりも価値は低いでしょう。そのため、腐乱持ちトークン生成効果を持つカードは、その能力を除いたものとして評価するのが適当でしょう。もちろん、生け贄にする様々な方法、あるいは大量の強化手段があるのであれば話は別です。ゾンビによる攻撃がより意味のあるものになるからです。

 腐乱持ちトークンを生み出すカードは14枚ありますが、(《グール呼びの収穫》を除き)すべてが黒か青に属しています。青黒はこれらのトークンを生かしてアドバンテージを獲得していくアーキタイプになります。

(7)調査

 このセットで「調査」と書かれたカードは5枚、そのうちコモンは1枚です。なので、この能力が環境に与える影響はほとんどありませんが、最近MtGを始めたプレイヤーのために記しておきます。

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 調査を行うと、「手がかり」トークンが得られます。2マナ支払ってトークンを生け贄に捧げると、1枚カードを引けます。要するに、タイミングをずらしてカードを引く効果です。

 さて、メカニズムについては以上です。次に行きましょう。

2.『真夜中の狩り』ベストコモン

 デッキの大部分はコモンで構成され、ドラフトでよく見るカードになるため、コモンを把握することは非常に重要です。各色それぞれでベストなカードを見ていきましょう。

 セット内でのカード評価が必要であれば、ドラフトティアリストを確認する方法もあります。

■白

1.《ガヴォニーの銀鍛冶師/Gavony Silversmith》

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 《ガヴォニーの銀鍛冶師》は最低でも4マナ3/4で、悪くはありませんが驚くほどでもありません。しかし、2マナ域、3マナ域と展開していくデッキにとっては最高の4マナ域になります。2体を一気に強化でき、対戦相手は一気に不利になるでしょう。

 もっとも多くの場合、このクリーチャーと他1体を強化することになるでしょう。通常突破できない戦線をこじ開けることもできるでしょう。環境の飛行戦力(降霊持ちも含む)は、カウンターを1個置くだけで見違えるように強いクリーチャーになります。

 実質的には4マナ4/5であり、そのうち2点分は速攻持ちとしてカウントできます。後続でこのカードを強化することもできるため、複数引いても全然OKです。なんて素晴らしいカードでしょう!

2.《捜索隊の隊長/Search Party Captain》

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 (ベストコモン2位は)カードを引けるクリーチャーが収まる定位置のようですね。スタッツがコストに見合っていればほとんどの場合素晴らしいカードです。このカードについては、コストを2Wに減らすことが最低要件だと思います。マナカーブ通りに展開できるデッキなら、そこまで難しいことではないでしょう。

 通常の想定では、2マナ域をプレイして攻撃、そして《隊長》を繰り出して1ドロー、が理想です。パーフェクトですね。

 《隊長》のコストが1~2マナに減ることもあります。プレイされた側はたまったものではありません。4マナ支払ったとしても及第点であり、4マナでしかプレイできない=世界の終わり、ではありません。

 ここまでを考慮した際、白いデッキには複数枚入れたくなるカードです。デッキがアグロ志向になるほど価値が高くなるということを念頭に置いてください。

3. 《蝋燭罠/Candletrap》

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 この手の《平和な心》効果は評価に迷うカードです。このカードは対戦相手のクリーチャーを実質的に0/X防衛にする、と書かれています。ブロックは可能ですが、少なくとも何かと相打ちになることはありません。

 集会能力もあり、エンチャント先を追放することも可能です。常に使える能力ではありませんが、良い選択肢を持っていることは良いことでしょう。

 この手のエンチャントとしては弱めですが、1マナなので1ターンに2回呪文を唱えることも簡単です(プレイのテンポが素晴らしいだけでなく、この環境では夜を昼に変えることができることが大きいのです)。

 ほとんどの白いデッキでプレイしたいカードですが、コントロールに寄せたデッキ、あるいは地上のブロッカーを気にしない、飛行戦力の充実したデッキによくフィットします。

次点

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 飛行でいえば、《魂標グリフ》は信頼のおける大型飛行戦力です。カードを追放する能力もほぼすべての対戦相手に役立つでしょう。そうした機会のうちいくつかは、ほぼ1ドローと同じぐらいの価値があるでしょう。いずれにしても、2枚程度はプレイしたくなるカードです。

 《日金の連射》はこの類の効果にしてはマナコストが安めです。当然使い勝手は良くなります。すべてのクリーチャーのうち3分の1(50/150)を倒すことができますが、対象に取るのは往々にして大型生物、つまり最も対処したいクリーチャーです。対戦相手の強化に合わせれば小型クリーチャーも対処できます。とはいえ、そんな機会を狙いすぎるのも考え物です。デッキに入れるのは1枚まででしょう。

 《祝福された反抗》は1マナで飛んでくるコンバットトリックです。相打ちしつつ大量のライフ差をつけられ、攻防に役立つ1/1飛行まで付いてきます。

 《ガヴォニーの罠師》を軽視しないことです。この手のクリーチャーは見た目以上の働きをしてくれます。

 白はこれ以外にも優秀なコモンのクリーチャーに恵まれていますが、《哀悼の巡回兵》は2枚分のクリーチャーとしてよく働いてくれます。《聖戦士の奇襲兵》は対戦相手の意表を突きやすく、さらには緊急時にエンチャントやアーティファクトに対処することもできます。

 最後に、《スレイベンの除霊》について述べておきましょう。とてもいい、というよりは、過大評価されがちな1枚だからです。セットにはスピリットが20枚(降霊カードを含みます)、18のエンチャントがあり、ほとんどすべてのスピリットが白か青です。これは、対戦相手によっては対象に取るカードが全くないことがままあることを意味します。そのため、このカードの居場所は基本的にサイドボードになるでしょう。

■青

1. 《臓器の貯め込み屋/Organ Hoarder》

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 いつも話している通り、戦場に出た時にカードが引けるクリーチャーは、スタッツが並以上ならいつも優秀です。4マナ3/2の戦場に与える影響は少なくないため、《臓器の貯め込み屋》は合格です。

 しかし、彼は単なるドローに留まらず、なんとライブラリーの上3枚から好きなカードを手札に加えられるのです! それだけで終わらず、残りのカードを墓地に置いてくれるのです。もしその中にフラッシュバックや降霊持ちがあれば、1ドロー以上のアドバンテージを見出してくれます。

 かき集められるだけかき集めればその分働いてくれるので、『真夜中の狩り』ドラフトでは青の中心となるカードになるでしょう。

2. 《突風漂い/Galledrifter》

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 4マナ3/2飛行は非常に優秀で、さらにゲーム後半で2/2飛行で戻ってくるという、優秀なクリーチャー2枚分として働いてくれます。

 対戦相手からすれば、ダメージを稼げる飛行クリーチャーは看過できません。地上をうまく抑えることができれば、このヒポグリフがゲームを終わらせてくれるでしょう。

3. 《墓地への幽閉/Locked in the Cemetery》

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 この手の効果が2マナというのは安めです。確かに、5枚以上のカードが墓地にあるときの働きには目を見張るものがありますが、今回の青は切削効果も多いため、長いゲームにおいては十分に力を発揮してくれるでしょう。

 ゲーム序盤のクリーチャーはサイズが小さいので、閉じ込める前に一度攻撃を受ける余裕は十分にあります。《墓地への幽閉》は青いデッキ必携の1枚になるでしょう。

次点

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 《溺墓の融合体》は信頼できるスタッツを持つ5マナ域です。3/6はブロッカーとして最適ですが、更に2つのちょっとした、しかし役立つ能力を持っています。まず3枚の切削能力(対戦相手を対象に取れるので、ロングゲームの際に有効になるかもしれません)は、降霊やフラッシュバックを探し出すのに有効で、《墓地への幽閉》の強化にも役立ちます。ブロックされない能力は、ロングゲームを制してくれます。いろいろな能力が一つにまとまった素晴らしいコモンです。

 《嵐乗りの精霊》は何度も違う名前で見たことがあるカードです(面白い事実ですが、5マナの瞬速・飛行持ちは5種類存在します)。最低限プレイアブルであり、それはこの環境でも変わりません。小型アタッカーを打ち取り、そのまま攻撃に転じる展開が理想です。対戦相手の昼/夜プランの対抗策としても有用です。

 軽量のバウンスは、適切なタイミングを選べば非常に効果的です。最近のバウンスのうちいくつかは、自分のパーマネントを対象に取れないので、あまり使い勝手は良くありません。しかし、《霊波》の場合は話が別です。自分のパーマネントを戻した場合はカードを引くことができるので、様々な使い方ができます。降霊クリーチャーを手札に戻すことができれば、ドローに加えて降霊を「もう一度」使うことができるのです。

 《考慮》はすべての青いデッキに入れたい1枚です。セット内の様々なカードとのシナジーが期待できます(フラッシュバック、降霊、インスタントとソーサリー関連、などなど)。

 最後に、《鍵の秘密》はガス欠に陥らないために非常に有効なカードです。

■黒

1. 《窓からの放り投げ/Defenestrate》

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 セット内には150体のクリーチャーがいて、そのうち38体が飛行持ちです(降霊後の裏面を含む)。それでも、《窓からの放り投げ》は112体のクリーチャー(74.4%)に対処できます。

 たった3マナで、4分の3のクリーチャーに「インスタントタイミングで」対処できるのです。これ以上の効率的な除去はありません。

 当然、飛行に対抗できる手段を別立てで用意しておくことも必要です。とはいえ、肩を落とす必要はありません。次のカードが飛行持ちに有効です。

2. 《オリヴィアの真夜中の待ち伏せ/Olivia's Midnight Ambush》

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 とりあえず夜であるなら云々はいったん考えず、このカードを評価しましょう。インスタントタイミングでの-2/-2修正は、この環境の約半数(48.7%)を倒すことができます。悪くない数字です。

 夜はボーナスが働き、すべてのクリーチャーを倒すことができます。しかし、このカードをうまく使うために昼/夜メカニズムを考慮する必要はなく、そのまま使っても十分な効果を発揮してくれます。対戦相手が昼/夜メカニズムを使ってくるなら好都合、相手が夜になるように動くなら、こちらの利益を生み出してくれるのです。

3. 《戦墓の大群/Diregraf Horde》

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 《戦墓の大群》は後ほど紹介するような黒のカードの餌になります。また、相手の墓地を荒らすこともでき、このようなセットでは非常に強力です。全体として、このカードは非常に多くのものを得ることができ、入手できた分だけプレイしたいと思うようになるでしょう。

 ドラフト環境理解が進むにつれ、状況を見極めることができれば、より上位に食い込むことも見込まれます。

次点

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 《踊り食い》は分割カードのような性質を持ち、5マナで打てる確定追放除去、そして1マナとクリーチャーを生け贄にして打てる軽量除去という2つのモードを持ちます。この手のカードはそれぞれ片方だけのカードよりも十分に優れていて、柔軟な選択肢を与えてくれるのです。

 《モークラットのビヒモス》《有頂天の呼び覚ます者》はどちらも生け贄シナジーがあってこそ真価を発揮します。前者はマナコストからすると破格のスタッツを誇るクリーチャーで、後者はデッキに柔軟性を与えてくれる生物です。除去に合わせたり、腐乱持ちゾンビトークンを生け贄に捧げて能力を起動することで、カードを1枚引きながら4/4を生み出すことができる、強力な動きが可能です。

 《尊大な無法者》は《吸血鬼の落とし子》同様優秀で、特にアグロデッキでこそ輝くカードです。

 最後に《不審な旅行者》についても触れておきます。3マナ域として普通に優秀ですが、昼/夜メカニズムを自ら呼び込むことができるので、《オリヴィアの真夜中の待ち伏せ》を能動的にパワーアップさせることができます。

■赤

1. 《月の憤怒獣の切りつけ/Moonrager's Slash》

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 インスタントの3マナ3点はいつでも優秀で、夜になれば《稲妻》同等の効率になる恐ろしいスペルですが、そうでなくても十分強力です。特に昼/夜シナジーは意識せず使っていけます。

 いずれにしても優秀なカードで、ドラフトでは早めに消えることが予想されます。対戦相手に打ち込んでゲームを終わらせることができることを忘れないでください。

2. 《炎の供儀/Immolation》

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 《オリヴィアの真夜中の待ち伏せ》同様、環境の約半数(48.7%)のクリーチャーを倒すことができます。一番の違いは、永久的な修正のため、コンバットトリックで防ぐことができない、という点です。

 稀に自身のクリーチャーを強化することもあるでしょう。《魂標グリフ》のようにブロックしづらいクリーチャーに貼ることが多いでしょう。

3. 《忌み者の火刑/Burn the Accursed》 

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 5マナは重いですが、5点は強力。環境の143体(95.3%)を葬ることができます。コントローラーへの2点も決して軽視はできません。対戦相手の最大のブロッカーを排除すれば攻撃に転じることができ、追加のダメージが期待できるからです。

 デッキに多く入れるほどではありませんが、2枚までは許容範囲でしょう。

次点

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 《飢えた餌あさり》はとても興味深い1枚です。3マナのルーティング能力は、ゲーム後半のマナフラッド防止を約束してくれます。対戦相手にダメージを与えることができれば、プレイしたターンに3マナを取り戻すことができ、爆発的な展開を可能にします。複数枚プレイしたいカードではありますが、アグロ戦略にフィットすることを忘れないでください。

 《献身的な精霊術士》はデッキの素晴らしい戦力となり得ますが、デッキに入れる際は、異なるコストのインスタントとソーサリーのバリエーションが重要になります。なぜでしょうか? この類のカードは、選択肢が多いほど便利になるからです。戦場に影響を与える軽量カードを選ぶこともあれば、次のターンに優位を引き寄せる重量級呪文を選ぶこともあるでしょう。

 赤のコンバットトリックは通常、守りに使うには難があります。しかし今回の《盗まれた活力》は新鮮な1枚です(決して斬新なイラストレーションを指摘しているのではありませんよ!)。攻撃の場合はトランプルでの貫通ダメージを、防御の場合は先制攻撃で返り討ちを狙えます。パワーの修正値も高く、赤いデッキで複数枚をプレイすることも十分あり得るでしょう。

 《硫黄の蛮人》はアグロデッキにフィットする1枚で、ブロックが難しい上、ロングゲームで追加のダメ―ジを稼ぎ出してくれます。

■緑

1. 《支配を掛けた決闘/Duel for Dominance》

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 近年の格闘スペルは大体が素晴らしい性能ですが、セットごとに異なる変更が加えられているので、このカードがどれほど優れているかを見ていきましょう。

 集会が機能しなくても、インスタントの2マナ格闘が可能で、非常に効率的です。強化はされませんが、このセットの緑のクリーチャーはかなり頑丈なので、問題になることは少ないでしょう。

 時折、集会能力が機能して+1/+1カウンターを得ることができます。この強化によって集会能力が機能しやすくなり、集会カードの使い勝手がさらによくなるでしょう。

 この種のカードは「空振り」を避けるため、キャストするタイミングは慎重に選びましょう(相手がマナをオープンにしてきたタイミングでの使用は控えるべきです)。さらに言うと、次のカードのように、格闘に向いている効率的なクリーチャーの採用が重要です。

2. 《影野獣の目撃/Shadowbeast Sighting》

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 4マナ4/4はいいレシオで、さらに7マナで追加の4/4を得られます。シンプルかつ素晴らしいデザインで、2枚分の働きをする効率的なカードになっています。

 2枚以上入れても問題ありませんが、その場合は後半のゲームを見越して、土地を18枚にすることを検討してもよいでしょう。

3. 《狩りの遠吠え/Howl of the Hunt》

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 普段のオーラではなく、コンバットトリックとして使っていける1枚です。戦闘に一方的に勝利するだけでなく、その後の巨大なサイズの生物が相手の脅威として立ちはだかります。

 ドラフトの環境理解が進むにつれ、プレイヤーがこのカードの存在を意識し始めると、このカードの価値は下がるので、この記事も更新されます。

 狼男デッキにもフィットする1枚で、ターンをパスしてこちらの戦力を増強しながら、対戦相手のターンに唱えることでアンタップ効果をうまく使い奇襲することも可能です。

次点

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 《蝋燭明かりの騎兵》《不屈の運び屋》はこのセットの大型コモンクリーチャーです。緑をやるなら2枚以上は確保したいところです。パワーレベル的には非常に近く、どちらを優先するかは重要ではありません。

 ドラフト環境では、レアや神話レアをタッチした5色デッキをプレイする機会もあり得ます。この閑居うで成立するかどうかは未知数ですが、成立する場合は《ドーンハルトの再生者》《収穫祭への道》が重要なカードになります。

 《鳥の称賛者》は優秀な3マナ域です。1/4到達でスタートし、守りを固めてくれます。そしてひとたび夜になれば3/5と盤面で存在感を発揮してくれます。

 集会が達成できていれば、《旧き道の力》は優秀なコンバットトリックです。

■アーティファクト

 アーキタイプの話をする前に、見逃されがちな1枚に触れておきましょう。

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 このようなカードの類例はいままでいくつもありましたが、大概にして重めでした。このカードも額面並みのコストですが、他の除去が十分確保できなければ、とりあえず入れておいて損はありません。大型の狼男に対処できることもあるでしょう。

3.『真夜中の狩り』アーキタイプ

 さて、次はアーキタイプを探っていきます。2色の組み合わせは10通りで、どのアーキタイプでもタッチカラーをすること自体は可能です。もっとも簡単な方法は(メインカラーが)緑のデッキを使用することですが、本稿では純正2色の組み合わせだけに焦点を当てていきます。

(1)白黒:生け贄

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 生け贄デッキは3種の要素が必要になります:

・サクリ台(アドバンテージのために生物を生け贄に捧げるカード)
・生け贄要員(大きな損失なく生け贄にできる生物)
・見返り(生け贄に対して報酬を与えるカード)

 いくつかのカードは複数の役割を担うことがあります。たとえば《肉削ぎ屋》はサクリ台と見返りを同時に担います。このアーキタイプではこうしたカードが非常に重要になります。

・サクリ台

 このセットのサクリ台の多くは1回きりの使用になります。

・《忘却の儀式/Rite of Oblivion》
・《モークラットのビヒモス/Morkrut Behemoth》
・《踊り食い/Eaten Alive》
・《有頂天の呼び覚ます者/Ecstatic Awakener》

・生け贄要因

 生け贄に捧げる「最適な」クリーチャーは、腐乱持ちのゾンビ・トークンです。

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 ゾンビたちを生成するカードは複数ありますが、《戦墓の大群》《腐敗した再会》《グールの行進》あたりが最適です。最初の2枚は2体を生み出してくれますし、後者は繰り返し使用することができます。

 他のカードも、例えば《新米密教信者》あたりはよく働いてくれます。

・見返り

 《肉削ぎ屋》を除き、良い順に並べてみました。

・《オドリックの先導/Odric's Outrider》
・《病的な日和見主義者/Morbid Opportunist》
・《先立たれた生存者/Bereaved Survivor》
・《戦慄の猟犬/Dreadhound》
・《物騒な群衆/Unruly Mob》

 このうち4枚は死亡時誘発能力のため、腐乱持ちのゾンビで攻撃するだけでも戦闘終了時に誘発することを忘れないようにしましょう。

 デッキをうまく仕立てるには、これらの要素をすべてうまく組み合わせる必要があります。プレイは難しいですが、一度慣れればやりがいのあるデッキに仕上がるはずです。白黒の生け贄デッキは概してアグレッシブなデッキになり、《希望の儀式》がフィットする1枚になるでしょう。

(2)青黒:ゾンビ/生け贄

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 「生け贄」シナジーのコインの表側を白黒とするなら、裏側は青黒です。そもそも黒のカードの性能が高いため、青黒も十分強力なデッキになるのです。ここでは青が加わる事で何が起こるかを見ていきましょう。

 ほとんどの場合、腐乱ゾンビを生み出す優秀なカードを使用することができます。

《異形の隼/Falcon Abomination》
《回路切り替え/Flip the Switch》
《驚愕/Startle》

 青黒は《生体解剖/Vivisection》にアクセスできるのも素晴らしいことで、トークンを大量のカードアドバンテージに変換できます。トークンはブロックに回すことはできませんが、《スカーブの世話人》のコストに回すことで防御にも使えます。《包囲ゾンビ》も同様で、ゆっくりではありますがじわじわとダメージを与えることができます。

 さらに、《継ぎ接ぎ死体》によって、役に立たないトークンを強力なクリーチャーに変換することができます。インスタントである点も素晴らしく、相手の除去に対応して仕掛けることができます。

 白と比べると、明確なシナジーが薄いため、よりコントロール色の強い形になり、ちょっと不格好になりがちです。ただし、しっかりと構築できれば、確実にゲームに勝つことができるデッキが出来上がるでしょう。

(3)白青:降霊、飛行

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 降霊クリーチャーの多くが白青に存在します。裏面のスピリットは飛行を持っています。つまり、少しひねりが加わった飛行デッキと解釈できます。

 飛行クリーチャーに対する見返りは基本的にありません。《上流階級の霊》はレアながらスピリットのロードとしての立ち位置です。とはいえ飛行持ちはドラフトにおいて十分強力であり、特別なサポートは不要でしょう。

 なので、このデッキでやりたいことはシンプルです。地上をブロックして、多くのライフを失わないようにして、その間に空中から攻撃することです。また、+1/+1カウンターによる強化も必要になってきます。適当に撒かず、飛行クリーチャーに乗せていくといいでしょう。また、降霊クリーチャーを生かすため、切削効果も重要になってきます。

 そうした目的に沿うカードを見ていきましょう。

・地上を固める
《仮初めの時間/Borrowed Time》 – いつでも素晴らしい働きをします
《蝋燭罠/Candletrap》 – このデッキに一番フィットします
《ガヴォニーの罠師/Gavony Trapper》 – 相手の一番の脅威を止めてくれます
《墓地への幽閉/Locked in the Cemetery》 – セルフミル戦略とのシナジーがあります

・+1/+1カウンター
《ガヴォニーの銀鍛冶師/Gavony Silversmith》 – 素晴らしい選択肢です
《農家の勇気/Homestead Courage》 – 素晴らしいカードとまでいきませんが、セルフミル戦略と合致します
《オドリックの先導/Odric's Outrider》 – 繰り返し使える効果です

・セルフミル
《欲深き逃散者/Covetous Castaway》 – 降霊持ちクリーチャーと
《溺墓の融合体/Drownyard Amalgam》 – 素晴らしいブロッカーです
《意気盛んな墓守り/Devoted Grafkeeper》 – 降霊持ちクリーチャー
《臓器の貯め込み屋/Organ Hoarder》 – セルフミルとアドバンテージを両立

・能力持ちフライヤー
 《幻影の馬車》は大型飛行クリーチャーですが、降霊持ちを墓地に落としてくれるのでさらなる戦力を供給してくれます。重いのであまり多くは入れられませんが、2枚は常に入れておきたいところです。
 《忠実なグリフ》はこのデッキでは素晴らしい働きをするカードです。クリーチャーを除去から救うことができますし、降霊クリーチャーに使用することで、表面で出し直すことができるので、さらにアドバンテージを稼ぐことができます。

(4)黒緑:死亡時誘発/ミッドレンジ

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 このアーキタイプの2つのマルチカラーアンコモンを見ると、特定のターンにクリーチャーが死亡することで誘発する能力に焦点が当たっているように見えます。それ自体は構築におけるサブテーマであり、実際には一側面でしかありません。

 最大の理由は、死亡誘発には十分な見返りが求められないためです。確かに、2マナ程度で《戦墓の再誕》が唱えられれば素晴らしいですが、ゲーム前半にそれが必要になることはなく、そのためにデッキ構築をゆがませる必要はありません。

 生け贄アーキタイプ同様、黒のカードでアドバンテージを稼ぐことは可能です。腐乱ゾンビによって複数の死亡時誘発も簡単に誘発させることができます。

 しかし、死亡時誘発がそこまで見返りを得られない以上、基本的にはグッドスタッフのミッドレンジを構築していくべきです。黒の優秀な除去と緑の優秀なクリーチャーをもってすれば、構築はそこまで難しいことではありません。死亡時誘発によるアドバンテージ獲得は自然に行えるので、そこに極端に寄せる必要はありません。優良なカードを集めていくだけで、シナジーは自然に構築されていきます。

(5)白緑:トークン/集会

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 本稿ではたびたび、腐乱トークンに関しては語ってきましたが、白緑で使うトークンは「普通の」トークンで、ずっと場に居続けるタイプのものです。アーキタイプとしては集会カードへのアクセスも容易です。

 いつものように、トークンのプランAは、大量のクリーチャーを展開し、全体強化で一気に勝ちに行くことです。どのカードがそのプランを実現してくれるか見てみましょう。

・トークン生成

 次に挙げるカードは、1枚のカードから戦場に複数のクリーチャーを生み出す方法です。

・《聖戦士の召集/Cathar's Call》
・《クラリオン吹きの聖戦士/Clarion Cathars》
・《ドーンハルトの導師/Dawnhart Mentor》
・《蟻の隆盛/Rise of the Ants》
・《影野獣の目撃/Shadowbeast Sighting》
・《踊りへの参加/Join the Dance》

 《黄昏の享楽》も選択肢の一つです。少しトリッキーな効果ですが、必要な時に打てれば最適です(その機会は失われることはないでしょう)。降霊持ちのカードは、継戦能力を与えてくれるので有用な選択肢になります。

 《トヴォラーの猟匠》《消化の泥塊》といったレア度の高いものに頼らずとも、多くのカードがあります。この役割のカード確保に困ることはないでしょう。

・見返り

 《希望の儀式》しか全体強化がないため、このアーキタイプに行く場合は、ピック順位を高くしなければなりません。《ドーンハルトの管理人》はスタッツも優秀で、トークンを微強化してくれる有難い存在です。

 さらに、《ガヴォニーの銀鍛冶師》で強化するのも基本的な戦略になります。+1/+1カウンターをばらまくため、集会カードともうまくかみ合う1枚です。

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 クリーチャー死亡時にボーナスが得られる白のクリーチャー群はこのデッキでも役立ちます。《オドリックの先導》が最高級ですが、《先立たれた生存者/Bereaved Survivor》《物騒な群衆》もこのアーキタイプにかなり貢献してくれます。

・集会

 集会に極端に寄せた構築はご法度です。白緑は、自然に異なるパワーが集まるようなデッキになっているはずです。クリーチャーのパワーをデッキ採用のタイブレーカーとして使用することができます。「珍しい」パワーの値を持つクリーチャーを優先して採用しましょう。

 さらに言えば、クリーチャーが異なるパワーを持てるように、+1/+1カウンターを与える効果を有効に活用しましょう。

 全体的には、このアーキタイプは必要なものすべてをピックすることができます。トークン生成よりも見返りのほうが枚数が少ないため、そちらの確保を優先しましょう。

(6)白赤:アグロ

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 すべてのアーキタイプが斬新な組み合わせというわけではありません。白赤には特定のテーマはなく、基本に忠実なアグロで、サブテーマとして昼/夜の要素がある程度です。

 あくまでサブテーマなので、昼/夜のメカニズムに傾倒しすぎないようにすることが肝要です。マナカーブを低く抑え展開力を高め、対戦相手に畳みかけるように攻撃をしていきます。手札を早々に使い切ることで、変身クリーチャーを生かしていきます。

 白緑のアーキタイプで紹介した白いカードを活用して、トークンを副次的要素とすることもできます。

 このデッキはコンバットトリックを活用するのに最も向いています。例を挙げると:

・《祝福された反抗/Blessed Defiance》
・《ほとばしる信仰/Flare of Faith》
・《月の激情/Lunar Frenzy》
・《似姿焼き/Raze the Effigy》
・《盗まれた活力/Stolen Vitality》

 とにかく直線的に攻めること、このアーキタイプについてこれ以上語っておくべきことはありません。白赤が典型例ですが、ギミックをあまり意識せずにデッキを組み上げるべきアーキタイプもいくつか存在します。デッキのマナカーブが低く抑えられたなら、マナフラッド時のつぎ込み先が非常に少ないことも踏まえ、土地の枚数を16枚にすることも検討すべきです。

 対戦相手を倒すという1点に集中するなら、白赤は良い選択肢となるでしょう。

(7)青緑:フラッシュバック

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 「アドバンテージ」や「2体1交換」という言葉が好きですか? そんなあなたにぴったりのアーキタイプです!

 青緑はフラッシュバックが多く使える色で、さらに《根のとぐろの忍び寄るもの》でそれをさらに使い倒すことができます。マナ能力はフラッシュバックの高いコストを支払うことを可能にし、さらには使い終わったフラッシュバックカードを追放領域から回収することさえできます。戦場の戦力としても最低限の仕事もしてくれます。

 さて、このデッキを構築するにあたり最も注意すべき点があります。相手のアグロデッキに対しての備えをすべく、序盤に盤面へ影響を与える必要があります。ロングゲームに持ち込めばフラッシュバックのおかげで有利になるので、そこまでたどり着くことが必要なのです。

・フラッシュバックを持つカード群

 このセットには多くのフラッシュバック持ちカードが存在しますが、ほとんどはプレイアブルです。低めのレアリティでぜひプレイしたいというカードは下記です。

・《ドライアドの蘇生/Dryad's Revival》
・《蟻の隆盛/Rise of the Ants》
・《影野獣の目撃/Shadowbeast Sighting》

・サポート

 《収穫祭への道》はフラッシュバックを持つカードですが、このアーキタイプを強力にバックアップしてくれる1枚です。フラッシュバックコストは往々にして高く、マナ加速カードを使ってスピードアップすることが必要です。もうひとつは《ドーンハルトの再生者》が素晴らしい存在で、マナ加速をしつつライフを得られ、ブロッカーとしても役立ってくれます。この2枚のカードを使えば、他の色の強力レアをタッチして使うこともできるのです。

 マナ加速から《幻影の馬車》を出すことがひとつのゴールです。デッキから最も欲しいカードを探し出して墓地に送り込むことができますし、それ自身が巨大な飛行戦力になるのです!

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 このアーキタイプでは、自信を切削するカードもアドバンテージ源となり得ることを念頭に置いてください。《窓を叩く》《欲深き逃散者》もこのデッキではよいパフォーマンスを発揮してくれるでしょう。

 いずれにしても、このアーキタイプはプレイしていて楽しい要素が詰まっており、実現可能でしょう。

(8)黒赤:吸血鬼/ライフロス

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 黒赤のテーマは興味深い内容です。吸血鬼部族を推しつつ、対戦相手へのダメージを参照するカードも見られます。どちらも同程度にフィーチャーされています。

・実行部隊

 まずはライフを削り取る実行部隊を見ていきましょう。対戦相手にダメージを与える一番の手段は軽量アタッカーなので、このアーキタイプは自ずとアグロ偏重ということになります。

 《ファルケンラスの打ち抜く者》はゲーム序盤に効率よくダメージを与えてくれる軽量クリーチャーです。ゲーム後半はライフロスを誘発しながら死亡誘発も狙うことができます。

 《新生子の衝動》もライフロスの実働部隊として働いてくれます。対戦相手にタフネス1がいれば儲けものです。この環境のクリーチャーの23.3%はタフネス1なので、対象が時折現れる可能性があることはこのカードの採用を後押ししてくれます。

 《熱錬金術師》は吸血鬼ではありませんが、直接ダメージを与えることができる点でデッキに貢献してくれます。ライフロス誘発を参照するカードが多く含まれるのは見ての通りです。

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 《盗まれた活力》《月の激情》はダメージを貫通させることでライフロスを狙える良いコンバットトリックです。

・見返り

 《吸血鬼の社交家》は素晴らしいカードです。吸血鬼を強化することができ、威迫のおかげでダメージも通しやすくなっています。何よりも2マナと軽いのが素晴らしい点です。《流城の血泥棒》も同様のカードですが、強化範囲は少し狭くなります。

 《ヴォルダーレンの伏兵》はデッキに合致した1枚で、ぜひ採用したいカードです。クリーチャーを破壊しながら戦線を強化できるため、対戦相手はひとたまりもないでしょう。

 その他にも見返りを得られるカードは多くあります:

・《尊大な無法者/Arrogant Outlaw》
・《コウモリに囁く者/Bat Whisperer》
・《税血の徴収者/Bloodtithe Collector》
・《飢えた餌あさり/Famished Foragers》
・《馬上の戦慄騎士/Mounted Dreadknight》

 《ヴォルダーレンの末裔、フロリアン》のようなレアがゲットできればラッキーですね。

 このデッキはマナカーブを低く抑えアグロ志向を目指し、見返りを得られるカードを抑えておけば、あなたの吸血鬼の軍勢が真夜中の狩りドラフトを勝利に導いてくれるでしょう。

(9)赤緑:狼男

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 狼男は人気の部族で、前述のとおり、今回から変身メカニズムが変更されました。今回のドラフトでは昼/夜のメカニズムに触れる機会が多くありますが、まずは狼男がどれだけ素晴らしいかを見ていきましょう。

・『真夜中の狩り』狼男ランキング

 もちろんレアの《不吉な首領、トヴォラー》《トヴォラーの猟匠》がベスト2です。とはいえ運に恵まれなければピックすることはできないので、アンコモン以下でのランキングをご覧に入れましょう。(上にあるほど良いものです)

1.《猟犬調教師/Hound Tamer》
2.《ケッシグの自然主義者/Kessig Naturalist》
3.《牙刃の盗賊/Fangblade Brigand》
4.《筋骨隆々の破壊者/Burly Breaker》
5.《村の見張り番/Village Watch》
6.《辺境地の罠外し/Outland Liberator》
7.《酒場のごろつき/Tavern Ruffian》
8.《不屈の運び屋/Tireless Hauler》
9.《鳥の称賛者/Bird Admirer》
10.《ルーン綴りの絵描き/Spellrune Painter》
11.《収穫祭の潜入者/Harvesttide Infiltrator》

 とはいえ、《収穫祭の潜入者》が特別弱いというわけではありません。全体的に狼男のパワーレベルは非常に高くなっています。

・テンポを失わずに変身させる方法

 既に紹介した通り、最初は昼であり、自身のターンに呪文をプレイしないことが求められます。しかし、実際にはどういう状況になるでしょうか?

 自分のターンをパスすることで変身させたいと思うでしょう。とりあえず夜にはなります。しかし、対戦相手がその返しで呪文を2回唱えるかもしれません。そして、自身のターンを迎える頃にはまた昼になっていて、1ターン分のマナをまるまる無駄にしました。うわぁ……。

 こうならないために、対戦相手のターンに動きたいと思うようになるでしょう。起動型能力は言うまでもなく素晴らしく、《猟犬調教師》が素晴らしい理由はここにあります。瞬速やインスタントも役に立ち、《跳ねる狼》《狩りの遠吠え》のようなカードが、自身のターンをパスしながら対戦相手のターンに動くことを可能にしてくれます。

 とにかく狼男をかき集めましょう。できればリスト上位のものが好ましいですが、下位のものでも十分です。そして追加要素として、対戦相手のターンに動くためのカードを集め、残りは優良なカードを加えましょう。こうしたデッキができれば、『真夜中の狩り』ドラフトで多くの勝利を積み重ねることができるでしょう。

(10)青赤:インスタントとソーサリー

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 青赤は再びインスタントとソーサリーがテーマに設定されました。この手のデッキは「インスタントとソーサリー」「クリーチャーなど」の2者の適正な枚数採用によるバランスを求められます。

・クリーチャー

 こうしたデッキでよく見られるクリーチャーは何でしょう? 数種類のクリーチャーは、インスタントやソーサリーに反応して強化されます。

・《祭り壊し/Festival Crasher》
・《ルーン綴りの絵描き/Spellrune Painter》
・《嵐のスクリーリクス/Storm Skreelix》

 もし《秘密を掘り下げる者》が見つかれば、ここに加えてもいいでしょう。しかし、信頼を置くにはイマイチです。

 《熱錬金術師》は、このデッキの中核を担うダメージソースとして、また序盤のブロッカーとして活躍してくれます。運よく《戯れ児の縫い師》をゲットできればしめたもの、このアーキタイプに進む原動力になります。

 最後に、《献身的な精霊術士》《またたかぬ観察者》もこのデッキを強化してくれる貴重なコモンです。

・インスタントとソーサリー

 採用すべきカードの筆頭のうちいくつかは、自身を他のカードに置き換える効果をもつものです。《考慮》《秘儀の注入》などは良い例です。フラッシュバックを持つカードも素晴らしく、1枚で2枚分の働きをしてくれます。

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 《嵐の捕縛》はデッキの方向性に完全に合った1枚です。インスタントとソーサリーが潤沢に入ったデッキであれば、大型のクリーチャーを2回手に入れることができるのです。

 デッキの残りの部分も、出来る限り優良なインスタントとソーサリーで固めましょう。特に《月の憤怒獣の切りつけ》《火遊び》はできるだけかき集めましょう。

・適正な比率を目指して

 通常のドラフト・デッキよりもクリーチャーの数が少なくなるように調整しますが、それでも10~12枚のクリーチャーは必要です。また、今回のセットは除去が非常に強く、1枚の《嵐のスクリーリクス》で勝てるほど甘くはありません。

 《考慮》のような軽量ドローを多く集められれば、土地を16枚、ないし15枚に抑える構築は可能です。キャントリップ効果で土地を引きすぎる事故を減らすことができます。

(11)『真夜中の狩り』ドラフト パワーランキング

 さあ、ランキング発表の時間です。いつものように、環境開始前の予想ですから、話半分程度に留めておいてください。我々が環境を考察する際のほんの一部の要素でしかなく、下位の色やアーキタイプが悪いというわけではありません。悪しからず。

 じゃあこのランキングは何なんだ?と思われると思いますが、ドラフト中に2枚を選ぶ際、どっちにしよう、と悩んでいるときに、特定の色やアーキタイプが優れていることが分かっていれば、そちらをピックしよう――という具合に活用できると思います。

 我々全員がドラフトを経験すれば、これはすべて変更されることになります。セットのリリース後、数週間以内にこの記事は更新されるでしょう。言い訳はこの辺にして、現在のランキングは次の通りです。

ベストカラー

1.黒
2.青
3.白
4.緑
5.赤

 黒は多くの優秀な除去に恵まれ、クリーチャーの質も悪くありません。他の色より劣っていると断ずるのは現時点では難しいです。青は2体1交換を行えるカードが多く存在し、カードアドバンテージ獲得にも長けています。ロングゲーム向きの色ですね。
 残りの色は甲乙つけがたい評価で、今後数日間でどのように評価が動くか気になるところです。

ベストアーキタイプ ※9/20更新版

1.白青:降霊/飛行
2.青黒:ゾンビ/生け贄
3.白黒:生け贄
4.青緑:墓地活用
5.白緑:トークン/集会
6.白赤:アグロ
7.黒赤:吸血鬼/ライフロス
8.黒緑:死亡時誘発/ミッドレンジ
9.青赤:インスタントとソーサリー
10.赤緑:狼男

 
【※訳者注:参考 9/18時点での記事に掲載されたランキング】
1.赤緑:狼男
2.黒赤:吸血鬼/ライフロス
3.白黒:生け贄
4.青赤:インスタントとソーサリー
5.白緑:トークン/集会
6.青緑:墓地活用
7.黒緑:死亡時誘発/ミッドレンジ
8.白青:降霊/飛行
9.白赤:アグロ
10.青黒:ゾンビ/生け贄

 トップ3のアーキタイプ(白青、青黒、白黒)は上位3色の組み合わせで、環境早期はこの3色軸がアーキタイプとして成功しているように見えます。

 次点で4~8位のデッキがありますが、パワーレベルとしては横一線という見方をしています。

 さて、青赤デッキですが、やはり構築が非常に難しいという現実があります。少量のクリーチャーに依存する構築が仇となっていて、効果的な除去が多いという環境の性質上、うまく勝ち抜くのが難しくなっています。狼男はロングゲーム時のアドバンテージに乏しく、早いデッキを戦うには黒赤や白赤という選択のほうがよく見えます。

 そうはいっても、まだフォーマット初期の評価であり、最終的にバランスの取れた環境であるという結論に至ることを願っています。

4.『真夜中の狩り』追加のコツ

 まとめに入る前に、『真夜中の狩り』ドラフトのいくつかのヒントを紹介しましょう。

・環境速度

 セットの主なメカニズムは「フラッシュバック」「降霊」です。こうしたメカニズムを機能させるためには、環境が遅くなければなりません。WotCはこうしたメカニズムがプレイアブルであることを望んでいるでしょうから、『真夜中の狩り』ドラフトは高速環境ではない、と考えたほうがいいでしょう。

 とはいえ、序盤にだらだらして何をしていてもよい、というわけではありません。高速アグロは健在です。《蝋燭林の魔女》→《儀式の守護者》→《ガヴォニーの銀鍛冶師》みたいな動きが白のコモンだけでできてしまうのも事実なのです。

・土地の枚数は?

 今回については、デッキの構築によって大きく振れ幅が出てよいと考えています。具体的には15~18枚の間で変動します。

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 デッキに多くのマナフラ受け(この環境にはフラッシュバックや降霊というお誂え向きのものが揃っています)があり、それがデッキに多ければ(5枚以上が望ましいでしょう)、18枚目の土地を入れるに値します。

 一方で、アグロについてはマナカーブを低く抑えれば、あるいはデッキ内に《考慮》などのキャントリップが多ければ、土地の枚数を減らすことも可能です。16枚から15枚に減らすことを検討しましょう。

 自身の構築にあまり確信が持てない場合、17枚の土地を固定しておきましょう。大きな間違いにはならないはずです。

・全体除去

 ドラフトでは、いわゆるスイーパー(全体除去)がどんなものかを知っておくだけで、対応できるかどうかが決まります。
 『真夜中の狩り』ドラフトには、3種の全体除去が存在します。

・《家の焼き払い/Burn Down the House》
・《食肉鉤虐殺事件/The Meathook Massacre》
・《大群退治/Vanquish the Horde》

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 対戦相手が白、黒、あるいは赤で、「妙だな?」と感じるようなプレイパターンをしてくる場合、全体除去を警戒する必要があります。妙だと思うサインは何か? 生かしておきたいクリーチャーでチャンプブロックをしたり、クリーチャーを出し惜しみする、などです。

 そんな場面があれば、手札に生物を留めておくことで全体除去後に攻めを継続できるかもしれません。(あるいは、《家の焼き払い》に対抗すべく、タフネス6のクリーチャーを作っておくといいかもしれません。)可能ならそれを試みることができます。ただし攻め手が途切れてしまっては元も子もありません。クリーチャーを全展開して、ベストの展開を祈りましょう。

5.狩りはこれからだ!

 さて、これで『真夜中の狩り』ドラフトガイドは終了です。もっと他のコンテンツを!というあなたに、いくつかご紹介しましょう。

 まずはEDHプレイヤー向けの一報です。構築済デッキを2つ紹介しています。1つはゾンビ、1つは集会メカニズムをフィーチャーしています。

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 読者の中にコレクターの方はいらっしゃいますか? コレクターブースターの内容確認、ご注文はこちらからどうぞ。

 あなたはMTGAで遊んでいますか? その場合は、MTG Arenaコードを確認することをお勧めします。限定スリーブや無料パック(3パック)をゲットできます。

 ドラフトの詳細については、前述のティアリストを確認してください。私の同僚のDrifterがすべてのカードをランク付けしていて、いくつかのヒントを共有しています。

 スタンダードをプレイする皆さん、下記では新しいスタンダードデッキをいくつか紹介しています。

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 さて、次回までぜひ楽しんでください! あなたがどうか、『真夜中の狩り』ドラフトで7勝できますように。


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