パイオニア環境分析のつもり(12/14~26)この場はただ……連鎖(ザ・チェイン)しかない
■はじめに
こんばんは。「岸部露伴は動かない」実写版を見ながらこの記事を書いています。正確には見終わった後から書き出しています。面白くて見入ってしまい、ながら作業ができませんでした。録画したのでまた見ます。
おそらく今年最後の「パイオニア環境分析」となります。本年はこの記事を含め15回の環境分析をお届けしてきました。ややペースが落ちていますが、ジョジョに基に戻せればと思います。
■メタゲームブレイクダウン
今回は集計期間が短いためPioneer Preliminary入賞者のリストも含めています。期間内のChallenge3回とその間のPreliminaryが対象です。
前回同様イゼットフェニックスが1番手ですが、2番手にはジェスカイの隆盛コンボが急浮上。前回は「Others」扱いだったので驚きです。
3番手には吸血鬼が残りましたが、4番手はジャンド城塞が構成を変化させて再浮上(こちらも前回は「Others」扱い)。5番手には前回2位のナヤウィノータが滑り込みましたが、それ以下のデッキについても前回集計とはかなり変化しています。
ライフゲインに長けた吸血鬼、除去枚数の多いイゼットフェニックスがメタ上位にいることもあり、アグロが大きく減少しています(▲6.0%)。大きく伸びたのはコンボ系で、主にジェスカイの隆盛コンボが要因です。
■注目デッキ1:ジェスカイの隆盛コンボ(Ascendancy Combo)
以前から存在していた《ジェスカイの隆盛》を軸にしたコンボです。モダンを主戦場に、一時期のスタンダードでも使われましたが、パイオニアでも細々と使われ続けています。特に、《創造の座、オムナス》が追加されてから強化され、数を増やしつつあります。
基本的には、召喚酔いしていない《森の女人像》が1枚以上ある状態で《ジェスカイの隆盛》を置いてコンボスタート。(できればどちらかが2枚)
1枚ずつであれば1マナの非クリーチャー呪文が、どちらかが2枚あれば2マナ以下の非クリーチャー呪文がフリースペル+ルーター付きのスペルになるため、スペルをチェインさせて山札を掘り下げていきます。
コンボ始動時、あるいは山札を掘り下げる過程で《森の目覚め》を引けばフィーバータイム。クリーチャー化した土地が《ジェスカイの隆盛》の効果ですべてアンタップして+1/+1修正を受けるため、デッキのほぼすべてのスペルが唱え放題になります。
最終的には《森の目覚め》でクリーチャー化した土地を巨大化させて、全軍攻撃でフィニッシュします。最速4ターンで決まることもあり、脅威の一言です。
イゼットフェニックスが《弧光》を最速3Tに釣り上げることを考えると、その返しのターンにはコンボ成立があり得るわけで、イゼットフェニックスからすると速度勝負で不利になります。《氷の中の存在》を構えていない限りはコンボ成立を防ぐのは不可能です(し、大概は《岩への繋ぎ止め》で対処されて終わりでしょう)。
コンボ特化と思いがちですが、3T《オムナス》から普通に殴ってきたり、除去も隙の少ない《岩への繋ぎ止め》《光輝の炎》と備えているため意外と粘り強さがあります。特に《オムナス》はドロー、マナ供給とデッキにかみ合った性質を持ちつつ、攻撃、あるいはPWにダメージを飛ばす能力で、苦手な《覆いを割く者、ナーセット》に対抗できるなど、デッキの弱点をうまく補っています。相棒の《湧き出る源、ジェガンサ》の存在も、マナクリーチャーとして八面六臂の活躍を見せるこのデッキにおいては侮れません。
爆発力のあるデッキですが、イゼットフェニックスやロータスコンボ同様《覆いを割く者、ナーセット》や《スレイベンの守護者、サリア》《エメリアのアルコン》《減衰球》などを苦手とします。特にメインから入る率の高い《サリア》を擁する白いアグロデッキには厳しい戦いを強いられます。
サイドボードには《ポータブル・ホール》やプランBの《僧院の導師》がありますが、相性改善には至っていません。
チェイン系コンボのためロータスコンボとは一風違った味わいのあるコンボデッキです。動きは複雑なようでシンプルなので、何度も一人回しをして感触をつかんでから実戦で使ってみましょう。
■注目デッキ2:ジャンド城塞(Jund Citadel)
先日大会参加レポートを書いたジャンド城塞の使用率が急増しました。12/20のPioneer Challengeでは優勝しています(《集合した中隊》型)が、最近はより干渉力を高めたリストが目立つようになりました。
ジャンド城塞は《ボーラスの城塞》+《波乱の悪魔》の一撃必殺コンボが目玉ですが、そこに至る過程をどのように構築するかについてはある程度自由度があります。
今回のリストはよりボードコントロールに特化し、盤面を固めながらゆっくりとアドバンテージを獲得していく形にシフトしています。その証拠にメインから《致命的な一押し》が4投され、よりクリーチャーベースの戦いに重きを置いていることが分かります。ナヤウィノータや吸血鬼との戦いを見越していることが伺えます。また、細かなライフゲインが可能であり、少しずつクロックを用意して攻めてくるイゼットフェニックスにもこちらの型の方が有利です。
特に《命取りの論争》がブレイクスルーで、カードアドバンテージと生け贄回数、次ターン以降のマナ加速、ついでに《炎恵みの稲妻》の回避と、クリーチャーに頼らずアドバンテージを構築できるデッキにマッチした1枚になっています。そのため純粋なマナクリーチャーは用意せず、《パンくずの道標》と相性のいい《金のガチョウ》のみ採用されています。
これにより《ボーラスの城塞》に頼らずともフィニッシュできる構成になっています。リストによりますが、同様のリストで《城塞》を1枚まで減らしたリストもあるほどです。
12/20の優勝リストこそ従来のマナクリーチャー+《中隊》+《城塞》パッケージだったものの、今回集計期間の対象リスト13のうち11が今回の《命取りの論争》型で、こちらが主流になりつつあります。メタゲームの相手次第な部分はありますが、この型もぜひ使ってみてください!
■注目デッキ3:赤単ミッドレンジ
ライフゲインで攻めてくる吸血鬼、除去の激しいイゼットフェニックス、という構図を話しましたが、赤系デッキもその環境変化に順応してきました。今回ご紹介する赤単ミッドレンジがそれです。
Big Redと評するにはやや軽め、アグロと評するにはやや重め、といった具合のマナベース。土地は25枚とやや多め、1マナ域は《損魂魔導士》と《火遊び》のみ。クリーチャーの構成もこれまでとは一線を画していて、
墓地対策兼ダメージソースの《墓所の門番》
ライフゲインを許さず横並べも許さない《暴れ回るフェロキドン》
チェインコンボに容赦のない《大歓楽の幻霊》
と、かなりのメタメタしい面子が並んでいます。イゼットフェニックスや吸血鬼だけでなく、ジェスカイの隆盛コンボにも有効です。
アグロやナヤウィノータに対しても《ゴブリンの鎖回し》が効果絶大。《トーブラン》や《損魂魔導士》と同時に繰り出されてしまうとほぼ一方的なスイーパーとなり、その損害は計り知れません。
アドバンテージも、環境最強クラスのPW《反逆の先導者、チャンドラ》が供給、長期戦も《バグベアの居住地》でしっかりキープ。赤単とは思えない対策力の高いデッキになっています。
吸血鬼が一定数いる以上、直線的なアグロデッキの成立はなかなか難しいのが現状です。こうした別口のアプローチもぜひ試してみてください。
■終わりに
本年も皆様のおかげで「パイオニア環境分析のつもり」を1年間お届けすることができました。この場を借りてご支援いただいた皆様に感謝を申し上げます。
愚直に3年間続けてきた成果か、「いつも読んでます」「お世話になっています」と言っていただけることが増えました。パイオニアはモダンやスタンダードほど競技人口がおらず、またショップとしても売上につながりづらいフォーマットということもあってか、情報発信者が少ないのが現状です。少ない情報源のひとつとして、今後も定期的な情報発信に努めてまいりますので、ぜひご支援のほど、よろしくお願い申し上げます。
蛇足ですが文章末尾の「サポート」からご支援を頂けると、大変嬉しく思います。
それでは皆様、良いお年をお迎えください。
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