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【拙訳】ラクドスアルカニスト(ヒストリック)デッキガイド By Omrik(MTG Arena Zone)

 もともとあったアーキタイプでメタゲーム上は墓地対策が刺さり衰退したものの、Luis Salvattoがミシックインビテーショナルで使用したことでも話題になったラクドスアルカニスト。旬な内にとりあえず訳しておきます。

 本記事ですが、一応有料記事扱いにはしてありますが、全文無料で読めます。筆者をサポートしていただける心の広い方はぜひご購入をお願いいたします。


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Historic Rakdos Arcanist Deck Guide
BY OMRIK · PUBLISHED SEPTEMBER 11, 2020 · UPDATED SEPTEMBER 11, 2020

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■はじめに

 アモンケットリマスターで《立身//出世》が収録されると後悔された時から、このデッキを組みたいと思っていました。《若き紅蓮術士》と《戦慄衆の秘儀術師》という非常に優れた2マナ域をプレイでき、軽く優秀な妨害呪文でバックアップするという類のものです。さて、今回のミシックインビテーショナルでLuis Salvattoが使用したデッキ(https://mtgazone.com/deck/rakdos-arcanist-by-luis-salvatto-2020-mythic-invitational/)がこちらですが、このデッキについて掘り下げていきましょう。

■ラクドスアルカニストとは?

 ラクドスアルカニストのゲームプランは、ゲーム初期の段階で脅威を叩きつけ、軽いアクションで相手を妨害、そのまま対戦相手をねじ伏せる、あるいはダメージで倒すことです。デッキは墓地をリソースとして最大限に活用するよう構築されていて、《立身//出世》、《戦慄衆の秘儀術師》、《死の飢えのタイタン、クロクサ》、そして《夢の巣のルールス》は、すべてそれ自身やほかのカードの価値を高め、あるいはダメージを与え続けます。

 このフォーマット屈指のパワーカードである《思考囲い》も使用でき、《若き紅蓮術士》と《戦慄衆の秘儀術師》によってさらに有効に使用できます。ミッドレンジデッキとして、アグロとしても、コントロールとしてもふるまえますが、クリーチャーを攻撃させるための除去とハンデスを使うことで、リアクティブではなくプロアクティブに展開できるよう構成されています。このデッキには、《初子さらい》と《村の儀式》、そして1枚の《忘れられた神々の僧侶》というサクリファイス的な側面も持ちます。《縫い師への供給者》はこのデッキの潤滑油で、墓地を肥やし、軽いクリーチャーリソースにもなり、そうしたリソースを必要とするカードすべての燃料となります。

 このデッキは、レガシーのデルバーデッキと、スタンダードのラクドスサクリファイスのちょうど中間に位置するようなデッキであり、ゲームの序盤から終盤まで、多くの選択肢が生まれます。

Historic Rakdos Arcanist by OmriK
 
companion
1《夢の巣のルールス/Lurrus of the Dream-Den》
 
creature (18)
1《魔王の器/Archfiend's Vessel》
4《戦慄衆の秘儀術師/Dreadhorde Arcanist》
4《死の飢えのタイタン、クロクサ/Kroxa, Titan of Death's Hunger》
1《忘れられた神々の僧侶/Priest of Forgotten Gods》
4《縫い師への供給者/Stitcher's Supplier》
4《若き紅蓮術士/Young Pyromancer》
 
sorcery (13)
3《初子さらい/Claim the Firstborn》
4《立身/Claim》 /
2《灯の収穫/Spark Harvest》
4《思考囲い/Thoughtseize》
 
instant (6)
2《魔性/Bedevil》
4《村の儀式/Village Rites》
 
land (23)
4《血の墓所/Blood Crypt》
2《ロークスワイン城/Castle Locthwain》
4《竜髑髏の山頂/Dragonskull Summit》
3《寓話の小道/Fabled Passage》
3《山/Mountain》
7《沼/Swamp》
 
sideboard (15)
1《夢の巣のルールス/Lurrus of the Dream-Den》
3《削剥/Abrade》
3《強迫/Duress》
1《マグマのしぶき/Magma Spray》
3《群れネズミ/Pack Rat》
1《レッドキャップの乱闘/Redcap Melee》
3《魔女の復讐/Witch's Vengeance》

■カード選択

◇脅威

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・《戦慄衆の秘儀術師》

 このデッキにおける最も優れたカードで、様々なカードの選択に関わっています。額面上は2マナ1/3であり、ほとんどの除去で倒されてしまいますし、タフネス3は取るに足らず、単体での戦闘では役立たずでしかありません。しかし、だからといって放っておくと、《戦慄衆の秘儀術師》がゲームをめちゃくちゃにし始めます。《思考囲い》をフラッシュバックして、除去を再度唱えて戦場をクリアしたり、《村の儀式》でカードを引くことができます。《思考囲い》→《戦慄衆の秘儀術師》はこのデッキの黄金ムーブで、ヒストリックのどのデッキよりも優れた動きです。これと《立身//出世》を組み合わせることで、マナコストが高い呪文もフラッシュバックできます。

・《若き紅蓮術士》

 カードとしては貧弱です。タフネス1はちょっと小突かれただけで死にますが、回答を持たなければ、ゲームを即座に支配し始めます。1/1トークンは《村の儀式》と《巻き添え被害》で特に役立ちます。《立身//出世》で復活させるのも魅力的です。ただし《村の儀式》を使う際、《若き紅蓮術士》1体の場では誘発のタイミングで1/1しか残らないことに注意してください。ゲーム後半で1/1を出すためだけに《思考囲い》を打てる、ということもお忘れなく。

・《死の飢えのタイタン、クロクサ》

 2ターン目に唱える場合は《カラスの罪》でしかなく、カードとしては最低クラスなので、デッキでも最悪のカードのひとつだと思うかもしれません。しかし、後に何枚かの土地が《縫い師への供給者》で落とされるので、後々素晴らしいカードになります。もし複数枚の《クロクサ》が引けたなら、《思考囲い》との合わせ技で相手の手札をスカスカにして、満を持して登場させてあげましょう。アグロデッキに対してはそこまでではないものの、あらゆる種類のコントロールやランプデッキに対して素晴らしい働きを見せてくれます。ゲーム後半のカードパワーは《自然の怒りのタイタン、ウーロ》に匹敵するものがあります。
 もちろん、「脱出」していない《クロクサ》も生け贄に捧げることはできますし、万が一相手が《静寂をもたらすもの》なんて使っていようものならそのまま戦場に残り続けてくれます。また、《ルールス》から《クロクサ》を毎ターン唱え続ける動きも凶悪で、毎ターンハンデス、あるいは3点ライフロスを与え続けることができます。

・《立身//出世》

 このカードがスポイラーで公開されてから、このデッキを作りたくてたまりませんでした。《発掘》まではいきませんが、このデッキは《ルールス》を除いて(相棒条件を満たすために)3マナ以上のクリーチャーをプレイしませんからね。除去された2マナ域を復活させるのが理想ですが、《魔王の器》も強力な対象で、《縫い師への供給者》も必要に応じて吊り上げることができます。《出世》側はかなり器用なことができ、ハンデスされてもキャスト可能で、どこからともなく追加ダメージを稼ぐことができます。《戦慄衆の秘儀術師》を強化することで、より高いマナコストのスペル(《魔性》もしくは2枚目の《立身//出世》:スタック前まではマナコストが3です)をフラッシュバックすることもできます。墓地対策には弱いカードで、何も対策されなければいいものの、対策されるとどうしようもありません。それでもメインゲームでは素晴らしい活躍を見せる、デッキのキーカードのひとつといえるでしょう。

・《忘れられた神々の僧侶》

 《魔王の器》とともに、非固定枠です。《初子さらい》の追加のサクリファイスエンジンとしてクリーチャーデッキに対してはかなり優れたカードです。しかし《集合した中隊》や《大釜の使い魔》デッキは苦手です。

・《魔王の器》

 私の個人的な意見ですが、デッキで最も過大評価されているカードの1枚でしょう。以前はかなり一般的で各デッキに3枚以上入っていましたが、皆さんの研究も進み、いくつかのリストでは完全にカットされています。《夢の巣のルールス》《立身//出世》から出てくる5/5飛行は脅威に思えますが、1/1/1絆魂生物はかなり弱く、5/5飛行も《秘儀術師》《紅蓮術士》と比べると見劣りします。1枚程度であればまぁ許容範囲ですが、確かに《立身//出世》表裏で7点ダメージをたたき出すことはできるものの、強力とまでいえるほどではありません。自分の《思考囲い》で墓地に落としてから上記のコンボを決めることで2ターン目に5/5飛行を出すことはできますが、カードを3枚使ってやることではないと思います。一見素晴らしいコンボに見えますが、戯れに過ぎません。

◇妨害

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・《思考囲い》

 このカードはぶっ壊れです。レガシーレベルのパワーカードであり、ヒストリックでは最高のカードのひとつです。特に《戦慄衆の秘儀術師》でフラッシュバックしたとき、《若き紅蓮術士》でトークンを生成しながらのこれはとてつもない威力となります。
 自身を対象にすることもでき、《魔王の器》を5/5にしたり、《クロクサ》の脱出を早めたりすることができます。このあたりは私よりもはるかに詳しい方々の記事に譲るとしましょう。是非チェックしてください。Reid Dukeによる、より繊細で確固たる説明についてはコラム「Thoughtseize You」(https://articles.starcitygames.com/premium/thoughtseize-you/)をご覧ください。
 基本は次の通りです。《思考囲い》は長期戦向けのデッキには向いていません。なぜなら、対戦相手のマナカーブを阻害しなければ、1対1交換をしているもののライフを失っているため悪い結果になるからです。テンポとライフに遅れを取る行動のため、赤単のようにライフ全体にプレッシャーをかけてくる相手も苦手です。《稲妻の一撃》を抜き取っても差し引き1ライフしか得をしません。
 《思考囲い》は《創造の歌》デッキやアゾリウスオーラのような、特定のキーカードに頼るデッキに対して、うまく対処できれば効果的です。《こーの精霊の踊り手》が空いての唯一のクリーチャーだったりしますからね。
 そして最後に、《思考囲い》は2ターン目にこそ輝きます。クロックの確保を行ったり、打ち消しに対処するための優れた手段になるからです。

・《初子さらい》

 《村の儀式》や《巻き添え被害》がなければ効果はかなり落ちます。やはり生け贄エンジンがあってこそのスペルです。
 自軍のクリーチャーに速攻を与えることもできます。主に《戦慄衆の秘儀術士》の誘発をすぐに行いたい場合や、《クロクサ》を脱出させた後すぐ攻撃することでバーストダメージを叩き出すときに使います。

・《灯の収穫》

 主な役割は《初子さらい》の5~6枚の生け贄手段ですが、《若き紅蓮術士》影響下ではトークンを取り戻すことができたり、《魔王の器》を墓地に送り込んだり《縫い師への供給者》の誘発を行うことができます。効果自体はかなり強力なものです。1マナの除去呪文として対象が無条件な点は素晴らしく、必要に応じてマナで追加コストを支払うこともできます。頻繁に訪れるシーンではありませんが、クリーチャーを犠牲にする必要はありません。
 この枠の選択肢としては《巻き添え被害》があります。いくつかのリストには採用されていて、戦場がクリアな時も対戦相手本体に叩き込めますし、インスタントタイミングで仕掛けられるのは非常にいいことですが、《ウーロ》や《ドミナリアの英雄、テフェリー》に対しては役に立ちません。

・《魔性》

 3マナながら非常に「やりすぎ」なカードです。2マナのカードは十分に採用されていますし、《出世》で《戦慄衆の秘儀術師》を強化した場合は2マナも3マナも関係ありません。クリーチャーやプレインズウォーカーを問答無用で屠れるため決して腐りませんし、それ以上にアーティファクトに触ることができるのも重要です(《墓掘りの檻》や《王神の贈り物》、《王神の立像》などをサイドボードから持ってくる緑単PW戦では特に役に立ちます)。《殺害》レベルでは採用に値しませんが、《魔性》は非常に柔軟性のあるカードなのです。

◇ユーティリティ

・《村の儀式》

 多くの場合、生け贄に捧げるコストはこのデッキが用意してくれます。《村の儀式》は《初子さらい》と非常に相性がよいですし、《戦慄衆の秘儀術師》でフラッシュバックすることもできます。除去に対応して使用することもできますが、そのようなシーンは稀でしょう。脱出していない《クロクサ》を、「生け贄に捧げる」誘発能力の解決前に「犠牲にする」ことができることを忘れないでください。

・《縫い師への供給者》

 このデッキの最高の潤滑油です。セルフ切削能力はこのデッキに素晴らしくマッチしていて、《クロクサ》の脱出コスト、《戦慄衆の秘儀術師》、《立身//出世》、《魔王の器》、《夢の巣のルールス》と枚挙に暇がありません。また、《村の儀式》や《灯の収穫》(訳注:原文は《巻き添え被害》ですがデッキリストの内容に合わせます)の追加コストや、死亡誘発を起こせるチャンプブロッカーとしても活躍します。

◇サイドボード

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・《強迫》

 コントロール戦での追加のハンデスです。《思考囲い》より若干劣りますが、《戦慄衆の秘儀術師》で使いまわせる手札破壊はこのマッチの要であり、デッキの一貫性を高めてくれます。

・《削剥》

 クリーチャー除去でありながら《墓掘りの檻》その他のアーティファクトも対処できる優秀なスペルです。柔軟性は非常に高く、小粒なクリーチャーとアーティファクトの両方を見なくてはならない黒単ギフトのようなデッキに対して特に有効です。

・《魔女の復讐》

 ゴブリンから勝利を与えてくれますし、エルフやマーフォークといったデッキにも有効です。これに頼らなければならない時点で正直格好がつかない部分もありますが。

・《群れネズミ》

 《安らかなる眠り》や《虚空の力戦》などから勝利をもぎ取る手段であり、簡単にサイドボードから抜くことはでいません。デッキがそうしたカードによってシャットアウトされてしまったときに強力なバックアップとなります。非常に短い期間に対処を迫り、また複数の対処手段を強要します。とはいえ、《墓掘りの檻》だけなら対処は簡単なので、対戦相手の墓地対策がそれだけならサイドインすることはためらいます。

・《レッドキャップの乱闘》

 追加の除去です。主にゴブリン用ですが、グルールや赤単にも有効です。

・《マグマのしぶき》

 軽く取り回しの良い除去です。《大釜の使い魔》や《悲哀の徘徊者》に対しても有効です。


■サイドボード・ガイド

・ゴブリン

IN :
3《魔女の復讐/Witch's Vengeance》
1《マグマのしぶき/Magma Spray》
1《レッドキャップの乱闘/Redcap Melee》
3《削剥/Abrade》
 
OUT:
2《魔性/Bedevil》
2《死の飢えのタイタン、クロクサ/Kroxa, Titan of Death's Hunger》
1《立身/Claim》 // 《出世/Fame》
1《魔王の器/Archfiend's Vessel》
2《思考囲い/Thoughtseize》

 最速《マクサス》が負けパターンの最たるものですので、《スカークの探鉱者》の除去が最優先です。その後、ロードを倒して《クレンコ》で負けないように盤面を整えます。サイドボード後は《魔女の復讐》が加わるので、ロードさえ一掃できてしまえば、《マクサス》が来てもすぐに負けることはありません。《クロクサ》はこのマッチアップでは正直あまり効果的ではありません。

・スゥルタイランプ

IN :
3《強迫/Duress》
2《削剥/Abrade》
 
OUT:
1《初子さらい/Claim the Firstborn》
1《忘れられた神々の僧侶/Priest of Forgotten Gods》
1《魔王の器/Archfiend's Vessel》
1《若き紅蓮術士/Young Pyromancer》
1《立身/Claim》 // 《出世/Fame》


 もし《墓掘りの檻》が見えたなら、3枚目の《削剥》を加えましょう。《ウーロ》が出てきてしまうと厳しいので、《初子さらい》は残しておきます。また、《墓掘りの檻》は相手の《ウーロ》も封じるので、すぐ破壊せず様子を見ることも必要です。

・ジャンドサクリファイス

IN :
3《削剥/Abrade》
1《レッドキャップの乱闘/Redcap Melee》
1《マグマのしぶき/Magma Spray》
 
OUT:
1《忘れられた神々の僧侶/Priest of Forgotten Gods》
2《死の飢えのタイタン、クロクサ/Kroxa, Titan of Death's Hunger》
2《思考囲い/Thoughtseize》

 《波乱の悪魔》はまさにパブリックエネミーです。《村の儀式》を構えたり、《クロクサ》をすぐに唱えたりしないで、相手の《初子さらい》にやられないようにしてください。タフなマッチアップですが、相手の初動を抑えることができれば、後は簡単に勝つことができます。


■終わりに

 ここまで読んでいただいてありがとうございます。この記事は楽しんでいただけましたか? ラクドスミッドレンジはヒストリックのベストデッキとは言えませんが、非常に強力で、プレイするのがとても楽しいデッキです。私のTwitterでコンタクトをとっていただければ嬉しいですし、月、木、土の夜にTwitchで定期的に配信を行っています。時間があれば、追加配信を行ったりもします。

 あなたの今日が素晴らしい一日になりますように、またあなたのマッチアップに幸あらんことを。そいて、いつも心に《思考囲い》を!

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