パイオニア環境分析のつもり(1/11~12)~SCG Classic Knoxville/Invi Qualifier各地結果~

■はじめに

 基本的にMO上のデッキリストの分析を行ってきましたが、すこし趣向を変えてテーブルトップの大会結果を見ていきましょう。今回はStarCityGamesの各種大会の結果を見ていきます。

▼SCG Classic Knoxville 1/12実施分(127名参加、スイス7回戦+TOP8SE)

9-1
赤単ミッドレンジ(優勝)

7-1
ゴルガリ《硬化した鱗》(3位)
スゥルタイドレッジ(準優勝)

6-1
ゴルガリ《硬化した鱗》(4位)

6-2
白単アグロ
赤単ミッドレンジ
赤単ミッドレンジ

5-1
アゾリウスコントロール

5-2
白単アグロ
黒単アグロ
赤単ミッドレンジ
赤単ミッドレンジ
ボロスフェザー
イゼットフェニックス(TOP8)
イゼットフェニックス
ラクドスミッドレンジ
ロータスコンボ


▼SCG Invi Qualifier 各地予選

【North Las Vegas(1/11)】

アブザン《先祖の結集》
黒単アグロ
緑単ランプ
アゾリウスコントロール
スゥルタイ《荒野の再生》
緑単アグロ
黒単アグロ
イゼットフェニックス

【Findlay(1/11)】

グリクシス《創案の火》
赤単アグロ
赤単ミッドレンジ
ゴルガリ《硬化した鱗》
グルールアグロ
黒単アグロ
バントカンパニー
バントスピリット

【Louisville(1/11)】

黒単アグロ
赤単ミッドレンジ
赤単ミッドレンジ
赤単アグロ
ゴルガリ《硬化した鱗》
赤単ゴブリン
緑単ランプ
緑単ランプ

【Woodbridge(1/11)】

アゾリウスコントロール
赤単ミッドレンジ
黒単アグロ
ラクドスミッドレンジ
赤単ミッドレンジ
イゼットフェニックス
アゾリウススピリット
イゼットフェニックス

【Chantilly(1/12)】

ゴルガリ魂剥ぎ
赤単ミッドレンジ(エルドラージ採用型)
ゴルガリ《硬化した鱗》
5色ニヴミゼット
バントカンパニー(タッチ《新生化》)
赤単ミッドレンジ
ラクドスミッドレンジ
ゴルガリ《硬化した鱗》

【Newington(1/12)】

ボロスフェザー
黒単アグロ
アゾリウスコントロール
緑単ランプ
アゾリウスコントロール
バントカンパニー
赤単ミッドレンジ
ゴルガリ《硬化した鱗》


▼アーキタイプ別入賞数
(上記7大会成績上位:全64デッキ)

12 赤単ミッドレンジ(エルドラージ型1を含む)
7 黒単アグロ(すべて非吸血鬼)
7 ゴルガリ《硬化した鱗》
5 アゾリウスコントロール
4 イゼットフェニックス
4 バントカンパニー(通常3/スピリット1)
4 緑単ランプ
3 赤単アグロ(通常2/ゴブリン1)
3 ラクドスミッドレンジ
2 白単アグロ
2 ボロスフェザー
10 その他(緑単アグロ、アゾリウススピリット、ゴルガリ魂剥ぎ、グルールアグロ、グリクシス《創案の火》、スゥルタイドレッジ、スゥルタイ《荒野の再生》、アブザン《先祖の結集》、5色ニヴミゼット、ロータスコンボ)


■トレンド

・テーブルトップとMOのデッキ傾向相違

 当たり前ですが、テーブルトップの大会ととMOの各種大会(Challenge、Preliminary)ではズレがあります。MOでは毎日大会が行われるため、流行の移り変わりが激しく、メタゲームは目まぐるしく変化します。一方でテーブルトップの大会は、基本的には週単位での大会実施となり、また、テーブルトップ出場者の中にはMOで調整を行うプレイヤーも多いことから、MOよりもメタゲーム推移は遅くなります。

 それならMOだけ追いかけていればいいじゃないか、という意見もあると思いますが、テーブルトップ大会の開催数は少なく貴重なため、(人にもよりますが)ひとつのデッキと向き合って調整している、という点は大切な点で、より大きな大会ではその傾向が顕著になります。そのため、同じアーキタイプでも、カードの採用枚数に細かな違いが見られます。(テーブルトップの方がいい、MOの方がいい、という二元論ではなく、あくまで傾向の話です)

画像1

 上記画像は大会上位入賞の赤単ミッドレンジの採用枚数を色分けした結果です(11リスト、エルドラージ型を除く)。75枚が同一のリストはひとつもありません。MOでは「とりあえず」で75枚同じリストにしてジョイン→入賞、というケースも珍しくありませんが、テーブルトップの大会はMOに比べ、1枚1枚を吟味していることがよく分かります。

 例えば、優勝者のメイン《再燃するフェニックス》は同系や黒系にカードを2枚以上消費させることができるため、1枚入っているだけでも存在感が違います。全体的にアグロが多い環境だったようで、《反逆の先導者、チャンドラ》を3積みせずにこの1枚に差し替えたことで拾えたマッチアップもあったかもしれません。
 他にも、3マナ域の選択(《鎖回し》《熟練扇動者》《軍族の戦親分》)でデッキもかなり変わってきます。中には《ボロスの反抗者》という同系・対緑のメタカードまで使っている例も見られます。

 このように、カード選択一つひとつに「使い手の意思」を感じられるのがテーブルトップのデッキリストだと思います。繰り返しますが、MOのデッキに意思がない、と言いたいわけではありませんので、悪しからず。

・ゴルガリ《硬化した鱗》

Hardened Scales
Jason Threet
3rd Place at Star City Games Classic on 1/12/2020 Pioneer
※予選6-0-1(負けなし)TOP4
 
creatures (29)
3 《搭載歩行機械/Hangarback Walker》
4 《石とぐろの海蛇/Stonecoil Serpent》
4 《歩行バリスタ/Walking Ballista》
3 《エルフの神秘家/Elvish Mystic》
3 《ラノワールのエルフ/Llanowar Elves》
4 《生皮収集家/Pelt Collector》
3 《大食のハイドラ/Voracious Hydra》
4 《巻きつき蛇/Winding Constrictor》
1 《ピーマの改革派、リシュカー/Rishkar, Peema Renegade》
 
planeswalkers (5)
3 《ゼンディカーの代弁者、ニッサ/Nissa, Voice of Zendikar》
2 《アーク弓のレインジャー、ビビアン/Vivien, Arkbow Ranger》
 
spells (4)
4 《硬化した鱗/Hardened Scales》
 
lands (22)
6 《森/Forest》
4 《花盛りの湿地/Blooming Marsh》
4 《ラノワールの荒原/Llanowar Wastes》
4 《草むした墓/Overgrown Tomb》
4 《森林の墓地/Woodland Cemetery》
 
sideboard
1 《霧裂きのハイドラ/Mistcutter Hydra》
2 《漁る軟泥/Scavenging Ooze》
2 《ゲトの裏切り者、カリタス/Kalitas, Traitor of Ghet》
4 《思考囲い/Thoughtseize》
2 《致命的な一押し/Fatal Push》
2 《突然の衰微/Abrupt Decay》
1 《ゴルガリの魔除け/Golgari Charm》
1 《最後の望み、リリアナ/Liliana, the Last Hope》

 メタゲームが違う、といえばそれまでですが、MOでも少数しか見られないデッキがリアル大会で活躍することもあります。今回の《硬化した鱗》は最たる例でしょう。Jason Threet選手はSCGO Classic Knoxvilleのスイスラウンドを無敗のまま駆け抜けています(6-0後ID)。

 基本は《巻きつき蛇》《硬化した鱗》の「8-Scales」体制で、+1/+1カウンターを使用する生物で攻め立てるアグロデッキです。《歩行バリスタ》による直接ダメージや、《搭載歩行機械》死亡後の《ゼンディカーの代弁者、ニッサ》による大量ダメージなど、色々な攻め手を持っており、処理を誤れば一瞬で死亡することもあります。

 Threet選手のデッキの特徴は、強力なPWを減らしてまで4枚採用された《生皮収集家》です。小粒なクリーチャーが多くEtBではあまり成長できませんが、特に《石とぐろの海蛇》と絡んだ際の打点はかなり高いものがあり、また《削剥》されない貴重な1マナ域の戦力でもあります。

 マナクリーチャーを活用した速い展開力と爆発力に加え、僅かながら全体除去体制もあり、PWのおかげで戦線の立て直しも比較的早いレベルです。また、カラーリングの関係でサイドボードの選択肢も豊富です。MOでは(趣は異なるものの)イゼット魂込めやゴルガリ魂剥ぎに近い立ち位置のデッキですが、これらと比べPWを使用できるため対応可能な範囲も広く、安定感があります。

■終わりに

 今回は「紙とMOの違い」にも言及しましたが、テーブルトップの大会はMOと違い何度も出られるわけではありません。大会に出る際は、1枚1枚にこだわったデッキ構築を意識すると、結果が変わるかもしれません。
 その観点では、StarCityGamesの大会結果は参考になります(国が違うからか、日本との「トレンドのズレ」はありますが・・・)。毎週のように何らかの大会が開かれていますので、定期的なチェックをお勧めします。

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