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どこよりも早く(多分)!「基本セット2021(M21)」ブースタードラフト戦術メモ ~アーキタイプ別戦略のまとめ~

■はじめに

 正式リリースとなった「基本セット2021(英:Core Set 2021/略:M21)」。リアル店舗でもプレリリースキットやパック販売が始まっているようですが、MTGAにおいてはシールド、ドラフト(プレミアドラフト/トラディショナルドラフト)が実装されています。どちらも対人ドラフトで、リアルさながらのブースタードラフトが楽しめます。

 とはいえ、MTGAプレイヤーの皆さんは、前回が「イコリア」というパワーカード環境だったこともあり戸惑いの声も多数。「どうドラフトしていいかわからない」という声がTwitter上で多く見られます。

 本記事では、マルチカラーに各1枚存在するアンコモンを各色の指標と見立てて、アーキタイプ別に目指す形をざっくりとまとめてみます。

※今更ですが、私はGPや大会等での実績もないただの素人ですので、その点はご容赦ください。

あくまで筆者の現時点(6/30)での主観なので、使用は自己責任でお願いします。
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■M21ドラフトの特徴

1.デッキは2色前提、タッチもほぼ不可、マナ加速もなし

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 色マナサポートが《プリズマイト》《隕石》ぐらいしかなく、これに枠を割くぐらいなら……というレベルの性能です。今回は緑も多色サポートが《耕作》(←すみません!抜けていたので追記します7/2)《豊かな実りの聖域》しかありません。

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 唯一のマナクリーチャーである《ラノワールの幻想家》の性能からも明らかなように、可能な限り2色でまとめることを強く意識すべき環境です。

2.先手有利の環境、受け手有利のカードは少なめ

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 果敢、攻撃時限定の修正、ドロー時強化、終了ステップの死亡誘発……、「攻めている側」が強い環境です。インスタント除去の中には《素早い反応》など受け身なカードもありますが、基本的には「攻め得」です。

 後手の場合はどこかで先手後手を入れ替える効果が必要ですし、先手は攻めを途切れさせない工夫が必要です。それは除去が一番分かりやすいのですが……

3.除去が重い(=コンバットトリック・オーラが比較的強い)

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 コモンの確定除去は白・黒に存在する5マナ。赤のコモン除去《金屑化》も5マナです。全体のマナカーブ構成からするとかなり重めです。(それに比べ、不確定除去の《迅速な反応》、軽量火力の《焦熱の竜火》《ショック》、黒の《闇の掌握》は非常に優秀です。)バウンスも比較的重く、そのためテンポ戦略やオーラによる強化戦略が成立し得ます。

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 また、コンバットトリックも通常より軽く、強力なものが多いです。あと一押しや不利な盤面の挽回に役立ちます。コンバットトリックは有利トレードを生み出しやすく、先手後手を入れ替える数少ない手段です。

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 余談ですが、青と白に4マナの除去オーラがありますが、これも普段よりは重めです(その分性能は高く信頼性があります)。

4.環境の基本サイズは3/3→パワー4、タフネス4は高評価

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 2マナ1/3、3/1や3マナ3/3がいますが、4/4以上は4マナに皆無、全体でも数えるほどしかいません。一部条件を満たした場合に、攻撃時やドロー字にそのスタッツにようやく到達するカードがある程度です。
 そのため、タフネス3と4の間に天と地ほどの差があります。なので、パワー4やタフネス4をどう確保するかが重要になります。逆に言うと、タフネス3は守りの際にあまり役に立ちませんが、タフネス4になると一気に堅牢になります。

5.ボムレアが少なめ

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 シールドやドラフトは、どうしようもない支配力のあるレア1枚で完封されることもありますが、M21では非常に少ないのも特徴です。逆に言えば、コモンやアンコモンのカードパワーが高過ぎるほど優秀です。

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 対処必須なレアはありますが、絶望するほどの戦力差を逆転したり、優位を固定できるのは《精霊龍、ウギン》ぐらい。ボムレアの大半は重いクリーチャーなので、除去を握っておけば何とかなるレベルです。PWはさすがに強いですが。

【対処必須なレア以上のカード】

ゲーム決定力=壊
 《精霊龍、ウギン》《悪魔の抱擁》

ゲーム決定力=高
 《悪斬の天使》《峰の恐怖》《長老ガーガロス》《解き放たれた者、ガラク》

ゲーム決定力=並
 《時の支配者、テフェリー》《バスリ・ケト》《薄暮薔薇の棘、ヴィト》《虐殺のワーム》


■優良コモン(汎用カード、早めにピックが吉)

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 アーキタイプ(後述)ごとの専用カードがコモンやアンコモンにありますが、その一方でコモンとアンコモンの差が比較的小さく、コモンだけを集めてもデッキとして成立し得ることがあります。どんなデッキでも採用したいカードが各色にあり、そうしたカードは時にアンコモンを流してでも早めに押さえることが重要です。

【競合の激しいカード:白】
コモン 《バスリの侍祭》《素早い反応》
アンコモン 《包囲戦の打撃者》《信仰の足枷》

【競合の激しいカード:青】
コモン 《うろつく光霊》《北風の歌姫》
アンコモン なし(青赤、青緑専用カードが多め)

【競合の激しいカード:黒】
コモン 《とどめの一撃》《闇の掌握》
アンコモン 《取り除き》《リリアナの信奉者》

 ※黒はカード全体が弱い分、強いカードに人気が集中してしまう

【競合の激しいカード:赤】
コモン 《ショック》《焦熱の竜火》
アンコモン 《魂焦がし》《雷光の猟犬》

【競合の激しいカード:緑】
コモン 《狩人の刃》《ラノワールの幻想家》
アンコモン 《打ち壊すブロントドン》《節くれ拳の樫》

■アーキタイプ別 成立性・有効性の検証

 あくまで筆者の体感的なところによるものですが、現時点では下記の通りです。(1)成立のしやすさと(2)戦略の有効性をそれぞれ三段階で評価して、総合的なTierを出してみました。


【友好色】
1.白青:飛行 成立性:★★★ 有効性:★★☆
2.青黒:リアニメイト 成立性:★☆☆ 有効性:★☆☆
3.黒赤:サクリファイス 成立性:★★☆ 有効性:★☆☆
4.赤緑:パワー4以上 成立性:★☆☆ 有効性:★★★
5.緑白:+1/+1カウンター 成立性:★★☆ 有効性:★★★

【敵対色】
6.白黒:ライフゲイン 成立性:★★☆ 有効性:★★☆
7.黒緑:(ミッドレンジ) 成立性:★☆☆ 有効性:★★☆
8.緑青:追加ドロー 成立性:★★☆ 有効性:★★☆
9.青赤:果敢 成立性:★★★ 有効性:★★★
10.赤白:全体強化 成立性:★★☆ 有効性:★★★
【暫定総合評価】
Tier1:赤白、青赤

Tier2:緑白、白青
Tier3:赤緑、緑青、白黒
Tier4:それ以外(青黒、黒赤、黒緑)

▼Tier1:赤白-全体強化

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 赤白マルチの《高山の犬師》は、特定のコモン2種(犬)のサーチが可能です。2/2/2警戒の《高山の番犬》、2/1/2火吹き能力付の《炎血の野犬》の2種。これ自身が2マナということを鑑みると、犬シナジー以前に「横並べによる速攻」が見えてきます。

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 横並べを強烈に後押しするのが《護法の要塞》《バスリの侍祭》《雷光の猟犬》といった全体強化能力持ち。各種コンバットトリックが押し込みをサポートしてくれるので、総じて赤白は「テンポの良い速攻」でまとまります。2マナ域の多い赤白はこれらのカードが活きます。

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 環境の軽量除去が少なく、そしてその数少ない軽量除去は赤と白に寄っています。そのため、軽量除去をピックしながらデッキを組むことも、とれなければ生物や強化パーツで埋めることもできますので、総じてデッキの完成度が高くなりやすい傾向があります。ウィニーの弱点であるマナフラッドも《炎血の野犬》《選定された聖歌員》が受けてくれるなど、無駄のないデッキ構築が可能です。特に《選定された聖歌員》は能力起動後に4/4になるので、環境のサイズ定義からすると見た目以上に強力です。


【参入動機】
レア:《忍耐の偶像》《群れを導くもの》《タルジーディの隊商、スビラ》など
アンコモン以下:《高山の犬師》《バスリの侍祭》

【キーカード】
コモン:《バスリの侍祭》、他2マナ域全般
アンコモン:《包囲戦の打撃者》《歴戦の神聖刃》《バスリの結束》

▼Tier1:青赤-果敢

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 実際に果敢を生かすというよりは、「イコリア」同様スペル軸の構築が可能です。その際に軸となるのが《ゴブリンの魔術》で、複数枚キャストしたときの爆発力は他の追随を許しません。トークンを並べてキャントリップの《突破》《選択》を連打しながら、《霜のブレス》《破壊的細工》で相手の戦線をこじ開け強引にフィニッシュできます。

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 とはいえそれだけでなく《呪文喰いの奇魔》《北風の歌姫》《謎変化》などの一点突破用戦力も充実。テンポ損になりがちなバウンスや火力を他のデッキより強く使うことができます。《北風の歌姫》以外は競合も少なく安く取れるパーツなのもベター。

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 盤面に触りながらの横展開が可能な点で、赤白とはまた別の展開力が魅力です。《胸躍る可能性》などの軽量ドローに恵まれているためボムに辿りつきやすいこともあり、非常に強力なアーキタイプです。ただし、ピックは非常に難しいので、何回か試して慣れることが必要です。


【参入動機】
レア:《嵐翼の精体》《崇高な天啓》
アンコモン以下:《ゴブリンの魔術》が多めに流れている

【キーカード】
コモン:《ゴブリンの魔術》《呪文喰いの奇魔》《霜のブレス》《ヴォーデイリアの秘儀術師》
アンコモン:《ジェスカイの長老》《心火の供犠者》《謎変化》


▼Tier2:緑白-+1/+1カウンター

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 基本サイズの大きさが群を抜いています。3/3/3の《トリュフ嗅ぎ》をはじめ2/3/3防衛の《うたた寝するティラノドン》、条件次第で4/4/4の《気難しいディロフォサウルス》などサイズが一回り大きく、ここに《狩人の刃》が合わさり最強に見えます。

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 緑白は強化手段が豊富で、緑の優秀なスタッツを《バスリの侍祭》《護法の要塞》《誇り猫》《鍛え抜かれた古参兵》でさらに底上げできます。不器用ではありますが、とにかくサイズ差にものを言わせた強引な攻めが特徴です。

 動きが大振りなため、Tier1の2つに相性がそこまでよくない点だけが気掛かりですが、基本的には中途半端なデッキを簡単に踏みつぶすぐらいの勢いのあるアーキタイプです。

【参入動機】
レア:《バスリの副官》《原初の力》《長老ガーガロス》など緑のパワーカード
アンコモン以下:《議事会の導師》に加え、《狩人の刃》が多めに確保できそう

【キーカード】
コモン:《バスリの侍祭》《狩人の刃》《うたた寝するティラノドン》
アンコモン:《鍛え抜かれた古参兵》《野生林の災い魔》《バスリの結束》

▼Tier2:白青-飛行

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 2/1/3飛行の《協約のペガサス》を強化していく手段が単純ながら強いです。《護法の要塞》《バスリの侍祭》はもちろん、《小剣》《叙爵》あたりも追加の強化手段として有用です。良くも悪くも《天球の見張り》の枚数次第なアーキタイプではありますが、コスト軽減を絡めた展開力は目を見張るものがあります。

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 緑と赤のコモン到達持ちのスタッツ(緑3/3、赤4/3がコモンに存在)が高く、相打ち上等のスペックなので、乗り越えるのに苦労する部分はあります。突破方法を用意できるかが勝負です。《叙爵》で先制攻撃を与えるのが手っ取り早いですが、それに頼らずともアーキタイプ専用タッパーの《天界の処罰者》が有用です。比較的安く取れ、最低限のスタッツを持ちつつ、さらにタッパーとしても活躍できるので、中盤戦以降に役立ちます。

【参入動機】
レア:《悪斬の天使》《崇高な天啓》
アンコモン以下:《天球の見張り》複数枚、あるいは《潮掬い》

【キーカード】
コモン:飛行戦力各種、《天界の処罰者》
アンコモン:《天球の見張り》《潮掬い》

▼Tier3以下

【赤緑】

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 コモンにもパワー4以上を参照するカードが多いので軸として組めそうですが、まず肝心の緑に4マナ以下のパワー4が皆無。赤の《オナッケのオーガ》《砲塔のオーガ》、5マナの《ガラクの血まみれ角》頼みになってしまい、タフネスが低いためクリーチャー戦で当たり負けしやすくなります。《狩人の刃》を取れなかった場合は絶望的で、《噛み傷への興奮》で無理やり解決するしかありません。パワー4が確保できないと本気を出せないカードは多く、緑白と違い強化手段に乏しい赤緑ではデッキパワーが落ちてしまいます。

 逆に《狩人の刃》が多めに確保できれば、白が確保できない時に赤が2色目として選択肢として上がります。ちなみに《枝葉族の報復者》はオーラや強化を絡めると一気にライフを削れる超強力カードなので、2枚以上取れる場合は狙うのもなしではないです。

【緑青】

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 ドローに反応するカードがありますが、狙って誘発させるのは至難の業です。一応使いやすいドローとして《突き止め》《テフェリーの徒弟》はいますが、マナを使ってしまい展開にもたつきが生じがち。かといって《書庫泥棒》《ガラクの蜂起》なども一癖もふたくせもあり、恒常的な使用は望めません。

 《節くれ拳の樫》《知識鱗のコアトル》などアンコモンの強力カードが多めに押さえられそうなら、マナ加速とバウンスを確保した上で向かってみるのも一興です。

【白黒】

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 ライフを3点以上得る、というシチュエーションが限定的すぎてなかなか難しいです。絆魂持ちのパワー3以上を維持できればそもそも勝てるわけで、狙った構築が必要になります。また、キーカードがアンコモンに偏り過ぎていて、コモン中心でシナジーを形成するのは難しい印象です。

 《グリフィンの高楼》《銀打ちのグール》といったキーカードは単体だと弱いため、ほかの人のピック順位も低くなりがちなため、比較的複数枚を確保しやすい面はあります。《活力回復》《信仰の足枷》《石の牙の聖域》と絆魂持ちの合わせ技で無理やり構築していくことは可能です。特に白は人気色なので、白をピックしながら黒に舵を切りに行く場合には、《銀打ちのグール》は押さえておきたい一枚です。

【その他】

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青黒(リアニメイト)は、専用カードを掻き集めればそれっぽくはなるものの、そもそもテンポが悪過ぎます。5ターン目に5/5飛行や8/6、5/7呪禁は出せますが、そこまで生き残れるかどうか、出した後に生き残れるかどうかが勝負です。《闇の掌握》レベルのカードを複数集めておかないと、序盤を持たせるのも厳しいカラーリングです。

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・黒赤(生け贄)はシナジー自体は強力なものの、この2色だとトークン生成能力に乏しいため戦線の維持が難しく、アーキタイプとしての成立は難しいでしょう。今回、アクト呪文の《裏切りの強欲》がアンコモンなのもマイナスです。《燃え投げの小悪魔》自体は盤面干渉力が高いので、序盤戦力が充実すればアドバンテージ差で勝負になるか、という程度です。

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・黒緑はトークン生成が可能で生け贄を有効活用できるものの、2マナ以下のプレイアブルな生物が極端に少なく、もっさりしたデッキが出来がちです。緑、黒ともにレアのファッティが強く、また黒が安いので、《精霊龍、ウギン》《長老ガーガロス》《ガラク》初手から黒の除去が体よく流れてくれば、コンバットトリックや《ラノワールの幻想家》を必死でかき集めて目指してみるのもいいかもしれません。

■まとめ

 全体的に「白が強め」「黒が弱め」という偏りはありつつも、中心色を意識しながら、アーキタイプとカードパワーと天秤にかけてカードをピックしていく、昔ながらの基本セットドラフトと言えます。難しい、と感じる方は、「イコリア」時のようなアーキタイプを意識し過ぎなのかもしれません。やりこみ要素は比較的浅く(青赤を除く)、単純にリミテッドスキルが出やすい環境ともいえると思います。

 幸い、MTGAの仕様で自分のピックカードは全て見られます。マナカーブ、生物の枚数、各色の枚数、一周後の残りカード候補……、そういったことを一手一手確認しながらピックすれば、必ずベースライン以上のデッキが完成します。普段よりも「デッキ完成には23枚が必要」という意識を強く持つことも大切です。

 この記事が皆さんのドラフトの一助になれば幸いです。良いリミテッドライフを!

 繰り返しになりますが、ご購入いただいても追加の文章はありません。あくまで筆者へのご支援として、記事の購入をご検討いただければ幸いです

【7/2 21:30追記】
 続々とご支援をいただいています。ありがとうございます。ご購入いただいた方へのお礼として、ささやかではありますが、私のドラフト記録の中から、皆さんの参考になる(かもしれない)ドラフト結果をご紹介します。特に戦略的な記事ではなく単なる記録ですので、単純にドラフト戦略をお読みになりたい方は、上記内容までで留めていただいて十分です。

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